第4話
「はぁ......はぁ......なぜだ!?なぜ、お前たちがオルティアを裏切る?俺たちは......同じ世界の出身で切磋琢磨してきたじゃないか!なのに、なぜ......」
第五世界オルティアのギルドマスターであり、アイリスの兄でもあるオルガは、荒い息を整えながら、自分の眼前にいる、元第五世界出身の5人を見て、そう呟いた。彼ら5人は左側から、バルバ、フウガ、オルイア、ルードラス、アクアスという名前だった。彼ら5人共、格下と言われるオルティアの中で、他の世界と渡り合える実力を持つ才能溢れる者たちだった。他の世界にギルドの依頼をクリアすべく行っていた。
「簡単なことっすよ。この世界を乗っ取るっす。」
「な!?正気か!?そんなことができるとでも?」
まさかの宣言に思わずといったように聞き返した。自分と一緒に過ごしてきた幼馴染みのバルバの言葉に正気を疑った。
「この世界は、俺たちの様なS級の奴らにとっては、弱すぎる。だからこそ、この世界を乗っ取りこの世界を強い国に変える!」
そう言ったフウガだった。オルガは絶句した。確かにオルティアは弱い。だが、自分も含めS級にまで上り詰めた、こいつらとならいずれ、他世界を追い越すことも可能だと思っていた。ちなみにこの異世界での冒険者ランクは下から順に、C級、B級、A級、準S級、S級、特S級、神級と全7クラスに分けられている。彼らは上から3番目のクラスに位置している。S級も各世界を見ても多いとは言えず、彼らの実力は十分に世界トップクラスであった。
「それだとしても、俺らが筆頭にこの世界を引っ張「それでは甘いんや。」
さえぎったのはオルイアだった。
「それでは甘すぎるで、自分。ワイらかて、世界トップクラスや言われとるけどな、実際、上には上がおるんやで?それにワイらかて、S級に何年おると思てるんや。これ以上、上のクラスには今の状態ではいかれへん。だからこその革命や。国取りや。おまんを殺した後に、国王を殺し国を取る。だから、安心して死ねや。あ、そうそう。今頃、おまんの妹は捕まっているさかい。アイリスちゃんは、俺らがもらたるさかい心配すなや。アイリスちゃんを欲しい言うてる人がいるんでな。」
声を上げてオイルアが笑う。途端、オルガは残りの魔力、気力、体力を限界まで絞り出し、今にも倒れそうな体を奮い起こした。彼にとって今、オルイアが放った言葉は何よりも許せないことだった。オルガにとって、アイリスは何よりも大切な存在だった。
「流石にやりすぎだぜ。お前ら。それを聞いて、やらせるとでも思ってるのか?」
「できると思ってるよ。今の君は疲労困憊だし、何より五対一だしね。同じS級同士なら、数が多い方が勝つ。だから、もうゆっくりとお休み。後のことは僕らに任せて。」
この五人のリーダーであり、オルガの一番の親友でもあったルードラス。彼の背後には真っ黒でできた球体が出現していた。
「ブラックホール。君を殺すのに相応しい技だろ?」
辺り一面がブラックホールによって吸い込まれていく。民家も、ギルドホームも景色も全てを飲み込んでいく。そして、それはオルガも例外ではなかった。覚悟を決め、五人の幼馴染に忠告をした。
「お前たちの理想は決して叶わない。それだけは言える。」
ブラックホールの中に消えていく......かのように思えた。
黒一面の世界が途端に真っ白い、それでいてどこか神秘的な美しさをもつ謎の光によって、ブラックホールはおろか、世界が一瞬消えた。
「「「「「はっ?」」」」」
「やれやれ。何やら面白い話をしているな。おまえら。」
そこに現れたのは、アイリスを背負っている悟だった。
さかのぼること5分前。悟とアイリスの2人が冒険者ギルドに向かって走っていた。本来なら、すぐに移動できる距離だがアイリスを抱っこしての状態なためスピードを出し過ぎるとアイリス自身に負担がかかってしまうため比較的遅いスピードで走っていた。それに悟にも色々と思うことはあった。今度の相手は先ほどの傭兵たちの様に一筋縄ではいかないと考えている。彼らは使えても上級魔法までしか発動できず、近接戦闘ができない魔法集団だった。だからこそ悟の能力で対処できた。だが今回の相手はまず間違いなく、傭兵たちより格上だと思っていた。再転移してきた瞬間に、面倒なことに巻き込まれていて、非常にイラついている悟であったが、これも自分を慕ってくれているアイリスため、ミカのためになんとか解決しようとしていた。
「そろそろギルドに着きます。」
アイリスの声を聞くのと同時に何かに強く引かれるような感覚を感じ、思わず注視してみると、目の前が真っ黒に染まっていた。更には、周囲のいたるところから物が吸い込まれていて、悟は気づいた。
「天体魔法か!なかなか珍しい魔法だな。それにこれはブラックホールか?なるほど、オルティアにも珍しいやつがいるじゃないか。」
「感心してないで、何とかしてくださいよ!これってかなりヤバイと思うんですけど!?」
して悟の腕の中でそう叫ぶアイリスを地面に下ろし、結界を張っていると、何やら別の叫び声が聞こえてきた。それに耳を傾けると以下のことがわかった。
一つ目、オルガの幼馴染が国を裏切ったこと。
二つ目、アイリスを拐おうとしていた傭兵とつながったていたこと。
三つ目、彼らのバックに何者かがいること。
「はぁ。どうしようもない奴らだな。これはちょっと躾が必要だな。」
そう呟くと、魔力を高め、両手を前に突き出し、音を立てて叩いた。
「確かにブラックホールは強力だ。全てを吸い込む。それこそ魔法もな。だかな、弱点もある。それは......ブラックホールごと搔き消す圧倒的な力だ。」
そうして、悟のオリジナルであるとある魔法が発動する。
「|スターライトバースト<<星明りの爆発>>」
そうやって世界は白くそまった。