第十七話 おパンツ一般公開
あれは俺の体の仕組みについて教わっているときの事だった。
「さて、ここをこうすると」
「!?」
オフィーリアが俺の手を取ると、突然俺の手首から先がさよならバイバイした。
「大丈夫よ。元々外れる造りにしてあったところだから」
自分の手が取れて冷静でいられるか?
痛みが無いのがかえって怖い。
「ここに通っている何本もの糸が貴女の神経とも言えるものよ。これは紫鋼蜘蛛と言う魔物の糸で、丈夫で魔力伝達にも優れているわ。慣れれば自在に操れるようになるから、いざとなれば武器にも出来るわよ」
「武器になるくらい出して大丈夫なんですか?」
「心配ならここで出せるだけ出してみる?」
その後、出せるだけ出してみた。
いっぱい出たね。
「なっ!」
慌てて飛び退いたダニーが驚いた声を上げる。
そりゃそうだろ。切り落とされた腕が動いて銃を撃ってきたんだから。
勘違いするなよ。お前が切ったんじゃない。その前に自分で切り離したんだ。
しかし完全に不意を突いたと思ったが、二、三発掠っただけで避けられるとは、やっぱりこいつ強いな。
だが再び距離を稼げた。ここからはもうさっきまでのようには行かせないぞ。
「な、何なんだ、お前!」
怯え混じりに叫ぶダニー。そんなのそっちが勝手に勘違いしただけじゃないか。
だがメイドとして主の品位を落とさないためにも、きちんと挨拶しておこうかね。
残った左手でスカートを摘み上げ、簡単にカーテシーをする。
「申し遅れました、私、オフィーリア様に仕える魔導人形のナタリアと申します。生まれて二ヶ月足らずの赤ん坊ですので、どうかお手柔らかに」
「「「「お前のような赤ん坊がいるか!」」」」
何故かギャラリー全員に突っ込まれた。
「では気を取り直して、続きと参りましょうか」
肘から離れた右手が宙を動き、引き金を引く。
ふはははは、怖かろう。
しかしダニーも流石で、俺本体から離れただけの射撃には当たってくれない。
そこで手を加える事にした。文字通りの意味で。
左手も同様に肘から切り離し、魔力を込めた拳で殴り掛かる。
「くっ!」
しかも脳波コントロール出来る。
やってる事はジオングだけどな!
紫鋼蜘蛛の糸は細く見えにくく、それでいて腕を動かすのに充分な魔力を伝達する。感覚としては単純に手が伸びたような感じだ。
右の銃と左の拳が宙に浮きながら、あらゆる方向から攻めてくる。
「もう一つ行きますよ」
更に左脚も膝から先を飛ばす。両手と左脚のオールレンジ攻撃だ。
ダニーはこれだけの攻撃に囲まれながら、銃弾は確実に躱すようにしている。しかしそれと引き換えに、魔力を込めた左手と右脚の打撃をじわじわと受けるようになってきた。
「ちっ!」
堪え切れなくなったダニーが俺本体に突っ込んで来た。だけど同じ手を二度も喰らったりはしない。
俺は伸ばしていた鋼糸を一気に巻き取る。
ダニーの周囲を囲み、不規則に動いていた糸が締まり、絡み合い、ダニーの体を拘束した。
「ぐあっ!」
自由を奪われたダニーが呻き声を漏らす。
「さて、まだ続けますか?」
最後にその頭に銃口を突き付ける。
「こ、降参だ」
ダニーは震える声で、確かに言った。
「ダニーの降参、よって勝者ナタリア」
「あのメイド、魔導人形だったのか」
「ダニーに勝つか。なかなかやるな」
「美人なのに人形とは勿体無い」
「俺、新しい趣味に目覚めそう」
俺の主人が宣言し、周囲から歓声とも困惑とも取れない声が上がる。
まぁ、人間のメイドかと思ったら魔導人形だったわけだしな。騙したわけじゃないけど、微妙な空気にもなるだろう。
「お疲れ様、良くやったわ」
そんな中、オフィーリアはこっちに向かって歩きながら微笑んでくれる。これだけでも頑張った甲斐があるかな。
「ナタリアさん、大丈夫ですか?」
ミールが駆け寄って、心配そうな顔をする。
そういえば、他のやつらはともかく彼女には悪い事をしたな。
「すみません、ミールさん。魔導人形だという事を黙っていて。騙すつもりは無かったのですが、言いそびれてしまって」
「そんな、騙されたなんて思ってないですよ! それにナタリアさんは話に聞いていた魔導人形とは全然違ってて、魔物や道具って感じしませんから!」
俺が頭を下げると、ミールは慌てて首を振る。
「ナタリアさんが魔物でも魔導人形でも、優しい方だっていうのはわかってますから、これから仲良くしてもらえると嬉しいです」
ミールは人間でもない俺にそんな事を言ってくれた。
そう言えば、オフィーリアとオリビア以外に初めてまともに話した人だし、こんな俺を初めて受け入れてくれたって事になるのかな
「おーい、いい加減これ解いてくれねぇか? 見られながら緊縛プレイとか俺の趣味じゃねぇぜ」
あ、忘れてた。
「失礼。それと私にもそんな趣味はありません」
俺は鋼糸を巻き取ろうとする。
「……」
俺は鋼糸を巻き取ろうとする。
「……」
「おい」
俺は鋼糸を巻き取ろうとする。
「……」
「まさかお前」
「解けません」
嘘やん。
「お前、どうすんだよ!クソッ!」
ダニーが鋼糸を力尽くに解こうと身を捩る。
「待ちなさい! 今動いたら」
鋼糸が引っ張られ、片足で立っていた俺の体は傾いた。
「わっ!」
そんな状態で踏ん張れる筈も無く、俺は盛大に転んでしまった。
ふわり
股下を抜ける涼しい感覚が何かはすぐ判った。スカートが翻ったんだ。
「お、いいもん見れた」
「人形だと解っていても興奮するな」
「そりゃあんな美人だしな」
顔が焼けそうなくらい熱くなった。
「こ、殺す! 今見たやつは全員殺す! そして私も死ぬ!」
こんな屈辱、前世を含めても初めてだ!
「落ち着きなさいよ、死にたがりさん。解いてあげるから動かないの」
「あー、その、すまん」
「だ、大丈夫ですよ、ナタリアさん! むしろとてもセクシーでした!」
それまで乱暴だったダニーの謝罪とミールの的外れすぎるフォローが、かえって俺を惨めにさせた。
「ええい、殺せ! 殺せよ畜生ぉぉぉ!」
ナタリアの身体の外観は等身大ローゼンメイデンと言えばだいたい説明が終わります。




