第十一話 しばしの別れとイタズラ
テンポの関係で短めです
とりあえず今回の投稿はここまで
とうとうオリビアが街に戻る日が来た。ギリギリまで渋っていたがこれ以上先延ばしにすれば、新学期に間に合わなくなる。
長い休みにしか会えないので、オフィーリアもオリビアも名残惜しそうだ。
もちろん俺だって寂しい。オリビアと一緒に過ごしたのはほんの二週間にも満たなかったが、妹が出来たみたいでとても楽しかった。
「いやあぁぁぁぁぁぁ、ナタリアああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
そしてこの光景である。
お嬢様、相手間違ってます。俺じゃなくて母親に抱き着いて下さい。
「……」
自分の方に来ると思って構えていたオフィーリアの両手が行き場を無くしてる。
お、俺は悪くないよ。
「お嬢様、もう行きませんと」
「わかってるけどおおおぉぉぉぉ」
母親似の黒髪を撫でながらあやすと、落ち着いてきたのか顔を上げた。目尻には少し涙が浮かんでるが。
「どうしても行かなきゃ駄目?」
「お嬢様は立派な冒険者になりたいと思うのでしたら、行くべきだと思います」
「……わかった」
さっきまで駄々を捏ねる子供でしかなかったオリビアだったが、涙を拭うと意を決したように鋭い目になった。
「じゃあナタリア、私が冒険者になったら、一緒に冒険に行ってくれる?」
そうだな。それはきっと楽しいだろうな。
でも俺の一存じゃ答えられないので決定権を持つ人に視線を向けると、肩を竦められた。
じゃあ、そういう事で。
「はい、そのときはご一緒させて頂きます」
「うん、楽しみにしてるわ」
オリビアは凛々しくも愛らしく笑った。
可愛いな。
子供に対する(ry
「ナタリア、少ししゃがんで」
「何ですか、お嬢様」
従いながらも、内心大体予想は着いていた。腕白なオリビアの事だ、最後に何かイタズラでもするつもりなんだろう。ここは大人の余裕で受け止めるとしようかね。
「目を閉じて」
「はいはい」
これはいよいよイタズラで確定だな。さて、どう出てくるやら。
「絶対に開けちゃ駄目よ」
「わかっていますよ」
微笑ましくてついにやけてしまう。やんちゃな妹を持つと苦労するぜ。
「ナタリア」
不意に、頬に何か柔らかいものが触れた。何だ今の、指で突かれでもしたのか?
「もう開けていいわよ」
言われた通り目を開けると、オリビアは顔を赤くしてもじもじしていた。
前から思ってたけど、オリビアってすぐ顔赤くなるよな。体質か?
「ねぇ、どうだった?」
どうと言われても、頬を指で突かれただけなのに何を言えというのか。
しかしせっかくのイタズラに無反応というのも、した側にしてみればつまらない事この上ないだろう。
ここは一つ、お嬢様を立てるとするか。
「うわー、凄くびっくりしました。お嬢様はイタズラの天才ですね」
うん、これならオリビアも満足してくれるだろう。
あれ、おかしいな。
何でお嬢様は涙目になってるんだろう。
何で俺は睨まれてるんだろう。
子供心って難しいわー。
「ナタリアの馬鹿! 鈍感! 女っ誑し!」
「ちょ! お嬢様、何ですかそれ!」
オリビアは泣きながら部屋を飛び出して行ってしまった。
女っ誑しってなんだよ。俺は前世も含めて産まれてこの方、誑しなんて言えるほどモテた試し無いぞ。
「貴女……」
「な、何ですかご主人様まで!?」
オフィーリアもすごく残念なものを見る目ような目をしていた。
解せぬ。




