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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第三部 オレの生徒の後日談!?
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第六局 オサレなデパートにて 一本場 乙女軍団再び

「ハァー、ハァー、ハァー……」


 さ、さすがに病み上がりで、この距離を全力疾走するのはキツイな……


 ようやく、目的地のデパートに辿り着いたオレ。呼吸を整えながら、入り口の自動ドアの前に立つと、綺麗に拭き上げられた透明なドアが開き、室内から漏る冷気が火照った身体を撫でていく。


 ああ~、気持ちいい。

 っとと……こんなトコで立ち止まっては、通行の邪魔だな。


 オレは後ろへ顔を向け、背後を確認しかながらオサレな空間へと足を踏み入れていく。


 が……


「きゃっ!?」

「えっ……」


 背後に気を取られ、前方が不注意だったオレ。入り口を入ったところで、右手からやって来た小柄な少女とぶつかってしまった。


「す、すみませんっ! 大丈夫ですかっ!?」


 小さな悲鳴を上げた少女の方へと、慌てて目を向けるオレ。


 そこにいたのは、女性八人の団体客(グループ)

 そして、オレとぶつかった小柄な少女は、連れの女性が咄嗟に支えてくれたおかげで、転ばずにすんだようだけど……えっ?


 大柄な女性に支えられる、黒縁メガネに和服の少女。

 その、見覚えのある姿――と、少しだけ(はだ)けた裾から覗く健康的な御御足(おみあし)に、一瞬言葉を失っていたオレ。


 そんなオレを、別の女性が胸倉(むなぐら)を掴み、もの凄い勢いで自分の方へと引き寄せた。


「おうっ、コラッ兄ちゃんっ! テメッ、どこ見て歩っとんじゃ!!」


 オレよりも縦横共に一回り大きな女性が、モロヤン顔でオレを怒鳴り付けると同時に、他の女性達もその周りを取り囲んでいく。


 が、しかし……


 上から睨み付けていた、やはり見覚えのある女性は、オレの顔を確認するや(いな)や目をパチクリとさせ固まってしまった。


「え……え~と……、南……先生……?」

「ど、どうも……」


 それでも、何とか声を絞り出す様に問う女性と、その問いへ引きつった愛想笑いを浮かべるオレ。


 そして、オレを取り囲んでいた女性陣は、そのまま三歩程うしろへ下がると、

「失礼しましたーーっ!!」

「失礼しましたーーーーっ!!」×6

 と、勢いよく頭を下げた。


 って、ちょっ!?

 こ、こんな人の多い、オサレなデパートの中で、その体育会系のノリは勘弁して下さい。


 てゆうか、ナニこのデジャヴ感……


 そう、オレを取り囲んでいた屈強な乙女軍団は、杭丹有子(くいたんありこ)さん、端野美佳(たんのみか)さん率いる北原流剣術、第七女子道場の皆さま方。


 そして、最初にオレとぶつかった着物少女は――


「も、申し訳ありません、先生。お怪我はありませんか?」

「いやいや! オレよりも、北原さんは大丈夫だった?」


 その第七女子道場の師範にして、和装のよく似合う癒し系大和撫子、北原忍さんだ。


「はい、わたくしの方は大丈夫です」

「そっか、良かった」


 上品に微笑む北原さんにつられるよう、安堵の息と共に口元を緩めるオレ。

 そういえば、北原さんは道場の方の用事とか言っていたけど、用事ってのは道場の人達と買い物か?


 ただまぁ……オレも人の事は言えんけど、このオサレな空間と屈強なお姉様方とでは、少々不釣り合いな気が……


 そんな事を思いながら、取り囲む女性陣を見回す様に目を向けた。


 い、いや……釣り合いは取れているのか? 物凄い違和感はあるけど……


「え、え~と……みなさん今日は、随分とめかし込んでるんですね……?」


 その言葉に、少しだけ頬を赤らめ視線を逸らすお姉様たち。


 そう、本日の服装(だけ)は、このオシャレ空間にマッチした爽やかにして清楚、そして大人っぽい(よそお)いであり、コレから小学校の授業参観に向かう奥様軍団(たち)って感じの服装ったのだ。


 まあ、あくまでも『服装だけは』であり、その服装が当人達に似合っているかの明言(めいげん)は、避けさせて頂くけど。


「ど、どうでしょうか、南先生……? 皆さんのお洋服、わたくしの見立てなのですけど……」

「そ、そうなんだ……」

「はい……ただ、わたくし、お洋服にはあまり詳しくないものでして……」


 自信なさげに、困り顔の北原さん。


 まあ、確かに北原さんは、洋服というより和服――いや、もうザ・和服っ! って感じだしな。


 そんな事を思いながら、もう一度、有子さん達の方へと目を向けてみるオレ。


 照れている……と言うよりは、居心地が悪い、と言った雰囲気の有子さん達。

 普段のジャージ姿――と言っても、一度しか見てないけど。そのジャージ姿とは、真逆と言っても過言ではないオシャレな(よそお)い。


「い、いいセンスしてると思うよ……」


 ま、まあ……似合う似合わないは置いといて、服のセンスはいいと思う。

 もっとも、オレ自身それほどオシャレに詳しくもなければ、センスに自信もないけど。


「ホントですか!?」

「あ、ああ、うん……」


 ただ、そんなオレの言葉に、パッと笑顔を咲かせる北原さん。


「良かったですねっ、有子さんっ! よく似合ってると、南先生のお墨付きも頂けました」


 えっ? ち、ちょっ……? に、似合ってるとは、一言も言ってないけど……

 とゆうか、似合うかどうかで言えば、いつものジャージ姿の方が似合ってると思いうぞ。


 とはいえ、頬を赤らめ、バツの悪そうに頬をポリポリとかくお姉様達へ向かって、そんな事を言い出す勇気はないけど。


「ま、まあ、別にアタイら、いつものジャージでも良かったんッスけど……」

「その方が、落ち着くッスし……」


 うんうん。その気持ちは、よく分かる。

 服なんてというのは、普段、着慣れた服装が一番だ。


 女装とか、あまつさえメイド服なんていうのは、落ち着かない事この上ない。


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