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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第十四局 サイ☆アズ 再び

挿絵(By みてみん)


 お兄ちゃんの天然なボケに思わず突っ込みを入れてしまったわたしは、一緒に覗いていた響華さまに口を塞がれ、校門の影に引っ張り込まれていた。


「…………」


 門柱の影からジッとお兄ちゃんの方をうかがう響華さま――


 てゆうか、口を塞がれるのは仕方ないにしても、鼻を摘まむのは勘弁してください。マジ苦しい……


 てか、なに? このコピーペーストみたいな既視感は? しかも、前回より長いような……


 ヤバイ、視界がかすんできた――


 ぼ~くは~、視界が~、かすみ既視感(デジャーヴ)る~♪


 って! こんなスマホゲームのCMソングを歌っている場合じゃない! この感覚はマジでヤバイ。


 昔、友子さんとプロレスごっこをした時に、フロントチョークスリーパーで気絶させられた時の感覚に似てる。口と鼻を塞がれるだけで、こんな感覚になるなんて――


 あゝ、知りとうなかった、知りとうなかった、知りとうなかったよ~♪


 じゃなくてぇーっ! マジ倒れるっ! 倒れる、倒れ……

 ……るだけで腹筋ワンダ――じゃねぇーっ!!


 なんでさっきからオモシロCMが、走馬灯のようにグルグルとっ!

 こうゆう場合、走馬灯のようにグルグル回るのは、お兄ちゃんとの美しい想い出じゃないの普通っ!


 そう、先生との美しい想い出――

 白馬に乗った先生。その先生がわたしをさらいに颯爽と教室へ――


『授業じゃ~っ! この問題分かる者はおるか? おらんのか? 頭が高いっ!!』


 ってーーっ!! 将軍先生じゃねぇっ! しかも古いっ! 吐露非狩古鬱(トロピカルフルーツ)だーっ!!


「…………どうやら気が付かれなかったようですわね」


 お兄ちゃんが行ったのを確認して、ようやく解放されたわたし――


「ぷはぁ~、死ぬかと思った……てか、なんでわたしは命をかけてまで、おもしろCMの紹介を……って、それどころじゃなくてっ!」


 わたしは響華さまの方へと振り返り、その胸ぐらを掴んだ。


「ちょっと響華さま! 今の見ましたっ!? どうなってるんですかっ!? どうゆう事ですかっ!? どうしてお兄ちゃんがあんな小娘とデートするんですかーっ!?」

「ちよっ、真琴さん……く、くるし……おち、落ち着いて……」

「えっ? あ……し、失礼しました」


 ほぼ無意識に響華さまの胸ぐらを掴んで、グラグラと揺さぶっていた事に気付き、慌てて手を離した。


「ふ~っ、まったく……何度も言いますけど、真琴さんは淑女としての自覚が足りませんわよ」


 お小言を言いながら、曲がったタイを直す響華さま。


 やはりここは、自分で曲げたのを棚の上に投げっぱなしタイガースープレックスで放り投げて『タイが曲がっていてよ……』とか言うべきなのだろうか?


 てか、さっきから既視感がヒドイ。コピペで楽してんじゃねぇぞ、創造主っ!


 って、いやいや、今はそんな事を言っている場合ではない。


「お兄ちゃん、女の子とデートするのなんて、絶対初めてですよ。その初デートをあんなポッと出の小娘に奪われるなんて……」

「初めて? それにしては、お誘いを受けた時、随分と落ち着いていらっしゃったようですけど?」

「どうせ、お兄ちゃんの事だからデートだと思わないで『なるほど、お嬢さまは庶民の暮らしが気になるお年頃って事か』とか思ってんですよきっと」

「い、いくらなんでも、そんな鈍感なはず――」

「いいえ、間違えありません」


 わたしの予想に否定的な響華さまの言葉。そのセリフの途中でわたしは、それを遮るように断言した。


「それに、響華さまがお兄ちゃんを生徒会に入れたり、お兄ちゃんの部屋に行ったりしてるのも、同じように庶民の暮らしに興味があるからだと思ってますよ」

「そ、それってもしかして先生は…………わたしの気持ちに気付いていない?」

「はい。まったく、気付いてません。まあ、わたしの方も年の離れた妹が、久しぶりに会ったお兄ちゃんに浮かれて甘えてる――くらいにしか思ってないみたいですけど……」


 ガックリと肩を落とすわたしに対して、肩をぷるぷると震わせる響華さま。


「そ、そんな……それほどまでに鈍感な殿方がいるなんて……」

「まっ、ハーレム系ラノベの主人公なんて、得てしてそんなモンですけどね」

「その、ハーレム系ラノベというのはよく分かりませんが、これは由々しき問題ですわ」


 響華さまは、真剣な表情を浮かべコチラへと目を向ける。


 そして、わたしも顔を上げて、その黒曜石のような漆黒の瞳を見つめ返した。


「今朝の『朝の甘いひととき』作戦は、原因不明の爆発で、失敗しましたけど――」


 いや、原因はアンタだ、アンタッ!


「ここは再び一時休戦。もう一度作戦を練り直しましょう」

「はい、響華さまっ! デートの成功は、なんとしても阻止しなければっ!!」


 わたしは響華さまの差し出した手を握り返し、そう断言した。


「ではまず、わたしは尾行に必要な物なんかを用意しますので、響華さまは情報収集をお願いします」

「情報収集?」

「そうです。まずは敵の戦力を知らなければ、作戦も建てられませんから」

「なるほど、彼を知り己を知れば、百戦して危うからずね」

「はい。響華さまも知っていると思いますけど、忍さんは男性恐怖症らしいです。まずはその辺りから」

「分かったわ。すぐ、つばめに調べされるわ」


 つばめ……? ああ、響華さま付きのメイドさんか。

 西園寺家次期当主付きのメイドさんなら、優秀なのは間違えない。任せても安心だろう。


「くくく……見てるがいい、小娘。貴様のプライベートと恥ずかし過去を丸裸にしてくれるわ」

「だから、真琴さん。あなたの言葉遣いが乱暴ですわよ」

「こまけぇこたぁ、いいんですよっ!!」

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