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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第二十七局 大乱闘 一本場『そっちの意味かいっ!?』

 その、突然の告白に、ポカンと口を開けて呆けるオレ。


 いや、決してイヤなわけではない!

 この、美人で気の利く完璧メイドさんに、そんな事を言われて喜ばない男なんていないだろう。


 だからこそ分からない。そんな、『いかにも出来る女』の見本みたいなつばめさんが、なんでオレなんか――


「さあ、覚悟なさい、小僧共っ! 腐女子の前で男の娘をいたぶる行為が、どれほど罪深いか教えて差し上げますっ!!」

「「って、そっちの意味かいっ!?」」


 大小二本の木刀を手に、男たちへ向かい走り出すつばめさんの背中へ、オレと真琴ちゃんのツッコミが飛ぶ。


 一気に脱力して、その場にヘタリ込むオレ。

 てゆうか、腐女子を喜ばせるような行為は、断固拒否である。


「ふじょし? 婦女子のこと……? それに男の子……? そっちの意味って……?」


 すっかり脱力してしまった真琴ちゃんの隣で、ブツブツと呟きながら首を傾げる響華さん。


「ああ~、はいはい……とりあえず、わたしや響華さまが心配する事じゃないですから……詳しくはあとで説明します」

「そ、そうですの……? 」


 そう、キミたちが心配する事ではない。心配しなくてはいけないのはオレ――そう、オレ自身の貞操である。

 ってか、真琴ちゃん。お嬢様にあまり変な事を教えないでよ。


「ちょいと真琴さん。響華さまばかりズルいですわ。わたくしにも説明なさいっ!」

「えぇえぇ~~……てゆうか、高貴な淑女は知らなくてもよい言葉ですよぉ……」

「ふむ……そういえば、先ほど撥麗もそう言っておりましたわね。ではわたくしは、知らなくても良いですわ。お~、ほっほっほっ~っ!」


 と、二人のやり取りに割って入って来た白鳥さんであったが、心底どうでもよさそうに、軽くあしらう真琴ちゃん。

 この短時間で、我がクラスのチョロカワ委員長をあしらうスキルを、完璧に身に着けたようだ。


 まあ、実際に心底どうでもいい話だし。

 キミたちは、決して腐らずに、真っ当な人生を歩んでくれ。


 そんな、華やかさの欠片もないガールズトークに苦笑いを浮かべながら、元凶であるメイドさんの方へと視線を戻すオレ。


 そう、百人の野郎共と、二人のメイドさんによる乱闘へ……


「………………」


 い、いや……

 そこにあったのは、乱闘などと呼べるモノではない。そこにあるのは、まさに地獄絵図。二人のメイドさんによる一方的な虐殺であった。


 中国拳法無影拳の達人である撥麗さんの華麗な脚技は言うに及ばす、北原流の剣術を独自にアレンジしたと言うつばめさん。

 左手の短い木刀で相手の攻撃を軽やかにいなしながら、右手の長い木刀を的確に相手の急所へ叩き込んでいる。


 メイド服をなびかせて、舞うように戦う二人の動きには、格闘家ならずとも目を奪われるだろう。


 対して野郎共はと言えば、いくら人数が多くても所詮は頭の悪い素人の集まりだ。連携も何もあったモンじゃない。

 威勢だけは良いが、ただ闇雲に突っ込むしか能がなく、結局は返り討ちにされるだけ。

 コンスタントに数を減らして行く男たち……


 コレは時間の問題だな。相手に有能なリーダーや司令塔かいるならいざ知らず、このまま行けば、メイドさんチームのワンサイドゲームだ。


 そう思い、ホッと胸を撫で下ろそうとした時だった――


「向こふの、女らっ! 向こふの女を楯にすへば、ほいつらは手も足も出へねぇーっ!!」


 滑舌の悪い言葉で、指示を出す男の声。

 そう、つばめさんに差し歯を全部へし折られ、ノックアウトしていた雨宮の声だ。


 まだ、起き上がる事は出来ないのか、うつ伏せのままで、口の周りを血で染めた顔を必死で上げる雨宮。


 チッ! おとなしく寝てろバカッ!


「やかましいっ! でございますっ!」

「ぐこっ!?」


 すぐさま撥麗さんの投げたフライパンが、血で染まった雨宮の口へとめり込んだ。


 ったく、おとなしく寝てれば、残りの歯は無事だったろうに……

 あの様子では、更に数本の歯が――いや、下手すりゃあ、残りの歯が全部へし折れてるかもしれない。

 てゆうか、あのメイド服は、ホントに何でも出てくるな。


 とはいえ、決してあのバカが有能なリーダーや司令塔とは言えないけど、最後に出した指示だけは的確だ。


 その指示に、男たちはニヤけ(づら)で顔を見合わせると、示し合わせたかのように数人の男たちが散開。壁際に積まれたコンテナに登り始めた。


「待ちやがれっ! でございますっ!!」

「おおっと、ココはとおさねぇぜ」


 慌ててあとを追おうとする撥麗さんであったが、その行く手を数人の男の子たちに阻まれる。

 先ほどまでと違い、的確に距離を取りながら攻撃をいなし、遠巻き壁を形成する男たち……


「くっ……少々、熱くなり過ぎました……」


 つばめさんの方も、のらりくらりと攻撃を躱され、更に空き瓶や工具、コンテナの中身なんかを、間合いの外から投げ付けられて包囲網を突破出来ずにいる。

 こうなると、遮蔽物が多く、物が散乱している廃工場は厄介だ。


 って、のんきに状況の分析なんてしてる場合じゃねぇ!


「響華さんっ、白鳥さんっ、真琴ちゃんっ! とりあえず、外に逃げろっ!」


 そう叫びながら、響華さんたちの所へ向かおうとするが……


 ちっ……くそっ! 足に力が入らねぇ


 助けに向かうどころか、立つ事すらままならない。


「いいから、とにかく逃げろっ!」

「しかし……」


 心配と不安の入り混じった瞳を向け、逃げる事を躊躇(ためら)い、二の足を踏む響華さんたち。


「おっと、そう簡単には逃さねぇぜ」

「え……?」


 その躊躇(ちゅうちょ)した僅かな時間に、コンテナの上を迂回した三人の男が、響華さんたちの前に立ちはだかった。


「へへへっ……」

「たっぷり可愛がってやるぜ、お嬢様よぉ」


 下卑た笑いを見せる男たちに、脅えた表情を見せる響華さんと白鳥さん。

 そんな中で、真琴ちゃんは相手の男を睨み付け、二人を守るように一歩前に出た。


「響華さま、白鳥さん。ここはわたしに任せて、下がっていて下さい」

「ちゃ、ちょっ!? ま、真琴さんっ!?」

「なにしてますのっ!? お止めなさいっ!!」


 って、二人の言う通りだよっ!!

 いくらなんでも、普通の女の子が男を三人も同時に相手して勝てるワケがない。


「大丈夫ですよ。コレでも友子さんの一番弟子。一子相伝の護身術で、こんな奴ら瞬殺してやります」


 そう言って、空手の構えを取る真琴ちゃん。

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