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第3話

しばらくの間、アイリスと二人で歩いていると門が見えてきた。第五世界オルティアの入り口で、関所とも言える所でもある。第何世界と言うと、世界が分かれているように聞こえるが、実際は他の物語で言う王都だとか、地方都市とかとほぼ同じである。王都に当たるのが第一世界アルカディア、地方都市にあたるのが他の世界のことだ。


「着きました!ここがオルティアの入り口です!ここで犯罪などと言ったことを調査し、その検査に合格したものだけ入ることができます。何か悟様の身元がわかるものはありますか?」


「あぁ、それなら冒険者カードがある。確かそれでも大丈夫なはずだよな?」


そういって、胸元から冒険者カードを取り出し、アイリスに見せた。


「悟様は冒険者様だったんですね。えぇ、冒険者カードで問題ありません。門番が質問をしてくるので、それに答えていただき、カードを渡してください。それで大丈夫です。」


アイリスの説明を聞きながら、門に近づいて行くと何やら騒がしかった。二人は顔見合わせ首を傾けると、何が起こっているのか知るために早足で門に近づいた。普通は門の近くでこれほど騒がしいことなどほとんどない。あってもそれは、魔物が襲ってきた時など緊急時の場合のみだ。なので、二人とも万が一に備え集中力を高めた。そうして門の前までくると近くにいた人が二人を見つけた瞬間、悟の方を指差して、


「犯人がいたぞ!!!」


と叫んだ。


悟ももちろんだが、アイリス自身もこの男が何を言っているのかわからなかった。悟の方に弓や、魔法をぶつけてきた。


「......っ!!」


我に帰った悟は瞬時に戦闘モードに入ると、アイリスの前に一歩出て、膨大な魔力で2人を囲んだ。弓や魔法は悟の魔力の障壁によって、二人に当たることはなかった。


「待ってください!みなさん!悟様は敵ではありません。私を助けてくださった、私の命の恩人です!だから、攻撃はやめてください!」


アイリスが攻撃してきた、恐らくは知り合いなのだろう、男たちに止めるように促した。しかし、それもむなしく攻撃の嵐は終わることがなかった。それどころか、攻撃はますます激しくなるだけだった。


「この野郎め。アイリスちゃんを攫うだけでなく、様付けで呼ばせるとか何てひどいやつだ。きっと催眠魔法を受けてるに違いない。待っててね、アイリスちゃん。必ず俺たちがその男から助けてあげるから。」


あまりにもひどい言い草である。お約束展開と言えばそれまでだが、それにしてもひどかった。


「みなさん!違います!私は催眠魔法など受けていません!悟様は命の恩人なのです!それに、無駄です。私たちオルティアでは、悟様に攻撃が通ることはありません。」


アイリスの必死の願いも叶わず、攻撃は止まない。


「大丈夫だよ、アイリスちゃん。心配しなくてもすぐ助けてあげるから。」


アイリスも流石に言葉を話せなかった。まるで住民みなが何かに取り憑かれているような、そのようなものに感じられた。アイリスの背筋に、冷たいものが走った。


「アイリス。恐らくだがこいつら、催眠魔法を受けている。それに、ここから5キロくらい行ったところに誰かが戦っているのを感じられる。一人は......魔力がかなり減っている。危ない状態だ。あとの反応は......っ!!間違いない。こいつらが犯人だ。アイリス、こいつらは後回しだ。まずは張本人を叩く。」


「そこは冒険者ギルドです!戦っているのは......私の兄だと思います。私の兄はギルドマスターですから。」


アイリスが顔を下げて、今にも泣きそうな声でそう言った。自分の兄が死にかけているのである。それだけでなく、住民までもか操られているのである。ほんとは泣き叫びたい。しかし、悟にそれを見られるのは嫌だった。だから必死に我慢した。悟はどこぞの鈍感主人公ではない。なので、アイリスの気持ちもわかっていた。アイリスが泣かない理由も。


「ひゃっ!」


アイリスの可愛らしい悲鳴がした。悟がアイリスの首と膝の後ろに手を回して持ち上げたのだった。いわゆるお姫様抱っこだ。何の前触れもなく持ち上げられたので思わず悲鳴をあげるが、悟にされたことに気づき頰を染めた。


「さて、ほんじゃーお兄さんを助けに行こうか。元凶もそこにいることだし。ぶち飛ばそう。」


「いいんですか?私のためにそこまでしてもらって。」


アイリスは遠慮がちに答えた。


「いいに決まってるだろ?ここにいる狂った住民には悪いが後回しだ。元凶を止めればこいつらも元に戻るだろう。まぁ、元凶が何かはおおよその見当はつくがな。ってことだ。言った通りお前たちは後回しだ。しばらくそこにいろ。"|アブソリュート・プリズン《堅城なる牢獄》"」


そういうと、魔力で檻を創り出し、そこに住民を閉じ込めた。住民が檻を叩くが傷一つ付くどころか、埃さえ付かない。それほどまでに堅い牢獄だった。


「この卑怯者が!俺たちをここから出しやがれ!そしてアイリスちゃんを解放しろ!」


「はははっ。やだね。それにしてもアイリスを解放しろの一点張りだな。アイリスを返したらどーするんだ?」


悟は先程から気になっていることを住民に質問した。彼らはまるで取り憑かれたかのようにアイリスを解放することを願っている。確かにアイリスは可愛い。だから、彼女のことを妹や娘に想う人もいれば、自分のものにしたい人もいるだろうしかし、これほどアイリスにこだわることに意味があるのかと思えていた。


「アイリスちゃんを早く解放しろ!この卑怯者が!」


「嫌だな。全くもって話にならん。いい加減他の言葉はないのかよ。返してくれと言っても返すわけはないけどな。」


相変わらずアイリスの解放が一点張りだった。話にならないと思った悟はアイリスにギルドの場所を聞き出し、そこに向かって走っていった。そして心の中でこう呟く


「さてと、それじゃアイリスのお兄さんを助けますか。俺の索敵に引っかかったのは五人。黒幕も含めて、殲滅の開始だ。」




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