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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第二十八局 メイド達の狂宴 一本場『五色の――』

「うるうるぅ~~。いい話です、でございます。そして若さが眩しい、でございます……」

「あの、お嬢様に……あの、ボッチのお嬢様に、ツッコミを入れる事の出来るご友人が出来るとは……わたくし、嬉しくて涙が止まりません」


 八方から飛来する空き瓶や工具を、左手に持った木刀とバットで弾きながら、ハンカチで溢れる涙を拭うメイドさんたち。


 ちなみにオレの背後からは、


 誰がボッチですかっ!? ところで、ボッチとは何ですの? 高貴な淑女は、以下略っ!


 などと言う、予定調和な声も聞こえてくる。


「さて……向こうは忍さまがいれば、もう安心だ、でございます」

「はい、ではコチラも大掃除の続き――いえ、集団殺戮(ジェノサイド)に取り掛かりましょう」


 黒い笑みを浮かべながら、物凄い殺気を放つ二人のメイドさん。

 工場内の室温が、体感温度で10℃は下がったのではないかと思わせるほどの暗黒オーラに、男たちは息を飲み、物を投げ付ける手が止まった。


「さあ……死にたい者から掛かって来やがれ、でございます」

「順番になどと申しません。まとめて掛かって来て下さい」


 残る男たちは、まだ三十人はいるであろう。

 しかし、そんな数のアドバンテージなど感じられない程に、竦み上がる男たち……


 そんな男たちに向かい、二人のメイドが一歩踏み出した途端――


「お、覚えてろよっ!」

「今日の所は、これで勘弁してやるっ!」

「あとでゼッテー(おか)してやるからなぁーっ!!」


 口々に、典型的な負け犬の遠吠えをカマしながら、工場の奥――高く積まれたコンテナの山へ向かい走り出すヘタレ共。


 まあ、工場なんかには、必ず裏口や非常口が付いているものだ。あのコンテナの後ろには、裏口でもあるのだろう。


「ふむ、中々に賢明な判断ですね――」


 そんな、逃げ出す男たちに慌てもせず、追いかける素振りも見せないつばめさん。


「しかし、逃げられますかね……?」


 つばめさんは、なにやら楽しげに口元をほころばせて目を伏せてから、コチラの方へと振り返った。


 ゆっくりとした足取りでオレの傍らまでやって来る二人のメイドさん。

 そして撥麗さんが、今にも倒れそうなオレを横から肩を貸すように支えてくれる。


「南先生、大丈夫か? でございます」

「えっ? ああ、大丈夫です」


 それに続いて、今度はつばめさんがオレの顔を覗き込むように、心配そうな顔を寄せて来た。


「本当ですか? ちゃんと子供は産めますか?」

「元々、子供は産めません!」


 真顔で尋ねるつばめさんに、真顔でキッパリと言い切るオレ。


 まったく……この人は、どこまで本気なんだか?


 そんな間近に迫る整った顔立ちのつばめさんの後ろでは、懸命にコンテナをよじ登る男たちの姿――


「ところで、つばめさん。アイツら逃しても良かったんですか?」

「構いませんよ。まあ……逃げ切れるものでしたらの話ですけど」


 清楚なバラの香りを漂わせながら、意味ありげに微笑む腐女子メイドさん。


 そうこうしている内にも、先頭の男がテッペンのコンテナへと手を掛けた。が……


「ぶぐっ! ぐああぁぁぁぁあああぁぁぁ~~、ごぐっ!?」


 登り切ったと思った瞬間、突如コンテナの頂上に現れた人影に蹴り飛ばされ、数メートル下の床まで転がり落ちた。


「遅くなりましたっ! 摘込千鳥(つみこみちどり)、以下四名。只今到着いたしましたっ!!」


 そう、突如現れたのは、色とりどりな五色のパンツ――じゃなくて、同じメイド服を纏った五人のメイドさん。


 まるで戦隊ヒーローの如く立ち並ぶメイドたち。年齢は多分、全員がオレと同じかブラスマイナス2つくらいだろう。

 ロングスカートのつばめさんと比べ、丈は膝丈と短めだけど、デザイン自体は全く同じメイド服だ。


 その、コンテナの頂上に突然現れた五色のパンツ――じゃなくてっ!

 五人のメイドたちに、コンテナを登っていた男たちも動きを止め、呆然と見上げている。


 ってか! アイツら、いい位置から見上げてやがってっ! なんと、羨まけしからんっ!!


「いいえ、千鳥。中々に良いタイミングでしたよ」

「はっ! ありがとうございますっ!」


 つばめさんの言葉に、中央にいた白地にイチゴのプリントさんが、ビシッと敬礼を返す――い、いや、イチゴじゃなくて、プチトマトか。


「むむっ! この距離からその二つが識別出来るとは……先日、真琴さまが仰っていた、『二キロ先のなんちゃらを――』と言う話も、あながち間違じゃないのかもしれねぇ……でございます」


 あ、ああ……北原さん試合する時、そんな話もしてましたね。

 てか、サラリと人の心を読むのはやめて下さい。


 驚きと感嘆の入り混じった瞳を向ける撥麗さんから、そっと視線を逸して、彼女たちと同型のメイドを着るつばめさんへと目を向けた。


「え、え~と……つばめさん? 彼女たちは、いったい……?」

「はい、あの者たちは、わたくしと同じく西園寺家に仕えるメイドたち――そして、その中でも有事に際しては(あるじ)を護る任もこなせる、武道や格闘技を修めた者たちです」


 なるほど……確かにあの凛とした独特な(たたず)まいは、メイドというより武道家のソレだ。


「さて、みなさん。先程、わたくしが車の中から送ったメールに添付されていた写真には、目を通しましたね?」


 つばめさんの言葉に、大きく頷く五人のメイドさん。


 って、車の中……?

 ああ、タクシーでの移動中にでもメールしたのか。でも写真って、何の写真だ?


「あの写真はメールにも書いた通り、先日の昼休みに、学院の中庭から学食を恨めしそうに覗きつつ、ベイビースターラーメンをポリポリと頬張る南先生を盗撮した写真です」

「ちょぉぉぉおおぉぉ~っ!? いつの間に、そんな写真をっ!? ってか、なんでそんなモンを持っているんですかっ!?」


 素っ頓狂な声を上げるオレの背後から『ベイビースターラーメン?』と、首を傾げる委員長と生徒会長の気配が。そして、憐れむような幼なじみの視線が背中に突き刺さる。


 しかし、突き刺さる視線は、それで終わりではなかった。


 つばめさんは、オレの問いを華麗にスルーすると――


「その、南先生の正体こそ、ここにいる友也さまなのですっ!!」


 と、声のトーンをひとつ上げて、とんでもないカミングアウトをブチかましたのだ。

 直後、立ち並ぶメイドたちから、尋常ではないほどの怒りに満ちた視線が突き刺さる。


 くっ……


 自分たちの仕える主が通う女の園に、こんな男が混じっていたのだ。この怒りは当然だろう……

 そしてオレには、そんな怒りを受け止める責任が――

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