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いじめ

いじめられる方にも問題がある。それは、加害者側の言い訳だ。


少女は、にこやかに笑っていた。


晴れ着だろうか?それとも祭りの衣裳だろうか?可愛らしい、赤い着物すがたで、和傘を刺して、その、和服姿とは、良い意味で不釣合いな、ピースサインを掲げて笑っていた。


彼女は、死んだ。


電車に飛び込んで。


いじめによる自殺。そんな、もはや、悲しくもありふれた理由で、彼女は、10代と言う短い生涯に自ら幕を下ろしてしまった。


彼女の死の後に奇しくも、生前の笑顔が人々の心を魅了した。


後味の悪い話だ。


冒頭の一節にもどる。


いじめられる方にも問題がある。それは、加害者側の言い訳だ。


僕は、多分、いじめられている。

理由は、僕がダメ人間だからだ。仕事の夜勤明けに、みんなで行う安全教育で、僕は、資料をうまく作成できずに、そのせいで、時間を押してしまい、仲間に迷惑を掛けた。その点は、自分に非があるから、認めるが、問題は、その後だ、僕は、シビレを切らした仲間の1人に椅子を引かれて、尻餅をつかされた。


「何するんですか?」


多少、本気で怒ったが、椅子を引いた彼は、逆に「早くしろよ」と怒鳴り返し、その後、ヘラヘラと笑い始めた。そして、周りも。


みんなが、僕を見る。「やられたのは、お前が悪い」と言いたそうな眼で。


僕はその時思った。


「こいつらの様にはなりたくない」と。こいつらの側には行きたくないと思った。


大人の社会ですら、こんな感じであるから、自殺した、彼女の周りも何かしら、そんな空気があったのだろう。


やられる方にも問題がある。


僕は、以前、前の上司だった人にこう諭された事がある。


「みんなが相手にしてくれないのは、お前が考えないからだ」と。


確かに、思い当たる節もあるが、何となく納得が行かない。


それは、多分、勝ちの言い訳だからだ。

勝ち残った奴の言い訳だからだ。


どんなに、考えたって、勝てない奴はいるし、何もしなくても、勝てる奴もいる。


努力は平等でも、結果は不平等だ。


勝った奴が、勝てない奴を指を指して笑い。勝ちの言い訳をさも、自分の武勇伝の様に語って、勝てない奴のなにかを否定している。それが、人格だったり、能力だったり、見栄えだったり。


だから、考えさせられるのは、いつも弱いものばかりに思えてくる。


いじめの構造はそんな、力関係のエゴイズムから出来上がる。


ならば、強い奴らに気に入られる人間になり、彼らと共に、また、弱い誰かを馬鹿にすればいいのか?


まあ、それも一つの答えだろう。少数派から多数派になることで、社会性を身に付けて、生き延びる。実に賢い。


だが、それは、あなたの個性や、アイデンティティを潰してまでの結構であるならば、それはなにか、虚しくはないだろうか?


もしも、君が、誰かに嫌がらせをされて、その誰かを軽蔑するならば、君が、その、軽蔑する誰かになる必要はない。


苦しみに慣れて、心を麻痺させるくらいなら、泣いて、わめいて、惨めに生きる方がいい。


同じ苦しみを抱える誰かに寄り添う優しさがあれば、それだけで美しい。


いじめられる理由を考えるより、いじめない方法を考える。


いつか、そんなことが、当たり前になればいい。

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