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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第一部 オレの生徒は生徒会長!?
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第十二局 重なるイメージ 01

 正にピンチに現れるヒーローさながら(←自惚れ)の登場に、全員の視線が集中する。


 ちなみに、どこからともなく『変身ヒーロー』なんて聞こえた気がするが、とりあえずおいとこう……(涙)


「お、お前は……!?」


 響華さんの前。注射器片手にしゃがんでいたトサカ男が、目を見開いて立ち上がった――

 って、注射器だと? まさか覚醒(シャブ)か?


「トサカくん――随分お茶目な事をしてくれるじゃないの?」


 注射器を近くにあった小さなテーブルに置くと、ニヤけた笑いで歩み寄り、部屋の中央で立ち止まるトサカ野郎。


「これはこれは先生。わざわざ出向いて貰らえるなんて、探す手間省けたわ――アンタにもキッチリお礼せんとなっ!」

「へぇ~、それは楽しみだ。どんなお礼をして貰えるのかしら?」


 少し遠い間合い――ロビーの中央と入り口に立つ、トサカ野郎とオレ達。睨み合いながらも軽口を叩き合う。


「せやのう……せっかく先生と生徒が揃っとるんや。ひん剥いて、師弟レズビアンショーでもしてもおうかのう」

「あっ、オレも見たいかも」

「オ、オレも……」


 おいコラ!


 トサカの提案に、手を上げて一歩に踏み出す二人――

 しかし、すぐにオレの出すマジ殺気を感じ取り、慌てて訂正する。


「いや、じゃなくて……ってコラ、このトサカ頭っ! このお方の肌は、オレらはともかく、テメエら三下が気安く拝めるほど安かねぇーんだよっ!!」

「そうだそうだっ!!」


 安心しろ、お前らにも拝ません!


「テメエら、たった三人で随分でけぇ口叩くじゃねぇか? こっちは三十人から集まっとるんやぞ、コラッ!」

「三十人いるからどうしたって? そんな烏合の衆、私が二十人、この二人が五人ずつで終わりじゃない」

「いや、ちょっと友子さん、そりゃあないッスよ。オレ達にも十人――いや、せめて八人くらい下さいよ」

「そうそう、オレらが八人ずつで、友子さんが…………十六人?」


 いやいや三元、それじゃ足して三十人にならんだろ?


「なめてんじゃねぇーぞコラーッ! オレらが誰か分かって言っとんのかっ!?」

 オレ達のやり取りに、ブチ切れ寸前のトサカ頭。

 そして、それに釣られる様に、周りの奴らも騒ぎだす。

「誰かって……? 群れなきゃ怖くて一人でトイレにも行けない、シャバ僧くん達の集まりだろう?」


 バッキッ!!


 オレのセリフが終わると同時に、室内に響く大きな打撃音。


 シンっと静まる室内――


 全員の視線が、打撃音の方へと集中した。

 そして、そこにあったのは、真っ二つに割れたテーブルとスキンヘッドの大男――


 コイツは確か三代目の――今の大将か……


「ネェーチャン……今のセリフは、想怒夢の頭として聞き捨てならねぇな」


 そう言いながら、指をポキポキ鳴らし、目の前まで歩み寄って来るスキンヘッド。


 こうして見ると、確かにデカいな……

 身長だけなら、三元よりデカいんじゃないか?


「お前ら三人、オレ一人で相手してやんよ」

「よう言うた! 想怒夢三代目の貫目見せたれやっ!!」


 凄みのある口調で中々骨のある事を言って、特攻服を脱ぎ捨てるスキンヘッド。そして、それを見てゲキを飛ばすだけのトサカ頭――


 てか、お前はさっきから口だけだな、おい。


 特攻服を脱いだスキンヘッドの身体は傷だらけ――結構、修羅場をくぐっては来ているようだ。


 しかし……


 オレはスキンヘッドの顔を見上げて、ニヤリッと笑った。


「何がおかしいんだ、このアマ?」

「顔」

「ああぁーっ!?」

「いや、顔がタコみたいだから」


 オレの言葉に、目の前のスキンヘッドは顔を真っ赤にして、更にタコみたいになっていた。


 ただ、照れて真っ赤になった訳ではないのだろう。その証拠に、握った拳がプルプル震えている。


「な、ななな、な……」

「ホント、顔も頭もお肌がスベスベで羨ましいくらい――スキンケアには何を使っているのかしら?」

「なめるな、このアマーーーーッ!!」


 オレの挑発に、拳のプルプルが一瞬止まったかと思うと、それが物凄い勢いでオレの顔面目掛けて飛んで来た――


 たくっ……女にも全然容赦ないな、こいつらは……まあ、ホントは女じゃ無いんだけど。


 打ち下ろし気味の大振り右ストレート。オレは繰り出さた腕に左掌を合わせ、パンチの軌道を変えつつ、左に動いて拳をかわす。


 そして、パンチの威力を殺し切れず、前のめりに上体の下がった男の顔面目掛け、カウンターで回し蹴りを叩き込む。


 うむ、改心の一撃だ!


 鼻血のアーチを描きながら、すっ飛ばされて仰向けに倒れるタコ坊主。


 …………


 白目を剥き、全く起き上がる気配はない。完全に一撃KOだ。


 まっ、身長のデカい奴てぇのは、顔面を打たれなれてないって言うのが相場だからな。

 スベスベの綺麗な肌していたし♪


 パチパチパチパチッ――


 オレの会心の一撃に、国無と三元から拍手が上がる。


「相変わらず、鋭い蹴りッスね」


 ふっ、当然……

 空手全体のレベルで言ったら姉さんの方が上だけど、ディフェンスと足技だけなら負けていないつもりだ。


 とはいえ、しばらく実戦からは離れていたけど、結構身体は覚えているものだな。


「ま、まさか……」

「さ、三代目が一撃でやられるなんて……」


 現役の大将が一発でやられた事で、集まっていたバカ共に動揺が走る――

 想怒夢のメンバーは、一様に大の字で倒れているスキンヘッドを見て呆然としていた。


「トサカくん――まずは一人」

「くっ……」


 オレの呼び掛けに、我に帰ったトサカくん。こちらを睨みながら、冷や汗の浮かぶ顔を歪ませる。


「な、何している、お前らーっ! 相手はたった三人だ! まとめて掛かれっ!!」

「オ……オッス」

「わおっ、典型的なやられ役のセリフ♪」


 それでもトサカくんのゲキに、少しずつ正気を取り戻す他のメンバー達。


「よ~しっ、これはこっちも負けてられないよ! クニちゃん、ダイちゃん! や~っておしまいっ!!」

「アラホラサッ……って、友子さん?」

「な、何も、やられ役のセリフで張り合わんでも……」

「いやでも、この状況なら、お約束でしょ? お約束は、一応やっておかないと落ち着かないし」


 取りあえず、三人で軽口を言い合いながらも、それぞれ近くにいた奴をブン殴った。


 そして、横目で響華さんの状況を確認する。


 近くにいるのは、ソファーの後ろにいる二人だけ……

 しかも、まだ呆気に取られて棒立ちだ。てゆうか、響華さんも呆気に取られているみたいだけど……


「よし――ダイちゃん、お嬢さまをお願い!」


 三元の前にいた奴を蹴り飛ばして、進路を作りながら指示を出す。


「ガッテンだっ! ウォォォォォォッ!!」


 雄叫びを上げながら走って行く三元。


「唸れっ! ウエスタン・ラリアットォーーーーッ!!」


 ソファーに座る響華さんの頭越し、後ろに立つ左側の男の喉元に豪快なラリアットが炸裂! 男は窓を突き破って、外まで吹っ飛ばされた。


 更に、隣りで怯えた表情を見せる男のワキの下へ自分の首を差し入れ、そのまま肩の担ぎ上げる三元。


「歓迎っ! 2020東京五輪っ! そして、くらえっ! オリンピック予選スラムゥ~ッ!!」


 そのまま後ろへ倒れこみながら、男の体を肩の上で半回転させつつ、硬い床へ勢い良く背中を叩きつけた。


 おいおい、三元……死なない程度には手加減してやれよ。

 しっかし、三元の奴。相変わらず凄いパワーだな――


 まっ、それもそのはず。

 三元の家は両親がプロレスラーで、本人も中学高校とアマレスの選手だった。大学では、プロに向けて打撃を覚えるために空手部に入部したという事らしい。


 まあ、それはさて置き、まずは響華さんの安全確保だ。


「響華さん、階段の方へ走って!」

「あっ……は、はい」


 呆気に取られいた響華さんだが、オレの声に反応し立ち上がる。そして、おぼつかない足取りだけど、それでも小走りに階段へと向かった。


「ダイちゃんは、そのままお嬢さまをお願い!」

「押忍っ!」


 なんとか階段の中腹くらいまで上がってくれた響華さん。そして、三元はその階段の塞ぐ様に陣取った。


 いい位置取りだ。階段を背負っていれば背後から襲われる事はない。そして、三元がいる限り、響華さんは安全だろう。


「よしっ、クニちゃん! こっちも張り切って――」


 三元の方は心配なさそうなので、振り返って国無の方にも……と思って声を掛けたが、必要なかったようだ。


 国無の方は、すでに四人をぶちのめして、只今五人目に突入。


 左右のコンビネーション連打が、面白いように決まっている。若干パワー不足の感はあるけど、国無のスピードと打撃の正確さは、全国で見てもトップレベルだ。


「セイッ!」


 右の正拳突きが鳩尾に決まった。ちょっと色物気味な三元と違い、子供の頃からずっと空手一本の国無。

 基本に忠実で、典型的な空手家の動きーー


「おっしゃーっ! シャイニング、ウィザーーーードッ!!」


 鳩尾を押さえながら、崩れ落ちるように片膝を着いた相手の顔面に、飛び膝蹴りが決まる……って、飛び膝だとっ!?


「お前もかーっ!?」

「いや~、前にダイちゃんから教わったんッスけど、結構使い勝手が良くて」


 ラリアットやら投げ技やら膝を着いている相手に飛び膝蹴りやらと……もし、試合でやったら即退場モノだぞ。

 大丈夫なのか、開花大(ウチ)の空手部は……


「おらっ! よそ見なんてしてんじゃねぇよ、このアマッ!」


 いきなり背後から、鉄パイプを振りかぶった男が現れた。

 とっさに後ろへ下がり、間合いを開けるオレ――


 ヤバいヤバい、まだ油断出来る状況じゃないよな。


 いやそれ以前に、さっきあんなに大口叩いといて、このままでは撃墜数がビリになってしまう!


「逃げてんじゃねーっ!」


 もう一度、鉄パイプを振りかぶった男。

 それが振り下ろされる瞬間、オレはその腕を右足で蹴り上げる。そして、その足を下ろす反動をプラスして、男のコメカミに後ろ回し蹴りを叩き込んだ。


 後方へ吹き飛ぶ男。その男の後頭部が、更に後ろにいた奴の顔面に直撃する。


「ヨッシャ! 二枚抜きーっ!」


 倒れた二人は、しっかりダウン。これで撃墜数が4っと。


「さ~ぁ、ドンドン掛かって来なさい。今から撃墜数を逆転しなくちゃいけないんだから!」


 オレは体勢を整えて、後ろにいる集団に手招きをした。

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