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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第二十六局 決戦 四本場『愛しき人』

 キャットウォークまで設置されている廃工場。

 天井の低い学園とは違い、今回は撥麗さんの上昇を妨げるモノはない。


 その常人離れした跳躍力に、集まった男達の視線が集中する中、撥麗さんは空中で前方へ一回転――


(ちょお)ぉ~っ! 雷閃(らいせん)~~っ!」


 そのまま、豪快に捲れ上がるスカートと共に北原さんの方――いや、北原さんの見張り役の男達へ向かって急降下して行く。


(きゃく)ぅぅぅぅ~~~っ!!」

「ぐかぁっ!?」

「ぶへっ!!」


 撥さんの、スーパーイナズ――じゃなくて超雷閃脚が、北原さんの背後にいた松本の顔面にクリンヒット。更に、その松本の即頭部が隣にいた桜井の顔面を直撃と、二人まとめて完全KOだ。


 てゆうかあの時、教室の天井がもっと高かかったら、あの蹴りが飛んで来ていたかと思うと、背筋が寒くなる……


 そんなオレの思いなど知る由もないない撥麗さんは、片手と片膝を着いて蹴りの勢いを殺すように着地。

 すぐさまスカートを捲り上げて、両脚のガーターストッキングから何かを取り出した。


 そして、両手に一つずつ、取り出した手のひらサイズの箱のような物を持ち、それを北原さんの両サイドを固めていた桐ヶ谷と月山へ向け突き出す撥麗さん。


「ダブル撥麗ぃ~、コレダァァァァーーーーッ!!」

「「ぎゃああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」」


 その箱の先端が身体に触れた瞬間、二人は身体を痙攣させながら、物凄い悲鳴を上げた。


 ああ……スタンガンか。

 相変わらず色んなモノが入ってるな、あのストッキングは……


 程なくして、白目を剥きその場へ崩れ落ちる二人。


 まさに趣味全開の中二っぽい攻撃で、見張り役四人をあっという間に眠らせた撥麗さん。

 そして、今度は四次元ストッキングから、バタフライナイフを取り出すと、椅子に縛られていた北原さんのロープを切断する。


「忍さま、ご無事か? でございます」

「あ、ありがとうございます……」


 縛られていた手首を擦りながら、ホントに申し訳なさそうに頭を下げる北原さん。


「礼には及ばない、でございます。それと、忍さまにはコチラを、でございます」


 そう言って撥麗さんは、椅子に座る北原さんへ視線を合わせるように片膝を着き、背中からスルリと取り出したモノを差し出した。


「バット……?」

「って、間違えた、でございます。コチラでございますっ!」


 不思議顔で首を傾げる北原さんの前に差し出したバットを慌てて傍らに置くと、今度は背中からスルリと竹刀を取り出した。


「って、……なんで、そんなモンが背中から……?」

「愚問ですよ、友也さま――」


 思わず口に出たひとり言みたいな問いに、いつの間にかオレの隣まで移動していた、つばめさんが口を開く。


「わたくし達は、主の身を守るボディガードも兼ねているのです。この程度の事はメイドの嗜みですよ」


 と、そう言うつばめさんの両手には、大小二本の木刀が握られていた。


 相変わらず、メイドさんスゲーな。


 とはいえ――


 差し出された竹刀を受け取る事に、躊躇いを見せる北原さん。

 それも当然だ。つばめさんの話では、竹刀を持てば学院最強。あの撥麗さんでも敵わないという。


 しかし、それも相手が女性ならの話だ。

 北原さんは、男性恐怖症……しかも、今の今まで、その男達に拉致監禁されていたのだ。まともに竹刀を振るえるとは思えない。


「まあ、お守り代わりだ、でございます。撥麗はまだ仕事が残ってやがる、でございますから」

「お仕事……ですか?」

「はい――」


 撥麗さんは、慈しむような笑顔で、北原さんに竹刀を握らせると、振り向きながらゆっくりと立ち上がった。


「群れないと何も出来ないクズ共の大掃除という仕事、でございます」


 表情を一転させ、高みの見物を決め込んでいた男達を睨みつける。そして最初に取り出した金属バットを突き出し、その先端を男達へと向けた。


「さあ、掛かって来るがいい、クズ共っ! でございます。基本、掃除と聞くと逃げ出す撥麗ですが、今日ばかりはチリひとつ残さずに掃除してやる、でございますっ!」


 いや、掃除から逃げるって――それって、メイドとしてどうなの?

 しかし、そんなツッコミどころ満載な安い挑発に、男たちはいきり立ち、一斉に撥麗さん目掛けて走り出す。


「誰がクズじゃっ、コラッ!?」

「テメッ、こんだけの人数に勝てるつもりかっ!? 犯すぞ、オラッ!!」

「ハハハ~ッ! 素っ裸にひん剥いて、ボコボコに輪姦(まわ)してやんよっ!!」

「泣いて謝っても、全部ナカにぶちまけてやっからよっ!!」

「ヒャッハァーーっ!!」


 聞くに堪えない、下品な罵詈雑言を上げながら迫り来る男達。


「はぁ~、やれやれだぜ、でございます。弱い犬ほどよく吠えるとは、よく言ったもんだ、でございます……」


 そんな男たちに対して、撥麗さんは慌てる風もなく一つため息をつくと、足元に転がっていた瓶――先程、雨宮の差し歯をへし折ったウイスキーの瓶を、つま先で軽くすくい上げるように蹴り上げた。


 ちょうど頭の高さくらいまで浮かび上がるウイスキーの瓶。その瓶の落下に合わせて、撥麗さんは手にしていたバットを構えると、それを勢いよく振り抜いた。


「撥麗いぃぃ……ホォーーームランッ!!」


 鋭いスイングの直撃で、粉々に砕け散るウイスキーの瓶。

 そしてその破片が、まるで散弾銃のように飛び散り、向かって来ていた男たちの先頭集団へと降り注いだ。


「ぎゃああぁぁあーーっ!!」

「痛えぇー! 痛えぇぇよっ!!」

「血っ!? 血がーっ! 血がぁーーっ!!」


 悲鳴を上げて、のたうち回る先頭集団の男たち。そして、その阿鼻叫喚の光景に、後続の男たちの足も止まった。


「この程度で、ギャーギャー騒ぐなっ! でございますっ!! 南先生は、その何倍も痛い思いをしながらも、悲鳴ひとつ上げなかった、でございますよっ!!」


 バットで地面を叩きながら、男たちを一喝する撥麗さん。


「まったくです――(いと)しの友也さまに、あれだけ好き勝手しておいて、この程度で済むと思ったら大間違いですよ」


 そして、その言葉に呼応するように、オレの隣にいたつばめさんが、男たちに向かってゆっくりと歩き出す――

 って、今のセリフ、なにか聞き捨てならない単語が入ってなかったか?


「なっ!? つばめっ!!」

「ちょっ! つ、つばめさん!?」


 それが、オレの聞き間違いではないと証明するように、響華さんと真琴ちゃんが揃って声を上げる。


 その言葉を背中に受けながら、つばめさんはオレに向かいニッコリと微笑むと――


「では、ソロソロわたくしもお掃除に参加して参ります。あとの事はわたくし達に任せて、愛しの友也さまは、休んでいて下さいまし」

「……………………」

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