IFルート 真っ直ぐな好意(ミール)
到達条件
・素材集めを一週間以内に終わらせる。
・第二十七話でミールの選んだ服を全て買う。
・第三十二話開始までにナタリアからミールへの好感度を最大まで上げる。
以上の条件を満たすと第三十二話中で負傷したミールに回復薬を飲ませるときに選択肢が出現するので『口移しで飲ませる』を選択する。
ゴーレムとの戦いから数ヶ月、俺達の周囲はゆっくりと変化していった。
俺達を襲ったゴーレムを差し向けたのはミールの親父さんと敵対していたギルド役員で、街中でもかなりの被害を出していた。
その役員は死に、鍛冶師ギルドは責任追及もあって組織改革が行われた。
ミールの実家の鍛冶屋は素材の卸が正常化し、貴族から依頼されていた品を仕上げたのもいい宣伝になって、かなり繁盛するようになった。
ミールは素材集めが終わってからも冒険者を続け、俺もオフィーリアから鍛えてもらう合間で、一緒に樹海を散策したりしていた。
そこまでは良かったのだが、急激に増えた依頼に親父さんは無理が祟り、つい先日腰を痛めてしまった。
ミールは店を継ぐ為に鍛冶師の修行を始める事になり、冒険者は実質引退同然だった。
夕暮れ時、人影がまばらになった石畳を歩く。
もう殆どの商店は片付けを始めていて、今開いているのは宿屋と食事処くらいだ。
目的の場所も、既に営業時間は過ぎているだろう。
だがそれでいい。
既に慣れたもので、扉を開けると金属独特の臭いが鼻孔を擽る。
「あ、すみません、もう店仕舞いなんで―」
店の奥から出て来ながらそう告げるミールは、しかし俺の姿を認めると顔を綻ばせた。
「ナタリアさん!」
「こんばんは、ミールさん」
その嬉しそうな表情に釣られ、俺まで自然と頬が緩む。
「もう、そんな格好で、誰が来たのかと思いましたよ」
「たまには着ないと勿体無いですから」
今の俺が着ているのはメイド服ではなく、以前ミールと服屋に行ったときに買ったワンピースだ。
「お店の方はどうですか?」
「もう毎日が大忙しですね。まだまだ学ばなきゃいけない事は山積みですし、これならティラノガビアルと戦う方が楽ですよ」
肩を竦めるミールに、俺は口元を押さえて笑った。
「では、そんなミールさんにプレゼントです」
俺は収納空間から紫の光沢を放つインゴットを取り出し、カウンターの上に置いた。
「これって、まさか」
「アリアさんからもらった鋼糸を私が錬金術で精製した紫鋼です。品質についてはご主人様に鑑定していただいたので充分かと」
アリアの鋼糸は俺の神経糸に使われているが、それは魔力伝導率、強度、柔軟性が非常に高いからだ。希少種である紫鋼蜘蛛しか作れず、その紫鋼蜘蛛も強力な魔物の為、普通は入手するのは非常に困難だ。しかもたとえ入手しても、糸のままだと武器や防具の素材にするのは難しい。
しかしこうしてインゴットにしてしまえば、その用途は飛躍的に広がる。
「でも、私の実力じゃぁ扱いきれないかも…」
「今すぐに使う必要はありませんよ。ミールさんがそれだけの立派な鍛冶師になるのを楽しみにしています」
「ナタリアさん…」
ミールが感極まったように瞳を潤ませる。
「……すみません。ちょっと見栄張りました」
表裏の無く感情を表現するミールを前にするたびに、俺は自分の性格の捻くれ具合や矮小さを浮き彫りにされる。
「本当は私がミールさんに喜んでほしくて勝手にしているだけなんです。ですからミールさんは私の事など気にしないでください」
我ながら格好悪い事この上ない。建前じみた言葉で飾らないと、自分の気持ちを表せないんだから。
「ナタリアさん、初めて会ったときも言いましたけど、ナタリアさんが優しい方だっていうのは解っています」
「え、ええ。確かにそういう事を言っていたのは覚えていますが」
「冷静でちょっと打算的で、でも自分より誰かを大事に出来て、そんな自分を素直に表せない。それがナタリアさんの魅力で、私の好きなところです」
ミールの直球な好意表現は今まで何度もされてきたけど、この気恥ずかしさにはまだ慣れそうにない。
告白されたときだってそうだった。
弱さや甘さをどれだけ取り繕っていても気付かれる。
俺の全部を受け止めて、そのまま真っ直ぐ踏み込んでくる。
たとえ俺が人間じゃなくても、魔導人形でも、好きだと言ってくれた。
そんなミールだから、俺も彼女を好きになったのだと思う。
魔導人形とドワーフ。
魔女の従魔と鍛冶師。
全く違う俺達だけど、間にある気持ちは一緒だと確信出来る。
だからたまには自分から言おう。
この世界に転生してから、常に主人に忠実な魔導人形を演じてきた。素の自分を晒した事など、数えるくらいしかない俺の、心からの言葉だ。
「ミールさん、愛してますよ」
「ナタリアさん…」
ミールが両手を伸ばす。
その意味するところを、俺は知っている。
カウンターに乗り出すようにして身を屈めると、ミールの腕が巻き付くように俺の首に回された。まるで離さないと主張するかのようだ。
あぁ、俺も離したくないよ。
俺とミールの顔が近付き、そして触れ合った。
END




