表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第三部 オレの生徒の後日談!?
134/137

第七局 ツバメ返し

『はいっ、もしもしッス』

「おう、オレだけど――」


 ガラケーから聴こえ来る聞き慣れた声に、オレオレ詐欺みたいな返事を返すオレ。

 まあ、非通知でかけてる訳でもなし、オレオレ詐欺と勘違いされる事はないだろう。


『あっ、友也先輩。留守電、聞いてくれたッスか?』


 ああ、その留守電のせいで、殺されかけたけどな――


 というセリフを、グッと飲み込むオレ。

 そう、電話の相手は、今朝オレの携帯に留守電を残した後輩、国無双士である。


「まあ、その事なんだけど、国無? お前達の所に合コンの話しを持ってきた人の名前――ってか、ハンドルネーム(ハンネ)って、いま分かるか?」

『ハンネッスか? 確か……ツバメ返しさんって、名前っしたね』


 ツバメ返しさんねぇ……

 随分と分かりやすいハンドルネームッスだな、おい。


『ツバメ返しって事は、やっぱ柔道家かのう?』

『いや、剣道家だろ? 剣術とか女子に流行ってるし……確か、刀剣女子とか言って』


 国無、正解。

 まあ、そのツバメ返しさんとやら本人は、参加しないだろうけど。


 電話口から聞こえる国無達の少々浮かれ気味な会話に、オレは苦笑いを浮かべた。


 ツバメ返しさん→返仕(そりつかえ)つばめさん……


 なんて、安直なネーミングセンス。

 てゆうか、そのハンネを先に聞いていたら、オレは合コンに参加するなんて言わなかっただろう。


「ああ……悪いんだけど、国無。今日の合コン、所用で参加出来なくなったわ」

『マジッスかっ!?』

「どうも、実は姉さんの怪我が悪化したらしいんだ」


 姉さんをダシに、コイツらを騙すのは気が引けるけど……咄嗟には、他に言い訳が思いつかないので仕方ない。

 それに、姉さんのせいで毎日苦労しているのだ。少しくらい役に立って貰ってらわんとな。


「なんでも、無断で外にラーメン食いに行って、窓からこっそり戻ろうとした時、足を滑らせて四階から転落したらしい」

『なっ!?』

「そんで、病院から呼び出し受けてな。オレは、コレから姉さんのトコに行かなきゃならんのだ」


 この二人は、姉さんに心酔してるトコがあるからな。姉さんをダシすれば、文句は出ないだろ。


『じゃ、じゃあっ、オレ達も病院にっ!』

『オウッ!!』


 オレのついた嘘八百に、あっさりと騙される二人……

 こうもあっさりと信じられると、少々罪悪感が湧いてくるな。


「いや、大丈夫だ。怪我っても、足首を軽く捻っただけらしいし。どっちかって言えば、無断外出のお小言を貰いに行く感じだから」

『よ、四階から落ちたのに、それだけで済むとは……』

『う、う~む……さすが、友子さんじゃあ……』


 またまた、あっさりと信じ込む二人。


 コレは、この二人がチョロ過ぎるのか、はたまた普段の姉さんの奇行が異常過ぎるのか……?

 まあ、両方か。


 オレはそんな事を思い、苦笑いを浮かべながら、更に言葉を綴っていく。


「それに、自分のせいでお前らの合コンが潰れたなんて知ったら、姉さんだって悲しむだろ? だから、姉さん(コッチ)の事はオレに任せて、お前らは加齢(かれい)な――じゃなくて、可憐(かれん)な剣道乙女との合コンを楽しんで来いよ」

『と、友也先輩……』


 若干鼻声の、感極まった様な声で言葉を絞り出す国無。


 しかも、その後ろでは三元が、

『うおぉぉぉ~っ! ワシら、いい先輩を持ったぁ~っ!!』

 と、雄叫びをあげていた。


 ヤベ……罪悪感がハンパねぇ……


「ま、まあ……アレだ。格闘技が好きな()と合コンする機会なんて滅多にないからな。このチャンスをムダにしないようにな」

『ウッスッ! ゼッテー大物をゲットしてみせるッスっ!!』

『逃した魚は大きかったって、後悔せんでくださいよっ!!』

「お、おうっ……まあ、頑張れ……」


 うん、確かに相手は大物だ|(サイズ的に)。

 しかも、シャチや人食いサメレベルの凶暴な肉食系。逆に、食われん様、気をつけろよ……


 そんな事を思いながら、オレは遠い目を天井に向け、そっと通話終了のボタンを押したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一ポチお願いしますm(_ _)m
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ