1日の始まり
※初投稿です。拙い点も沢山あるとは思いますが、どうぞよろしくお願い致します。ブクマや評価、感想等頂けましたら幸いです。
※R15タグは念のため付けさせていただきます。また、このタグに限らず、今後の展開次第で予告なくタグが追加・削除されることがございます。予めご了承くださいませ。
「……おいおい、さっさとメシの用意してくれねェかジェニファー、どうせ今日もヒマだろォ!?」
「朝からうるさいわね、あなたは。私、今日は早くから警備の仕事に行くの。悪いけど適当に食べててちょうだいな」
「あァン!? 今日仕事なんざ聞いてねェぜそんなもんはよォ!?」
「今日は少しモチベーションが高いし、3日も剣を鈍らせておくのはマズいもの。じゃあ行ってくるわね。日が沈む前には戻るから」
「行ってこいやァ、クソがアアアアァァァァァアアア!!!!!!!」
ウルカ王国・西都ヴィルレ。西都とはいえ、王宮の位置する首都ミューミルとは比べ物にならないほど小さい街。
今日も魔女の怒号が始まりを知らせていた。
炊事のお願い(に見せかけた脅迫)をあっさり断られ肩につく位のオークの髪を机にべたりと下ろし意気消沈するケイトを尻目に、ジェニファーは剣を背中に携え歩き出した。
昇ったばかりの太陽と涼しく心地の良い風が2つに結ばれた長い黒髪をより一層艶やかに魅せる。
「あーあ、行っちまったかァ……」
2日振りにジェニファーを仕事へ送り出すと、すぐに腹の虫がなった。
そういえば、昨日は魔法の混成に夢中だったのか食べ物を口にしていなかった気がする。そりゃァ腹減っても仕方ねぇなと思ったのか、ケイトは鍋の中身を確認した。野菜やら豆やら、とにかく大量に入っていた。おそらくあと3日はこれを使い回すつもりなのだろう。いや、そうとしか思えない。
仕方がないので、ケイトは2階にある自分の部屋に戻った。彼女の部屋は色々な種類の粉や液体の入ったおびただしい数の木鉢、魔法混成術について自身が書き連ねた羊皮紙が散乱していた。
魔法混成術とは、ウルカ王国の魔道士や魔法商人などの間でここ最近広まっているという魔術の一種である。ケイトはヴィルレの街だけでなく、この界隈でも有名な人だ。たとえ、映し出された姿が違くとも。
何とか床の見える部分を辿り机の前に立つと、彼女は木鉢を1つ手に取り来た道を戻った。木鉢の中には、赤みがかかった粉が少し入っていた。
この国の魔法混成術は、様々な効能を持った粉や液体、その場の空気などを魔法を用いて混ぜ合わせる術のことだ。
使う物質の種類は多岐にわたる為か、魔法混成術を研究する者の大概は机周りが結構悲惨らしい。
階段を下り、店頭の裏にそっと佇む鍋と向き合う。
すると、鍋の下……普通薪などを置く場所に粉を撒いた。
「魔法混成、ファイアァッ!!」
ケイトが指をかざすと粉が空気中の酸素と混ざり、あっという間に火が燃え盛った。冷めきった食材が再び温もりを持ち始めた。
うし、いい按梅だ。
「混成終了ッ!」
火が消えたことを確認すると、鍋を持ち、テーブルにそのまま引き上げた。
申し訳程度に木皿に盛り付けることすら面倒なことなのだろう、彼女にとっては。
「1日振りのメシ、いただきます!!」
やたらとよく響く声に続くように、先程魔法混成をしたばかりの右手で野菜と豆の煮物(と思われる何か)を掬い上げようとしたが……
「あア"ッ!? あァっつ!! ちぃと早く引き上げるべきだったかねェ……」
こうして、"チンピラ魔女"と呼ばれる女の一日が幕を開けた。