プロローグ
「痛っ。急に呼び出すのやめてほしいんだが?」
何も存在しない真っ白な部屋の中に、尻餅をつく形で落とされた俺は、目の前にいる神に恨めしそうな目を向ける。
いつも通りに学校に通い、いつも通りに家に帰宅中に目の前が白くなったと思えば、毎度おなじみの光景が目に飛び込んできた。
「いつもそのようにして、呼び出しているのですから、いいじゃありませんか。それに、全ての世界の神である私に直接呼び出される人間なんて、本当に一握りですよ?」
確かにその通りだと思いつつも、なぜ自分を呼び出したのかを聞いてみる。
「あぁ、悟君を呼び出したのは、また君とお話がしたかったからなんです。」
この、駄神め。そんなことのために毎回俺の貴重な時間を奪うな。あ、紹介し忘れたが、俺の名前は、金剛悟。高校2年生。どこにでもいる普通の高校生だ。そして、目の前にいるのが、この世界の頂点に君臨する主神こと、ミカ=エレノイアである。この神様は、とんでもなく美人でスタイルもいい。腰まで届く美しい金髪に、宝石のルビーのように輝くきれいな目、出るところはこれでもかというほど出ており、主神の名にい相応し容姿だと思う。
「また、お話か・・・・・・。別にいいけど、本間に話すことなんて何にもないぞ?こっちの世界では特に変わったことなんてないからな。」
「嘘だよ~。今日は何となく君を呼んだだけだから。あ、待って!そんな、握りこぶし作って怒らないで!悪いと思ってるから!」
俺は青筋をたててこの駄神をにらんでいたが、怒るのもバカバカしいと思い、こぶしを緩めた。だが、そんな考えは甘かったとすぐに後悔することになる。
「それも嘘でした~。本当に用事があって悟君を呼んだんだよ?何もなく君を呼ぶはずないじゃないですか。」
とりあえずむかついたので、この駄神の顔面にアイアンクローをがっつりくらわした。
「ちょっと、ストップ!ストップ!痛いって!乙女の顔に傷がついたらどするの!?責任とれるの!?この主神たる私にそのようなことが、許されるとでも思っているのですか!」
うん。マジでうざいから、握る手の力を強めることにした。
「ごめん。あやまるからさ・・・・・・。本当にもげる、乙女の顔がもげちゃうからさ。」
あんまりにも、泣きそうな顔をしているので手を放し、本当にあるはずの様子を聞く。
「はやく、用事を言え、この駄神。そろそろ家に帰りたいんだ。夕食の準備もあるし。何より、あんたの相手をするのはホンマに疲れるんだ。」
「言ったね!ついに言ったね!私のことを駄神って。駄神ってなんなの!私、主神なんだけど。他の神より偉いし、悟君のような人間には、命を懸けても会えないような天上人なのに。私の事を駄神って言ったな!もう、怒ったからね。あやまっても「はやく要件を言え。駄神。」はい、わかりました。要件を言うので、その手をしまってください。これ以上は、本当にもげちゃうので。」
全く、最初からそうしていればいいのに。相変わらずキャラが一定しない人だな。まぁ、そこが面白いところでもあるんだけどな。
「悟君を呼び出しだのはね、君にもう1度異世界に行って欲しいからなんです。
「なんでだ?かつての約束は果たしたし、もう楽しめることなんてないと思うんだけど」
俺はかつて、異世界に行っていた。主神であるミカに頼みごとをされ、それを果たすために俗に言う異世界転移を経験した。確かに、こちらの世界では考えられないような事ばかりで、楽しい事ばかりではなかったが、大方満足できるものだった。約束を果たした後は、こっちの世界にもどり、先ほどのやり取りのようにミカと話をすると言うのがほとんどだった。
「確かに、あいつらに会いたいと思う気持ちがないわけではないが、それでもまた、転移をしてまで会いたいと思わない。」
かつての転移で、共に戦った仲間や恋人といったものはいたが、あいつらにはちゃんと別れ話もしたし、今更、会いに行くほどではないと思う。
「そう思ってるのは悟君だけなんですよ?他の方々はあなたに会いたいと願っていますよ。それこそ、あなたの恋人たちなんかは何とかして、あなたを呼ぼうと頑張っていますしね。それでも、悟君は会いたくないのですか?」
そこまで、俺の事を思ってるとはな。やっぱりいい女たちだ。
「わかった。転移をしよう。だが、その前にもっと詳しく話してくれ。転移する理由だとかそういったことを。」
「わかりました。ですが、まずはあなたに転移していただく場所について説明します。その場所とは、第5世界に行っていただきます。」
ん?第5世界?俺が行ったことのある世界とは違うのか?
「俺の行ったことのある所は、第1世界だったと思うんだが?なんで、第5世界なんだ?」
俺がかつての転移で行ったことのある場所は第1世界だった。異世界には5つの世界があり、それぞれにランクというか、順位がつけられている。
かつて、俺が行った第1世界アルカディア。第2世界イリア。第3世界ウラトリア。第四世界エクストリア。そして、俺の行くことになりそうな第五世界オルティア。アルカディアから、オルティアまでの全5界に分けられており、数字順に強さといったものが変わる。
「はい、あなたには第五世界にいってもらいます。理由を説明すると長くなるのですがよろしいですか?」
「あぁ、構わない。できるだけ簡潔にしてほしいがな。」
俺としても、なぜなのか理由を知りたいとこだからな。
「悟君が知っている通り、世界ごとに順位がつけられておりますよね?そのせいか、オルティアが馬鹿にされるというか、下に見られてるんです。もちろん、悟君の仲間はそれをなくそうとしているんですが、状況はあまりよくありません。そこで、あなたに行ってもらって、状況を変えてもらいたいのです。」
なるほど。一応納得はしたが。それにしても、俺がいなくなってから4年で、これほど格差が出来るとはな。この話は簡単な話ではない。実際にオルティアのレベルは低いし、オルティア以外の世界は、レベルの差はあまりない。第1世界は、正直言って化物クラスだからな。オルティアとは、天と地ほどの差がある。
「だいたいわかった。それじゃ、俺はオルティアのレベルを上げればいいんだな?」
「はい、その通りです。近々、5世界から代表を募り大会が行われます。そこに向けて、力を上げればいいと思います。」
5世界から代表を募り行われる大会か。俺のいない間にそんなもんが出来るとはな。面白そうだ。それに出ればあいつらに会えそうだし、久しぶりに戦うことができるかもしれないな。
「頼みがある。俺の能力とか、魔力だとか預けたいものを返してほしい。さすがに、あいつらと戦うのに今からでは間に合わん。頼みを聞いてやるんだ、そのくらいいいだろ?」
かつての俺の力。オルティアのレベルを上げるためにも俺の力は返してもらわないと困る。
「はい、もちろんです。元々そうするつもりでしたし、問題はありません。ついでに、新しい能力とかいります?希望があれば伺いますけど。」
新しい能力か......何かいいのがあるのか?正直、あまり必要ではないな。そうゆうことで......
「いや、必要ない。元々の能力だけ返してくれるのなら、それでじゅうぶんだ。それに、元々の能力だけで戦うぶんには足りるしな。」
「わかりました。それでは元の能力だけ返します。」
ミカがそう言うと、俺の体が明るく光り、魔力といったその他のものが体に入ってきた感触があった。
「これで、完了です。それではそろそろ転移を始めたいと思うのですが、よいですか?」
「あぁ、構わない。はじめてくれ。」
いよいよ、2回目の異世界転移だ。前回とは少し違うが楽しんで行くとしよう。あいつらに会うのも楽しみになってきた。
「それでは、いきます。私のお願いを聞いてくださりありがとうございます。お気をつけて、いってらっしゃい。」
ミカがそう言うと、俺の体が再び明るく光った。
その瞬間、真っ白な部屋の中には主神1人になった。
「行ってしまいましたか。」
私のお願いを聞いて、異世界に行ってくれた青年を思い出し、感激に浸っていました。
なんやかんやで、私の急なお話にも付き合ってくれたりして、優しい人でした。悟君なら、何とかしてくれそうだと思えます。
「ですが、オルティアへの差別はあなたが思ってる以上に厳しいですよ。けど、心配ないですよね。あなたは私が認めている数少ない人です。あなたならきっと大丈夫。」
私は心から思う言葉を口にしました。
「2度目の異世界転移頑張ってくださいね。私はいつでも悟君のことを見ています。」