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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第一部 オレの生徒は生徒会長!?
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第十二局 重なるイメージ 02

挿絵(By みてみん)


 見惚れていた――いや、魅入られていた。


 なにに……?


 先生が来てくれた。嬉しかった――本当に嬉しかった……


 私の初めての友達。初めての親友……


 でも、親友なら逃げてと言うべきだったかもしれない。こんな大勢の中に、たった三人で来てくれた先生――


 しかし、そんな事を忘れてしまうくらいに、私は魅入られていた。


 なにに……?


 先生に……?


 そう、先生の姿に――その、華麗な動きに魅入られていた。


 小柄な先生が、流れるような動きで大男を倒した時、身体中に電気が走ったようだった。


 今だってそう……


 階段の下――大人数の男達を相手に立ち回る姿。それはまるで、洗練された能や舞いを見ているようだ。


 格闘技を見て、それを美しいと感じ、魅入られるなどというのは初めて――いや、二度目だ……


 そう、それはまだ私が中学生の頃、お父様に連れられて行った大学空手の全国大会。お父様の出身大学の選手が、優勝候補に挙げられたのだ。


 そこで、OBであり西園寺家の当主であるお父様は、ぜひ見に来て欲しいと、お誘いを受けたのだった。

 そして、私も西園寺の娘として、お父様に同行した。


 元々、学業においては優秀で、財界や政界に多くの人間を輩出している名門大学。

 しかし、武道において全国に名前が出るのは異例な事。お父様は浮かれ気味に家を出た。


 その選手を取り囲み、盛り上がっている大人達……

 元々あまり興味のなかった私は、一通り挨拶をすませると、少し離れた所で行われいる試合を、見るともなしに眺めていた。


 そこで目を惹いた、一人の選手――


 まるで今の南先生の様に、舞うような動きで、大柄な選手と戦う小柄な選手。


 私は、その動きに目を奪われた……


 その後も、その選手は勝ち続け、私はその(たび)に目を奪われていった。


 そして決勝戦――相手はお父様の大学の選手。

 私は、ドキドキしながら試合が始まるのを待った……


 しかし、開始時間が過ぎても、その選手が現れる事はなかった――


 結果はお父様の大学の不戦勝。

 全国大会優勝という大学初の快挙に、大人達は大いに盛り上がっていた。


 お父様達は『恐れをなして逃げ出した』などと笑いながら言っている……

 でも、私は納得が行かなかった。試合をしていれば、絶対あの人が勝っていたはずだ。


 西園寺の力を使えば、あの人の素性も棄権した理由も調べる事は簡単だったと思う。


 しかし、私はそれをしなかった。西園寺の娘が、見ず知らずの男性に興味を持っているなどという事を、お父様に知られたくはなったから……


 その後、内緒で取り寄せた、あの時の試合ビデオ。それから私は、何度あのビデオを見返しただろう……?


 見返すたびに目を奪われ、魅入られていくのが分かる。


 当時、私に付いていたメイドは、そんな私を見て、こんな事を言っていた――


『今のお嬢さま、まるで初恋の方を見ているようですね』


 初恋……?


 子供だった私には、その言葉の意味がよく分からなかった――

 でも、今ならなんとなく分かる。確かにあれは私の初恋だったのだろう。


 素性の分からない、私の初恋の相手……

 知っているのは、トーナメント表に載っていた名前だけ。


 名前は確か――


『南友也』


 南……!?


 その時、目の前で戦う南先生の動きと、ビデオで何度も見たあの人の動きが重なった。


 もしや、南友也さんとは南先生の弟さん?


 今朝、南先生の家で会って、ほんの少しだけ言葉を交わした、南先生と瓜二つの弟さん……


 私は、モニター越しに何度も見た南友也さんのイメージを重ねるように、南先生の動きを追った。


 間違いない! 南先生の動きは、私のイメージ完全に一致した。やはり南友也さんとは、南先生の弟なのだろう。


 …………


 いや、でも何かが違う。南先生の動きには違和感がある。


 私が――いや、試合のビデオを何度も見返した私だから感じる違和感……

 それは、二人の動きが一致し過ぎるのだ。攻撃に移る時の小さなクセや視線の送り方まで、全てが一致している。


 いくら双子だからと言って、そんな事が有り得るのだろうか?


 ここに来て、一つの仮説が頭に浮かんだ――

 常識的に考えて有り得ない仮説。そんな事を考えてしまう自分に、呆れてしまうほどの……


 しかし、思い当たる節もある。

 私が今朝、南先生の家に伺った時、最初に出て来たのが弟さん。その弟さんは、南先生を起こして来ると南先生の部屋に入った。


 でも、部屋から出て来たのは、南先生一人だけ……


 南先生、もしかしてあなたは……? もしそうなら私は――

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