第十九局 ランチ 一本場『社会的抹殺』
その後、いくつかのゲームで、店内記録を塗り替えた北原さん。
特に、太鼓を叩くゲームやダンスを踊るゲームのように、身体を動かして反射神経を競うゲームは、とても初めてとは思えないほどのチートぷっリだった。
特にギャラリー達を唖然とさせたダンスゲームでは――
「剣道の足運びの応用です」
などとニッコリ笑って、息一つ乱さずにパーフェクトを叩き出していた。
今にして思うと悔やまれるのは、あのダンス姿を動画で撮影しておかなかったという事だ。
和服姿の美少女が、上半身をまったく揺らすこと無く、足運びだけでパーフェクトを取る姿。ネットにアップすれば、物凄いアクセス数を叩き出したであろう。
もしかしたら、P○APの記録も塗り替えたかもしれない。そうなれば、まさに一攫千金! 大金持ちだったのに……
ちなみにピコさんのネット動画による収益は、二ヶ月で3000万円位だとネット民の間では推測されている。
しかも、その収益は、今この瞬間も増え続けているのだ。
なんと羨ましぃ……
まあ、そんなワケで、ゲーセンでいい感じに時間も潰せたし、今は店を移動して昼飯を食べに来ている。
ちなみに選んだ店は、フライング・カーテンと言うファミレスタイプのハンバーグレストランだ。
北原さんのリクエストは、普段オレが外食する店がいいとの事だったけど――
まあ、さすがに和服少女を連れて、マックのハンバーガーや吉田屋の牛丼、鶴亀のうどんに次郎のラーメンなどというのは気が引けた。
ましてや、CoCoのカレーなど以ての外である! もし、あの高そうな着物にカレーがはねたらと思うと、気になって食事が喉を通らなくなってしまう。
そこで、普段ではないけど、ちょっと贅沢したい時に来る店をチョイスしたのだ。
GWの初日という事もあり、結構な客の入りではあったけど、幸いにして待つことなく席につく事が出来た。
さて、一通りの注文も終え、料理を待つこの間――
いったい、どんな話をすればいいんだ?
ただでさえ女の子慣れしていないのに、女子高生との共通の話題なんて、何も持っていないぞ。
「あの……先生?」
「な、なに?」
と、話題に困っていたところで、北原さんの方から話しを切り出してくれた。
「先生は、携帯電話はお持ちなのですよね?」
「ええ、持ってるわよ」
「あ、あの……も、もし、よかったら……番号交換をしてもらえないでしょか?」
番号交換か。これは渡りに船だな。
てゆうか、もっと早く交換していれば、あの乙女軍団とも知り合わずにやり過ごせたかもしれなかったのに……
「あっ! ダ、ダメならいいんですっ! ムリにとは――」
「いやいや、いいわよ、携番くらい。交換しましょ」
「本当ですかっ!?」
北原さんは着物とお揃いの巾着袋から、嬉々としてスマホを取り出した。
「え~と、赤外線は使える機種?」
オレも使い込まれたガラケーを取り出しながら、北原さんへ尋ねる。
スマホだと機種によっては、赤外線通信がないからなぁ。
「はい、大丈夫です。使えます」
「そう――じゃあ」
お互い携帯の先端を向かい合わせる。
ピピッという電子音と同時に、北原さんの携帯番号とアドレスが画面に表示された。
北原さんの方にも、スマホの画面にオレの番号とアドレスが表示されているはずだ。
4.5インチの、最近のスマホにしては小さめな画面を確認すると、北原さんは嬉しそうにそのスマホを胸に抱きしめた。
その姿を微笑ましく眺めながら、お冷の入ったコップに口を着けるオレ。
そう言えば、オレの携帯にも随分とアドレスが――しかも、女性のアドレスが増えたもんだ。
緊急連絡用としてクラスの娘達と、そのメイドさん達全員のアドレスが入っている携帯を眺める。
…………………………って!? これって大変な事なんじゃないかっ!?
響華さんや真琴ちゃんという、飛び抜けたお嬢様が身近にいて少し慣れてしまっているが、ウチのクラスの娘達だって、みんな十分にVIPだ。
そこへ更に、西園寺家次期当主様や、AZUMAコンツェルンの一人娘。そして新たに、日本武道界の首領と呼ばれる北原十三段の孫娘まで……
そんなVIP娘達の個人情報が、こんな古ぼけたガラケーの中に詰め込まれているのだ。
も、もしも……
もしも、この携帯を落としたりなんてしたら……
そこまで考えると、不意に不吉な言葉が頭を過ぎり、オレは背筋を凍りつかせた。
そう、とてつもなく不吉な、漢字5文字…………
『――社会的抹殺――』




