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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第十八局 アーケード街 三本場『高山さん家のみなみちゃん』

挿絵(By みてみん)


「ぼくホットケーキは好きだよ。コゲてなきゃね」

「いきなり何を言ってますの、あなたは?」


 ゲームセンターの二階。自動販売機の影から、先生達をこっそりと監視しているわたし達。


 階下で北原さんがクロネコのぬいぐるみを入手すると、目の前の大きなメガネに蝶ネクタイをした真琴さんが、突然ワケの分からない事を言い出した。


「いやぁ~。高山さん家のみなみちゃん繋がりで、一応言っておいた方がいいかと思いまして」

「意味が分かりません」


「まあ、そう言わず響華さまも、『才能をいかした仕事だろ、ステキだよ』くらい言って下さいよ。山口さん繋がりで」

「ますます意味が分かりません」


 ホントこの子は、時々ワケの分からない事を言い出すから困る。


 でも、この言葉の意味も、調べた方がいいのかしら……?

 まあ、調べるにしても優先順位はかなり低めね。


 それにしても……


 階下では、北原さんが次々とぬいぐるみを落として行く。あのゲームについては、先日真琴さんに説明してもらったけど――


「思ったより簡単そうなゲームなのね」

「そう思うなら、あとで試してみて下さい。多分、響華さまでは、ひとつも取れないと思いますよ」


 ムッ! そんな事を言われては、是非もない。

 北原さんよりもたくさん取って、あなたをアッと驚かせてあげしょう。


 ま、まあ……後日談ではあるのだけど――


 このクレーンゲームとやらに一万円以上使って結局ひとつも取れず、見かねた店員さんがケースを開けて、ぬいぐるみを三つほどくれたのは、また別のお話しで……


 とはいえ……


 ぬいぐるみを取るたびに、嬉しそうにはしゃぐ北原と、それを優しい笑顔で見守る南先生。

 その光景は、見ていて胸が締め付けられる。多分、真琴さんもそれは同じはずだ。


 しかし、何もせずに遠くから見守るだけのわたし達……


 真琴さんが、ついさっき口にした軽口のような冗談も、この締め付けられる気持ちを、少しでもごまかそうとしてのモノだろう。


 昨日まで色々と計画を立てていたわたし達。その計画の段階では、このクレーンゲーム対策も出ていた。


 北原さんが成功しそうになったら、サッカーボールをぶつけて台を揺らし、失敗させる――と息巻いていた真琴さん。

 現実問題として、それが可能かどうかはともかく、そんな彼女ですら今は何の手出しもせずに静観している。


 原因はそう……昨夜届いたあの報告書だろう。


 つばめが調べて来た、北原さんの男性恐怖症に関する報告書。その報告書を読み終えた時に出た、真琴さんの呟き――


『あ、あのときの子が忍ちゃんだったんだ……』


 そのとき初めて、自分も北原さんの男性恐怖症の原因に関わっていると知った真琴さん。そして、その真琴さんから詳しい話を聞き、わたしが四年前から持っていた疑問も解明された。


 四年前の大学空手選手権大会で、なぜ南先生が決勝を辞退し、不戦敗になったのかという疑問が……


 そう……南先生も、北原さんの男性恐怖症の原因に深く関わっているのだ。


 二人の様子を見るに、あなたはまだ知らないのでしょう。


 隣に並ぶ北原さんに、優しい笑みを向ける先生。

 他の女性に向けられる、先生の微笑みを見るのは胸が痛い。


 でも、真相を知ったあなたはどんな顔をするだろうか……その事を考えると、それ以上に胸が締め付けられ苦しくなる。


 きっと優しい先生の事だ。自分を責めるに決まっている。


 そんな時にわたしは――わたし達には、何ができるのだろうか……

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