第十五章 決戦前夜 三本場『剣の英霊』
女体化――
日本の独自文化の一つであり、過去の偉人や英雄を女性として描く事。
いや、今の日本では、過去に限定せず現代の政治家やテロ組織の構成員まで女体化されている。
某テロ組織を女体化させたアイシスちゃんは一見の価値があるので、気になる方はYou○ubeで検索してみるとよいだろう。
更には日本は人間だけにとどまらず、MS少女のようなロボットや兵器のような無機物に、ご当地の名産品。果てはテレビや洗濯機のような家電に鉛筆や消しゴムのような筆記用具まで、なんでも女性にして萌化させてきた。
いや、それだけじゃない。日本は物どころか、言語まで女体化させている。
例えば『寝言は寝て言え』という言葉。コレをルーマニアの偉人、ネゴトワ・ネティエという架空の人物まで作り上げ、それを女体化してしまったのだ。
ちなみに、某掲示板で馬鹿な発言をすると、このネティエさんの画像を貼られたりする。
ちなみに、女体化ではないが、ネティエさんの類似として『ソレナンテ・エ・ロゲさん』や『エーカゲン2世さん』、『クソスレータ・テルナさん』。更に日本からは『南冲尋定さん』などといった偉人も存在するのだ。
まったく、日本人の想像力には、ホント驚かされる。
海外から『日本人は未来に生きている』とか『彼等は別の星の生き物だ』などと言われたり、『また日本がやりやがった!』『OK、日本。もう休んでもいいんだぜっ』『てか、そろそろ誰か日本を止めろっ!』などと言われても、何の反論も出来ない。
さて、だいぶ話が逸れてしまったが、なぜ急にそんな話をしたか?
それはオレの前に今、かのエクスカリバー伝説や円卓の騎士で有名なアーサー王が、女体化された姿で立っているからだ。
「南さま、買い取りの査定が終わりました」
「あっ、はい」
女体化された1/5のアーサー王が立つカウンターの向こう。営業スマイルを浮かべる、エムロイの神官コスプレ衣装を纏う、ゴスロリ女性店員が差し出したコピー用紙に目を落とす。
「メディコム限定のリアルアクションヒーローズシリーズ。箱付きで状態がとても良いので、Sランクで査定させて頂きました」
オレは、そこに記された金額に目を通し、もう一度アーサー王へと目を向けた。
こんなもんか……いや、予想よりも高いくらいだ。さすが剣の英霊アーサー王。
さて、ここまでの会話でオレが今、どこで何をしているかは分かったと思う。
そう、オレは今『なんでもかんでも鑑定団』というリサイクルショップに秘蔵のフィギアを一つ、売りに来ているのだ。
北原さんと土曜日に出かけると約束してから三日。そう、今は決戦を明日に控えた金曜の夜。
しかし、オレはここに来て一つ、大きな難題にぶつかっていた。
まっ、こんな所に来ているのを見れば分かると思うが、軍資金が心許ないのである。
いくらオレの普段出かける所が見たいと言われても、財布に諭吉さんはおろか一葉ちゃんすら居ないのでは、さすがに厳しい。
それに、相手がいくらお嬢様とはいえ、年下の女の子――ましてや教え子に奢って貰うわけにはいかない。
そこで涙を飲み、オレは秘蔵の一品を手放す事に決めたのだ。
「この金額でよろしければ、本人確認が出来る物とコチラの買い取り書にサインをお願いします」
「はい」
オレは、単車の免許を差し出し、代わりに受け取ったボールペンで買い取り書にサインをして行く。
「はい、ではコチラ買い取り金額になります。お確かめ下さい」
ふぅ……
とりあえず手持ちと合わせて諭吉さん二枚と一葉ちゃん一枚はキープ出来た。
「また、何かお売り出来る物がありましたら、お気軽に起こし下さい」
出来ればもう、買い取りでは来たくないものだ。
オレは、営業スマイルを浮かべるエムロイの神官さまから、もう一度カウンターに立つアーサー王へと目を移した。
さらば剣の英霊よ……
新しい主人の元でも元気に暮らせよ。
そう心の中で声を掛け、オレは別れを惜しみつつ踵を返して出口の自動ドアをくぐった――
『明日かかる費用は、後でぜってぇー姉さんに請求してやるっ!』
そう心に誓いながら。




