表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
106/137

第二十六局 決戦 一本場『好色一代男』

挿絵(By みてみん)


 異種格闘技試合――


 先生の前で木刀を構えるあの男は、そう口にした。

 しかし、空手と剣道で試合になるのだろうか……? いや、そもそも、コレが試合とよべるのだろうか?


 お互いに防具は身に着けておらず、先生に至っては、相手が竹刀ではなく木刀を持っているのだ。

 あんなもので殴られては、人体の骨くらい簡単に折れてしまうし、当たりどころが悪ければ命にも関わってくる。


 こんなモノは、とても試合とは呼べない――いえ、試合などと認めるワケにはいかない。


 しかし……


「ねえ、つばめ……」

「なんでしょうか、お嬢様?」

「この勝負……止められないのよね?」

「はい、お嬢様――なにより友也さま自身が、止められる事を望んでおりません」

「そう……」


 きっぱりと、そう断言するつばめ。


 これ以上の問答は不要とばかりに言い切るつばめのその姿に、わたしはそれ以上、口を開く事が出来なかった。


「ところで撥麗。先程、あの男達が口にしていた『剣道三倍段』と言うのはどういう意味ですの?」


 そういえばさっき、桐ヶ谷と呼ばれた男が、確かそんな事を言っていた。


 剣道三倍段――コレも始めて聞く言葉だ。


「それはですな、葵さま。長物(ながもの)を持つ剣道に対して、無手の空手や柔道が挑むには、段位にして三倍の力量差が必要という意味だ、でございます」

「だ、段位にして三倍ですってーっ!?」

「はい。詳しくは、空手○カ一代を読むといい、でございます」


 さ、三倍……そんなに必要なの?


 確か先生の空手の段位は二段だったはずだから、相手が初段だったとしても足りないではないか。

 ましてや、あの男達の言う事が本当なら、相手は剣道四段……

 もし、空手で挑むなら、十二段も必要なの?


「まあ、実際には、そんな単純なモノではありませんし、今の剣字さんに全盛期ほどの力が出せるとは思えませんけどね。しかし――真琴さまだけでは飽き足らず、ウチのお嬢様まで(たぶら)かした空手バ○一代ならぬ好色一代男さまには、スカッと勝って頂いきたいものです。そうすれば、わたし達も清々しい気持ちで、集まっている小僧共の大掃除に取り掛かかれるというものです」


 ちょ、まっ! つ、つばめっ!? 誑かすとか、なに言ってますの、この子はっ!? 誰も誑かされてなんかいませんっ、訂正なさいっ!!


 ――と、言ってやりたかったけど、上手く声を発する事が出来ず、口をパクパクさせながら赤面するわたし……


「つばめさん、訂正してください――」


 そんなわたしに代わって、つばめに向かい睨むような視線をぶつけながら、静かな口調で訂正を求める真琴さん。


 いいですわ、真琴さん。主人のわたしが許可しますから、ビシッと言っておやりなさいっ!


「お兄ちゃんがホントに好色一代男なら、わたしも響華さまも苦労はしませんよ! お兄ちゃんの鈍感さは、ハーレムラノベの草食系主人公並なんですっ!! わたしや響華さまが、壊れるほど愛しても1/30も伝わらないんですからっ!!」


 ちょーーっ!? 訂正って、そっち!?

 とゆうか、あなたまで、あっ、あああい、あっ、あ愛だとか、なっなななに言ってますのっ!?


「なんとっ!? そこまで、純情な感情が空回っている状態だったとは……大変失礼致しました。謹んで訂正させて頂きます」

「うむ! 分かれば結構!」


 スカートを摘んで頭を下げるつばめに、満足そうな得意顔で胸を張る真琴さん。

 こうゆうのを、確か『ドヤ顔』と言うのだったかしら……?


「とゆうか、死神少年と怪盗少年のコスプレでデートの尾行とか、愛し方がズレているだけなのでは? でございます(ぼそっ)」

「何か言いましたか?(ギロッ)」

「いえ、単なる独り言だ、でございます」


 いや……確かにアレは、わたしも方向性が間違っていたと思――


「!?」


 撥麗さんと真琴さんのやり取りに、思わず苦笑いを浮かべかけた時だった。

 盛り上がっていた観衆の歓声が、更にヒートアップする。


 なに? なにが起こったの……?


 わたしは状況は確認すべく、慌てて視線を先生達の方へと戻した。


 先程までと同様、お互い向かい合って構える二人。

 しかし、違う点がひとつ……


「上段の構えとは……剣字さん、本気ですね……」


 そう、つばめの呟き通り、相手の男が木刀を振り上げて、上段に構え直したのだ。

 ふと、その綺麗で無駄のない構えが、先生と試合した時の北原さんが構えた上段の構えと重なった。


 あの試合の後に真琴さんから聞いた話では、上段の構えは火の(くらい)とも呼ばれ、一撃必殺にしてニノ太刀不要(にのたちいらず)の構えなのだそうだ。


 しかし、逆に胴の防御を捨てた上、放った後は隙も大きい背水の剣でもあるらしい。


 いくらブランクが長いとはいえ、かつては北原流で師範を務めていた人が、そんな上段の構えを出してきた……


「南先生……」


 わたしは、胸が押し潰されそうになるのを堪えるように、ギュッと手のひらを握り締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一ポチお願いしますm(_ _)m
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ