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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第二十四局 挫折 三本場『ゲーム』

 錆び付いた扉を開いて薄暗い室内へ一歩踏み込むと、まずはお決まりとも言えるアルコールとタバコ、そしてシンナーの鼻を衝く臭いに出迎えられた。


 続いて足を踏み入れたお嬢様達が、オレの後ろで一斉に鼻を押さえて顔を(しか)めてる姿が、容易に想像出来る。


 たくっ……バカ共のたまり場ってのは、揃いも揃って同じ臭いがするなぁ。ホント、没個性的な奴らだ。


 そんな事を思いながら更に数歩進むと、数台のバイクがセルモーターを回し、エンジンを空吹かしする轟音が響く。


 そして、それと同時にオレ達へと向けられる、上向き(ハイビーム)のヘッドライト。


「よく来たな、南っ!」

「ハハァ~! 随分と大人数だな、おい!」

「自分がフクロにされるとこを女に見られてぇとか、マゾかテメェはっ?」

「ギャハハハハハァ~ッ!」


 奥に並んだバイクのライトが眼球を刺激し、顔を顰めるオレの耳に、聞き覚えのある男達の声と下品なバカ笑いが届く。


 いや、聞き覚えのあるヤツばかりじゃないようだ……


 強い光にも少しずつ慣れてきたオレは、ゆっくりと男達の正面まで進み、辺りを見渡した。


「そっちこそ――オレ一人をフクロにするのに、随分と大人数じゃねえか?」

「ああっ? それだけテメェが嫌われてるって事だろ?」

「こっちは、テメェをフクロにするって、ちょっとネットで告知しただけだ」

「みんな、テメェのブザマな姿を一目見たくて集まったんだよ。しっかし、嫌われ者だな~、南くんよ」


 なるほど……確かに、いくつか見覚えもある顔があるな。


 そう、潰れた廃工場……

 正面奥に並ぶバイクに跨がる男達のほか、乱雑に積み重なった大きなコンテナの上や、周りを囲むように設置されているキャットウォークには数十人――いや、百にも届く数の男達が、下卑た笑みを浮かべながらコチラを見下ろしていた。


「こ、こんなにたくさん……?」


 背後から、響華さんの怯える様な震える声……


 だから部屋でまっててって、言ったのに。つい先日、似たような連中に拉致られたばかりの響華さんは、まだトラウマもあるだろうに。


 オレは響華さんの不安を少しでも和らげるよう、こんなの大した事ではないとばかりに平然と一歩前へ出た。


「はんっ、嬉しいねぇ。お前らみたいに、群れないと何も出来ねぇバカ共に好かれたくねよ」

「へっ! その強がり、いつまで保つかな?」

「別に強がってねぇし――そんな事より、北原さんは無事なんだろうな?」


 オレは正面の男達を睨みつける。


 そう、オレはこのバカ共と楽しくおしゃべりをしに来た訳ではない。北原さんを助けに来たのだ。


 オレの殺気にも似た怒気を孕む視線を受け、一瞬たじろぐ差し歯男達。


「お、おう……まだ、何もしてねぇよ」


 強がるように平静を装い、左右へと別れる男達。


 さっきまで男達が立っていた場所のすぐ後ろ。そこにあったのは、手足を縛られ、安物のパイプ椅子に座る北原さんの姿……


「北原さんっ!」

「忍ちゃんっ!!」

「無事なんですのっ!?」


 その姿を確認すると同時に、お嬢様達が揃って声を上げる。


 向こうからも男達の背中に遮られ、オレ達の姿が視認出来なかったのであろう。

 北原さんは、オレの後ろに並ぶお嬢様達を見て、驚きにその瞳を見開いた。


「あ、葵さまに真琴さま……そ、それに響華さままで……どうして……?」


 絞り出すような声で問う北原さんに、響華さん達は前に出てオレの隣りへと並んだ。


「どうしてって――そんな事、決まっておりますわ。北原さんは、同じ学院に通う学友ですもの」

「ええ。学友が困っているのを助けるのに、理由などいりません」

「そうそう、友達、友達っ♪ わたしの好敵手(ライバル)になるには、キミはまだ未熟」


 響華さん達のセリフに、呆然と言葉を失う北原さん。

 てか、ライバルって、何のライバルだよ、真琴少佐?


「へっ! クセー芝居だな、おい」

「お友達ごっこなら、他所でやってくれや」

「そうそう。テメェらは南がフクロにされるトコを、黙って見てればいいんだよ」


 しかし、北原さんとは対象的に、男達は響華さん達の言葉を茶化す様に嘲笑(あざわら)った。


 正直、響華さん達の目の前で、無様にヤられるのは不本意だけど、いつまでも睨み合っていても仕方ない。

 こんな茶番はとっとと終わらせて、早く北原さんを助けないと。


「で? オレはどうすればいい? フクロにするだけで満足なのか?」


 オレの問い掛けに、不敵な笑みを浮かべる差し歯男達。

 両手をポケットに突っ込むと、ふんぞり返る様に胸を張った。


「そう焦るなよ。テメェの公開処刑に、こんだけの人数が集まったんだ。少しでも楽しんでもらう為に、ゲームでもしようぜ?」

「ゲームだと?」


 ニヤついた男の口から出た言葉に、オレは(いぶか)しんで眉を顰めた。

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