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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
98/137

第二十四局 挫折 一本場『現実逃避』

挿絵(By みてみん)


 どうして――?

 どうして、こんな事になったのだろうか?


 ………………


 そんなの考えるまでもない。コレは天罰だ。


 そう……あの人を傷付けてしまった、わたしへの罰……


 後ろ手に手首を縛られいるわたしは、薄暗い室内を見渡した。

 長年放置されている廃工場か廃倉庫であろう。床には空き瓶やタバコの吸い殻などのゴミが散乱し、回りには汚れた木製のコンテナが幾重(いくえ)にも積み重なっている。


 物が多いから乱雑に感じるけど、多分大きさは学校の体育館くらいはあろう。


 この密閉された空間に、数十人の――いや、もしかしたら百に届く人数の息づかいが響いている。


「しっかし……随分と集まったな、おい」

「へっ……そんだけ、あの南姉弟が嫌われてるって事だろ?」

「アイツらに潰されたゾクやチームは、結構あるって話しだしな」


 そんな中、わたしのすぐ近くに立つ五人の男達――見覚えのある顔。さっき公園でわたしに絡んで来た男達。


 そして――あの日、わたしを襲った男達……


「しかしよぉ……さっき揉めたばっかの友子ならともかく、友也の方がわざわざ来ると思うか?」


 来るわけがない。

 わたしは、あの人を――先生を傷付けてしまったのだから……


 あの日、わたしを助けてくれたのは先生だった。

 剣道の試合のあと、その事に気が付いたわたしは、とても嬉しくなり、とても浮かれていた。


 しかし、その先生が、実は男の人だった……


 先生がなぜ女性の格好を――お姉さんの格好で学院に通っていたのかは分からない。

 確かに、先生の正体を知った時にはショックだったし、今でも男の人は怖い。


 でも……


 あの時、わたしを助けてくれたのは、紛れもなく南先生なのだ。


 いえ、それだけじゃない。


 再会した始業式の日、校門前で絡まれている所を助けてくれたのも先生だし、剣道部で浮いた存在だったわたしを気遣って、試合までしてくれたのも先生だ。


 なのにわたしは……

 わたしは……公園で、先生が差し伸べてくれた手を払い除けてしまった。


 最低だ……

 本当に、わたしは最低だ。


「来ねぇなら来ねぇで、構やしねぇ。そん時は、この女に楽しませて貰うだけだ」

「へへへっ。身体もあん時より、少しは成長したみてぇだしな」


 好きにすればいい――コレは罰なのだから。


 わたしには、先生に助けて貰うだけの資格もなければ、価値もない。

 そう、生きている価値すらないのだから……


 今のわたしには、絶望感すらない。あるのは虚無感――全ての事に意味を感じられずにいる。


 生きている事にすら、意味を感じないのだから……


 そんな、自暴自棄に(おちい)ったわたしの目には、映る物が全て遠い世界……別世界のように見えていた。

 自分の事を話す男達の会話すらも、別世界のよう……


 ふと、男達の話し声に紛れて、物音が聞こえてくる。

 錆びついた扉を開く音――正面にある鉄製の閉ざされた大きな門の隣。通用口の扉が開く音だ。


「あっ!? お疲れ様~ッス!」


 扉の向こうから現れた人物へ、一斉に頭を下げる男達。


 暗くてよく見えないけど、シルエットからするに大柄な男性のようだ。

 ゆっくりとした足取りで、コチラへと近づいて来る。


 まあ、いまさら一人二人増えたところで――って、えっ!?


 近づいて来るにしたがって、男性の顔が認識出来るようになって来る。

 そしてわたしは、その見覚えのある顔に思わず目を見張った。現実から逃避していたわたしの心は、強引に現実へと引き戻されたのだ。


「ど……どうして、お兄ちゃんが……ここに?」

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