表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第一部 オレの生徒は生徒会長!?
18/137

第九局 大事件発生! 01

 うぷっ……

 朝から伸び切ったカップ麺は、胃がもたれるぜ……


 っと、ダレてばかりもいられない。本日は新学期二日目。当然、通常授業が行われる。


 しかも、本日の一限目は我が二年F組での授業だ。


 ちなみに教壇に立つのは、今日が初めてと言うわけではない。

 大学時代、単位を取る為に一度、教育実習に行った事がある。もっとも、その時は男子高だったので、今回とは勝手が違うだろうけど。


 相変わらず、中からは物音一つ聞こえない教室のドアの前で、オレは大きく深呼吸をする。


 そして、ついさっき緑先生と朝のHRに訪れたばかりの教室に、今度は一人で乗り込んで行くオレ。


「皆さん、おはようございます」


 元気に挨拶をしながら教室の中に入って行くと、やはり生徒達は全員キッチリ席に着いていた。


 机に座って話してるヤツ、トランプやゲームをしているヤツ、早弁しているヤツ、寝ているヤツ……なんていうのは一人もいない。

 オレが言うのも何だが、オレ達が通った高校の教師が、もしこれを見たら卒倒するんじゃないか……?


 オレがそんな事を考えながら教壇に立つと同時に、委員長が号令をかける。


 静かなのはいいが、これはこれでやりにくい……

とても冗談なんか飛ばせる雰囲気じゃないし、下ネタなどはもってのほかだ。


 と、愚痴ばかり言っていても仕方ない。ピシッと気合い入れて授業をやりますか!


「はい、では教科書の6ページを開いて下さい」


 そう言って、チョークを持ち、黒板に向かった瞬間――


 ピンポンパンポーン♪


『南先生、南先生、至急、学院長室までいらして下さい。繰り返します。南先生、至急、いえ大至急! 学院長室までいらして下さい!』


 静まる教室。そして、重い沈黙……

 てゆうか、背中に刺さる三十人の視線が痛い……


 オレの初授業、黒板に最初に書いた文字は――


『自習』


「すみません白鳥さん、あとお願いします」


 窓際最前列に座る委員長に声を掛けるオレ。


「かしこまりました、あとはこの白鳥家の次期当主、白鳥葵にお任せ下さいまし」

「葵様は、仕切りたがりの目立ちたがりなので、自習の仕切りはお手の物だ、でございます」

「誰が、仕切りたがりの目立ちたがりですかっ!?」

「ついでに鍋武将でも、ございます」

「それを言うなら、鍋奉行ですわっ!!」


 相変わらずだな、この二人……


「撥麗さん。ご主人さまをからかうのは程々にね」

「かしこまりました、でございます」

「じゃあ、よろしくお願いします」


 そう言い残し教室を出て、一路学院長室に向かった。



  ※※  ※※  ※※



 建物全てが豪華な造りのこの学院で、輪をかけて豪華な造りの学院長室。


 その、豪華な造りの木製両開きのドアをノックして中に入るオレ。


「失礼しまーす」


 入って正面、大きなアンティークデスク。昨日はそこに居たヤドカリ頭が、今日は見当たらない――


「こっちです」


 声のする方の目を向けると、大きな部屋の右手にあ、応接セットに三人の人間が座っていた。


 三人の内、一人は見覚えのあるヤドカリ頭。その正面に、スーツ姿の小太りオバさん。

 そしてその隣はに、ピシッと正装した中年男性……


 ただ、その中年のおっさんは、頭に包帯を巻き、右腕を首から吊り下げていた。

 それに、顔にも痣がいくつか見えるし――結構な怪我じゃないのか、これは……


 しかしこの男、どこかで見覚えの有るような、ないような……


「南先生、こちらへ」

「し、失礼します……」


 学長の隣を勧められ、普段座り慣れないクッションの効いた革張りのソファーに腰を下ろす。


「初めまして、南先生。わたくし、こういう者です」

「あっ、これはご丁寧にどうも……」


 小太りオバハンから差し出された名刺に目を落とす。


 え~と、なになに。三谷法律事務所、副所長――弁護士さんか。


 で、名前が…………ん?


「え~と、ピンフっ子さんですか?」

平和子(たいらかずこ)です!」


 あぁ、なるほど。『たいら』さんか……


「失礼しました……それで、その弁護士先生が、わたしなんかに何のご用意でしょうか?」

「コホン。わたくし、西園寺家の顧問弁護士を務めております」


 西園寺家? 響華さんっちの……?


 って! 思いだした! 正面に座ってるこのおっさん、響華さんの運転手じゃないかっ!?

 それが、こんな大怪我してるって……


「響華さんが、どうかしたんですかっ!?」

「その件で、いくつかお聞きしたいのですが、よろしいですか?」

「えっ? は、はい……」


 はやる気持ちはあるが、話しを聞かないと始まらない。

 とにかく今は、このオバハンに従うしかないのか――


「では……運転手の話ですと、今朝早くに、響華さんが先生の自宅を訪れたのは間違い有りませんね?」

「は、はい」


 オレの返事を聞き、学長が隣で大きなため息をついた。


「ではその後、六時四十五分に運転手が迎えに行くまでは、ずっとあなたの部屋に居たわけですね?」

「正確な時間はわかりませんが、だいたいそのくらいの時間だったと思います」

「ふむ……では、部屋へ運転手が迎えに来てから、お二人が車に戻るまでの時間は分かりますか?」

「ん……迎えに来て直ぐに帰りましたから、二~三分程度じゃないですか」


 いったい何なんだ? そんな事が関係あるのか?


「ふむふむ……運転手の証言と一致しますね。学院長、やはり間違いないようです」

「そのようですね。細かい話しは後で。まず、こちらはマスコミ対策を……」

「分かりました、こちらはSSの方に連絡致します」


 そんなやり取りのあと、学長は内線電話を、弁護士先生は携帯(スマホ)を取り出した。


「ち、ちょと、いったい何があったんですか?」

「あなたは少し黙っていなさいっ!」


 学長は、オレの呼びかけを一喝して、内線の操作を続けた。


 何なんだいったい……?

 一方的に呼び出して、一方的に話しを聞くだけ聞いて――


 とりあえず、先に電話が繋がったのは学長の方。


「教頭先生、例の件は間違いないよです。マニュアルBを参照に、マスコミ対策をお願いします……」


 だから何なんだよ、マニュアルBってのはっ!?


 その後も教頭と何やらやり取りをしている学長。その直後、弁護士先生の方も携帯が繋がったようだ。


「もしもし、平です……はい、はい。二人の証言は一致しました。響華さんの誘拐は間違いないよです……」

「――――!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一ポチお願いしますm(_ _)m
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ