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メイド人形はじめました  作者: 静紅
漆黒の魔女
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第十二話 魔導人形と魔法

魔導人形とこの世界における魔法の説明です。

魔法に関しては特に変わった設定も無いしもっと曖昧にしていても良かったのですが、あとで矛盾するのも怖いのである程度固めておきます。

 オリビアが街に戻ってからも、俺への授業の日々は続いた。最初に言っていた通り、元々俺にこの世界の事を教える予定だったからだ。午前中に家事をなるべく終わらせて、午後の授業が終わったら家事の続きをするのがここ数日の生活になっている。


『よいこのみんな、今日は魔物としての魔導人形について勉強するよ』


 えー、私達について?


『そうだよ。魔導人形を学ぶ前に、その原型であるゴーレムについて説明しよう。ゴーレムっていうのは石材、木材など物質で作った体を魔法によって制御した人形の事を言うよ。制御系には自律型と半自律型があるんだ』


 自律と半自律って何?


『自律は自分の意思を持って動く事。半自律は意思は無いけど命令に従って動く事さ』


 ゴーレムはある程度自分で動いてくれる人形って事?


『そうだよ。そのゴーレムから派生したものが魔導人形だ。魔導人形は制御以外にも魔法を使っているんだよ』


 制御以外って?


『大雑把に言えば何かしらの特殊機能を持っていたり魔法が使えたりするのさ』


 じゃあゴーレムよりすごいんだ!


『そうとも限らないよ。ゴーレムはその機構が単純だから、製造が比較的簡単だからね。それにゴーレムも魔導人形も体の基礎能力は素材に依存するところが大きいんだ。作りやすいゴーレムは大型化させて能力を引き上げるのも簡単なんだよ』


 そうなんだー。


『ちなみにゴーレムは自律、半自律で動くものを指すけど、魔導人形には他律のものも含むよ』


 他律?


『動作全てを術士が行わなければいけない事だよ。だから人形師が糸で操るものは他律型だね。でもこれはあくまで道具であって、魔導人形であっても魔物じゃないよ』


 ややこしいね。じゃあ他律型のゴーレムは?


『おいおい、それはただの人形じゃないか』


 あ、そっかー。


『まとめると、ゴーレムはある程度自分で動くし製造も簡単だが魔法は使えない。魔導人形は構造が複雑化しやすいので製造は大変だけど魔法が使えるって事だね。わかったかな?』


 わかったー。


「貴女さっきから変な事考えてない?」


「いいえ。どうしてですか?」


「特に理由は無いんだけど」


 脳内変換して遊んでたってバレたら殺されるな。

 そろそろ真面目にやるか。勿論話は真面目に聞いてたけど。


「じゃあ少し踏み込んだ説明をするわよ」


「はい」


 いやー、なかなか難しいモンですね。

 現代医学における人体だって一般教養程度しか知らなかったのに、人形の構造を理解しなきゃいけないなんて。


「さて、ここをこうすると」


 ええ?


「こうなってて」


 あっ、何これ!?


「ここをこうすると」


 痛いような気持ち良いような、変な感じ!


「ここが開いて」


 ら、らめえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!


「ここが貴女の大事なところよ」


 悔しいっ、でもっ!

 ビクン、ビクン


「理解出来たかしら?」


「……」


「ナタリア?」


 俺は返事しようとしたが、視線を虚空に彷徨わせる以上の事は出来なかった。

 ご主人様ったらテクニシャン。







 家事も一段落したし、夕飯の支度までに先日教えられた魔法について復習しておくかな。

 魔法とは自身の中にあるイメージを、魔力と術式により発現させる事象である。

 術式とは呪文、魔法陣により構成される、魔法の命令、制御を司る式を指す。

 呪文とは術式を言語化したもので、これを発音する事を詠唱と言う。この詠唱する文章を短くするのが詠唱短縮、詠唱そのものを省略するのが詠唱破棄だ。

 魔法陣とは術式を紋様、文字で表したもので、紙や布などに描く事で事前に準備する事も、自分の魔力で即時用意する事も可能。

 呪文と魔法陣は併用する事で、魔法の規模、精度を高める事が可能。

 媒介とは魔法の起動を補助する物質である。一部の魔法には特定の媒介が必須なものもある。

 掃除に例えると、魔力は電気、呪文は掃除機、魔法陣はルンバ、媒介は雑巾や洗剤ってところかな。


「射抜き燃やせ」


 俺の詠唱に炎が現れる。狙うは土塊の的。


「ファイヤーアロー」


 詠唱完了と共に炎は矢の形をとり、的に向かって翔けた。

 しかし二メートルもしないうちに、砕けるように弾け、火の粉となって消えてしまった。


「むぅ」


 初級魔法でこれか。こんなんじゃライター代わりにしかならないな。

 いやいや、気にする事は無い。

 魔力操作と初級魔法の呪文を教わってまだ三日しか経ってない。雑用の魔法はともかく、属性魔法の基礎事象を発現出来るようになったのはつい昨日だ。

 気を取り直して、他の属性の魔法も試してみよう。


「迸り跳ねろ、サンダースパーク」


 これはまだいいけど。


「大地の徒よ、ストーンショット」


 このっ。


「冬よ来たれ、スノーウィンド」


 これでどうだ。


「舞い斬れ、エアエッジ」


 おりゃ。


 クソ、魔法ってヤツはなかなかのツンデレさんだ。

 初級だって言うのにデレの欠片も無い。

 いや、魔法を始めてまだ三日じゃないか。ツンデレを攻略するのに大事なのは根気だ。


「まだまだやってやるっ、ファイヤーアロー!」


 ボッ


「サンダースパーク!」


 パチッ


「ストーンショット!」


 ぽとっ


「スノーウィンド!」


 すー


「エアエッジ!」


 しーん


「………」


 ガチャ

 タンタンタンタンタンタン


「ふっ、俺と相棒(ブラックホーク)にかかればこんなもんよ」


 的を蜂の巣にしてやったぜ。

 さて、そろそろ仕事の時間だ。また暇なときに遊んでやるよ。

 俺はブラックホークを腰に戻し、練習場に背を向けた。

 く、悔しくなんかないもんっ!

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