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メイド人形はじめました  作者: 静紅
漆黒の魔女
39/250

IFルート 真っ直ぐな好意(ミール)

到達条件

・素材集めを一週間以内に終わらせる。

・第二十七話でミールの選んだ服を全て買う。

・第三十二話開始までにナタリアからミールへの好感度を最大まで上げる。

以上の条件を満たすと第三十二話中で負傷したミールに回復薬を飲ませるときに選択肢が出現するので『口移しで飲ませる』を選択する。

 ゴーレムとの戦いから数ヶ月、俺達の周囲はゆっくりと変化していった。

 俺達を襲ったゴーレムを差し向けたのはミールの親父さんと敵対していたギルド役員で、街中でもかなりの被害を出していた。

 その役員は死に、鍛冶師ギルドは責任追及もあって組織改革が行われた。

 ミールの実家の鍛冶屋は素材の卸が正常化し、貴族から依頼されていた品を仕上げたのもいい宣伝になって、かなり繁盛するようになった。

 ミールは素材集めが終わってからも冒険者を続け、俺もオフィーリアから鍛えてもらう合間で、一緒に樹海を散策したりしていた。

 そこまでは良かったのだが、急激に増えた依頼に親父さんは無理が祟り、つい先日腰を痛めてしまった。

 ミールは店を継ぐ為に鍛冶師の修行を始める事になり、冒険者は実質引退同然だった。







 夕暮れ時、人影がまばらになった石畳を歩く。

 もう殆どの商店は片付けを始めていて、今開いているのは宿屋と食事処くらいだ。

目的の場所も、既に営業時間は過ぎているだろう。

 だがそれでいい。

 既に慣れたもので、扉を開けると金属独特の臭いが鼻孔を擽る。


「あ、すみません、もう店仕舞いなんで―」


 店の奥から出て来ながらそう告げるミールは、しかし俺の姿を認めると顔を綻ばせた。


「ナタリアさん!」


「こんばんは、ミールさん」


 その嬉しそうな表情に釣られ、俺まで自然と頬が緩む。


「もう、そんな格好で、誰が来たのかと思いましたよ」


「たまには着ないと勿体無いですから」


 今の俺が着ているのはメイド服ではなく、以前ミールと服屋に行ったときに買ったワンピースだ。


「お店の方はどうですか?」


「もう毎日が大忙しですね。まだまだ学ばなきゃいけない事は山積みですし、これならティラノガビアルと戦う方が楽ですよ」


 肩を竦めるミールに、俺は口元を押さえて笑った。


「では、そんなミールさんにプレゼントです」


 俺は収納空間から紫の光沢を放つインゴットを取り出し、カウンターの上に置いた。


「これって、まさか」


「アリアさんからもらった鋼糸を私が錬金術で精製した紫鋼です。品質についてはご主人様に鑑定していただいたので充分かと」


 アリアの鋼糸は俺の神経糸に使われているが、それは魔力伝導率、強度、柔軟性が非常に高いからだ。希少種である紫鋼蜘蛛しか作れず、その紫鋼蜘蛛も強力な魔物の為、普通は入手するのは非常に困難だ。しかもたとえ入手しても、糸のままだと武器や防具の素材にするのは難しい。

 しかしこうしてインゴットにしてしまえば、その用途は飛躍的に広がる。


「でも、私の実力じゃぁ扱いきれないかも…」


「今すぐに使う必要はありませんよ。ミールさんがそれだけの立派な鍛冶師になるのを楽しみにしています」


「ナタリアさん…」


 ミールが感極まったように瞳を潤ませる。


「……すみません。ちょっと見栄張りました」


 表裏の無く感情を表現するミールを前にするたびに、俺は自分の性格の捻くれ具合や矮小さを浮き彫りにされる。


「本当は私がミールさんに喜んでほしくて勝手にしているだけなんです。ですからミールさんは私の事など気にしないでください」


 我ながら格好悪い事この上ない。建前じみた言葉で飾らないと、自分の気持ちを表せないんだから。


「ナタリアさん、初めて会ったときも言いましたけど、ナタリアさんが優しい方だっていうのは解っています」


「え、ええ。確かにそういう事を言っていたのは覚えていますが」


「冷静でちょっと打算的で、でも自分より誰かを大事に出来て、そんな自分を素直に表せない。それがナタリアさんの魅力で、私の好きなところです」


 ミールの直球な好意表現は今まで何度もされてきたけど、この気恥ずかしさにはまだ慣れそうにない。

 告白されたときだってそうだった。

 弱さや甘さをどれだけ取り繕っていても気付かれる。

 俺の全部を受け止めて、そのまま真っ直ぐ踏み込んでくる。

 たとえ俺が人間じゃなくても、魔導人形でも、好きだと言ってくれた。

 そんなミールだから、俺も彼女を好きになったのだと思う。


 魔導人形とドワーフ。

 魔女の従魔と鍛冶師。

 全く違う俺達だけど、間にある気持ちは一緒だと確信出来る。

 だからたまには自分から言おう。

 この世界に転生してから、常に主人に忠実な魔導人形を演じてきた。素の自分を晒した事など、数えるくらいしかない俺の、心からの言葉だ。


「ミールさん、愛してますよ」


「ナタリアさん…」


 ミールが両手を伸ばす。

 その意味するところを、俺は知っている。

 カウンターに乗り出すようにして身を屈めると、ミールの腕が巻き付くように俺の首に回された。まるで離さないと主張するかのようだ。

 あぁ、俺も離したくないよ。

 俺とミールの顔が近付き、そして触れ合った。







END

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