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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第七局 作戦失敗 一本場『白と紫』

「ホントに、朝からヒドイ目に合いましたわ」

「ええ、まったく……」

「けれど……いったい何がいけなかったのかしら?」

「まっ、ぶっちゃけ全部ですけど」


 ウチから徒歩五分の所にある、簡易な屋根と二つのベンチが置かれたバス停。


 オレの座るベンチの真後ろにあるベンチに、並んで座る響華さんと真琴ちゃん。

 二人で何やら話しているようだけど、とりあえずスルーを決め込むオレ。


 昔からガールズトークに男が首を突っ込むとロクな事がないと、相場が決まっているし。

 ちなみに三人で話していても、ガールズトークとして違和感がないとかって突っ込みは要りませんので。


 結局あのあと、二人を風呂場に放り込んでからキッチンの掃除をして、メイド服を洗濯してと、慌ただしくて朝飯どころではなくなってしまっていた。

 それに今日は寄りたい所があるので、いつもより一本早いバスに乗りたかったし――


 まっ、関サバくんは、帰ってから調理し直して美味しく頂くとしよう。


 とりあえず、二人とも制服を持参していたので、着替えは問題なかったけど……

 メイド服なんかをベランダに干してきて、ご近所の奥様(マダム)達に変なウワサを立てられないかが心配だ。


 彼女たちは、一の事柄を十にして町中に広める主婦の口、マダムマウスという恐るべき固有スキルを所持している。

 その土地で平穏無事に生活したいのなら、主婦を敵に回さないというのが鉄則だ。


 それと今は関係ない話しではあるが、奥様達の一番恐ろしいスキルは主婦の瞳、マダムアイズである。


 これは、息子が隠したエロ本の場所を的確に見抜くという、とてつもなく恐ろしいスキルだ。

 そしてウチの母親もそうだったけど、見つけたエロ本を無言で机の上に置いておくというコンボ技を使う。


 この技をくらうと、二、三日は母親の顔をマトモに見られなくなり、言われる事には絶対服従をしてしまうという、悪魔の技なのだ……


 とは言っても、両親が事故で死んでから五年。

 もう吹っ切れてはいるけど、エロ本を見つけてくれる親がいないとゆうのは、やはり寂しいモノがある……


「でも、こんな美少女が二人もシャワーを浴びているのに、覗きにも乱入しにも来ないなんて、男としてどうかと思うのですが――ヘタレ?」

「やはり普段から女装をしていると、女性に興味がなくなるものなのでしょうか?」


 オレがちょっぴりセンチな気分になっているのに、後ろでは無神経なガールズトークが続いていた。


 突っ込むな……突っ込んだら負けだ。


 てゆうか、青山、湖中(コナカ)と並び、日本の三大紳士と言われる紳士(ジェントル)のオレが、覗きや乱入なんてするわけがない。

 決して女性に興味がないわけでも、ましてやヘタレでもなく、紳士(ジェントル)だからである。

 これ重要だから、二回言っておく。


 とはいえ、浴室のドア越しに、

『なかなかに立派な足湯ですね。それで浴槽はどこですの?』

 なんて聞こえてきた時は、思わず乱入しかけたけど。


「でも、シャワーといえば――」


 真琴ちゃんの顔が、何かを思い出すように真剣な表情に変わる。

 そして、何やら一人でブツブツと呟き始めた。


「脱衣所で見た響華さまのあの下着、あれは反則だろう。昨日の今日だ、縞パンを穿いて来る事は予想出来た。しかし、まさかあんな組み合わせで……白と紫の組み合わせでくるとは予想外だ。正直最初は面食らったけど、以外と悪くない――いや、悪くないどころか、ブッちぎりで似合っている。何より響華さまの、世界屈指のお嬢様(セレブ)で、容姿端麗、頭脳明晰なクール系生徒会長、でもホントはちょっぴりドジっ娘、というキャラにジャストフィットしている。戦闘力でゆうなら、わたしの白と緑を金髪逆毛の戦闘民族だとすると、響華さまの白と紫は、そこのツートップが融合(フュージョン)したくらいの戦闘力、まさにスーパーベジ◯ットといった感じだ。しかも、白と緑は確かにお兄ちゃん好みの色なのかもしれないけど、よく考えるとこの組み合わせの縞パンキャラはボカロのミクちゃんを初め、ライバルが多すぎる。それに対して白と紫の縞パンキャラは、ざっと考えた限りでは心当たりがない――しかし、昨日まで縞パンの存在自体を知らなかった響華さまが、こんな高等テクニックを使えるモノなのだろうか? これは他に強力な頭脳(ブレーン)がいると考えるべきなのかもしれない。なにはともあれ、アレの破壊力は驚異的だ。あんなモノをお兄ちゃんに見せるわけにはいかない。確かに今は響華さまと休戦同盟中ではあるけど、アレの破壊力は核ミサイル並み。故に南極条約に違反してると言っていいだろう。という訳で、このスカートが捲れるのは断固阻止しなくては――」


「ちょっと真琴さん。さっきから何を一人でブツブツ言ってますの?」

「安心して下さい響華さま。わたしの目が黒いウチは、神風なんて吹かせませんから」

「はい?」


 真琴ちゃんの物言いに首を傾げる響華さん。何やら話しが噛み合っていないようだけど――


 てゆうか神風って……

 響華さんに神風は吹かないでしょう。彼女はタイプ的に鉄壁キャラだ。


 ちなみに鉄壁キャラとは、パンチラキャラ、もしくはパンチラ要員キャラの対義語である。


 鉄壁キャラは、例えどんな強風が吹こうとも、どんなにアグレッシブに動こうとも、世界に働く何か見えない力によって、一定の高さ以上にスカートが捲れないのだ。

 仮に捲れ上がったとしても、その瞬間に障害物が横切ったりする。


「神風と言えば、ウチのメイドが昨日、神風がどうとか言ってましたわね」


 メイド? そう言えば、響華さんはメイドと住んでるとか言ってたっけ。

 会った事はないけど、確か名前は返仕つばめさんとかって……


 今までメイドと言えば、アキバ辺りのナンチャッテメイドしか見たことなかったし、結構憧れてもいたけど、あの学院に通うようになってからは、特に珍しくもなく憧れもなくなっていた。


 慣れと言うのは怖いモノだ。


 まっ、最初に会ったメイドさんのキャラが濃すぎたせいもあるけど。


「神風……メイド……響華さま。もしかしてあの白と紫のブツを選んだのは、その人ですか?」

「白と紫? って……え、ええ……まあ、そうですわね……」


 真琴ちゃんの質問へ、戸惑いながら口ごもるように答える響華さん。


 白と紫?

 何の事だろう。花かなにかの話しか?


「なるほど……頭脳(ブレーン)はそのメイドさんか……」


 何やら一人で納得している真琴ちゃんに、オレと響華さんは揃って首を傾げる。


「そうそう。メイドと言えば、お二人に言ってみたい事があるのですけど、いいかしら?」

「なに?」

「なんですか?」


 ガールズトークはスルーしていたけど、話しを振られてムシは出来ない。オレは座ったまま、後ろのベンチへ振り向いた。


「こほん……では行きます――」


 二人に視線を向けられて、ちょっと緊張しているような響華さん。

 一つ咳払いをすると――


「お二人は、ホントに何でも知っているのね?」

「「何でもは知らないわよ、知ってることだけ。By羽○つばさ」」

「ホントに言ったっ!? し、しかも伏せ字の場所も一緒……つ、つばめ……恐ろし子……」


 何やら一人で驚いている響華さんに、今度は真琴ちゃんと揃って首を傾げる。


 と、ここで、オレたちの乗るバスが向かって来るのが見えてきた。


「あっ! バスが見えてきましたわ。アレに乗るのですわよね?」


 ナゼかちょっと浮かれいる響華さんが指差す、ラファール行きのバス。ただでさえ利用客が少ないバスなのに、いつもより早い時間なので、乗客はオレたちだけのようだ。


「わたしバスに乗るの初めてですの。ちょっと楽しみですわ」

「響華さん、バス初めてなの?」

「バスが――というより、リムジン以外の自動車に乗るのが初めてです。でも大丈夫、乗り方はちゃんとインターネットで調べてきましたから。確か整理券というのを取るのですわよね?」


 そう言って、浮かれ気味にバスへ乗り込む響華さん。そして、そんな後ろ姿を見て、オレに耳打ちをする真琴ちゃん……


「お兄ちゃん……何か凄く嫌な予感がするんだけど……」


 うん。オレも全く同じ予感がするよ……


「何してますの~? 早く乗らないと置いていかれますわよ~」


 一人で張り切る響華さんに続き、オレは嫌な予感と不安を抱え、タメ息を吐きながらバスへと乗り込んだ。

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