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8月15日の出来事

8月15日、色々な行事のある日だと思う。

お盆の真っ最中であり、盆法要を聴くために一家で、近所の寺に行って、ナマグサ住職の有難面白い、盂蘭盆の成り立ちの話しを毎年聴く。


「愛情も、注ぎすぎると、たるを知らない、餓鬼の世界に落ちますよ」

こんな話を子供の頃から、何度も聴かされ、初めは正直、よく解らなかったが、10代を後半に差し掛かった当たりから、何となく、自分なりの解釈が、できる様になった。


ようは、愛情を注げば、必ず、その見返りがあるわけではなくて、一方通行の場合がある。それでも、無償の愛で、貫ければ、見返りなんて要らないと言い切れればいいのだか、人間はそんな、強くない。

結局の所は自己満足であり、その事に気付いた時には、手の中に何にも残っておらず、虚しさに襲われる。


そんな風に、解釈できる。


ナマグサ住職は、言う。

「犬や猫に、服を着せたり、毛をカットしたりと、愛情のつもりで人間と同じように扱うのは、自然の冒涜だし、所詮自己満足だ。ましてや、犬や猫に愚痴なんて言ったって、あいつら、『わん』とか、『ニャー』しか言わないんだから」


ペットにいらん程の金を掛けて、有り得ない色に自らの髪をそめて、似合わないサングラスと、アクセサリーを付けた、痛いマダムの姿がめにうかぶ。


そんな、風刺の掛かった説法に、「クスクス」しながら、「成る程な」と毎年思う。


また。


我が街三島では、夏祭りがこの日から始まり、大きな山車に乗った子供達が、大社の鳥居の前で、「ソーレ、ソーレ」と叫びながら、シャギリを打ち鳴らし、祭り囃子で、街を奮い立たせる。歩行者天国へと解放された道路にあふれた人々が、楽しげに、山車を見上げて、ヨタヨタと歩いている。


そんな祭りに、中学時代からの友人。横やんと繰り出し、2人で呑んだ。

彼は、中学時代、諸々の事情で、一時期不登校になった事がある。僕は、当時彼と同じクラスでありながら、何も出来ず、たまに、彼が学校に出てきた時に、話しかけてやる事しか出来なかった。


クラス替えの時に、小学校時代からの友人、ヘダンに、「色々と気にかけてくれ」と協力を求めた。それぐらいしか、何もしてやれなかった。


今は、その穴埋めでは、ないが、時々呑みに誘って、2人で呑む。

彼は本当にいい奴だ。時間があれば、必ず笑顔で付き合ってくれる。


祭りの帰りに、馴染みの居酒屋で、2人で呑む。


「あの時、師匠がヘダン達と引き合わせてくれたから、助かったよ。あれがなかったら、辛かった」


横やんは、そう言って、笑顔で2人で乾杯を済ませたビールを呑み干した。


横やんも、タケと同じように、僕を師匠とよぶ。


「いや、俺はあの時、何にも出来なかったから、何となくだけど、横やんの事をヘダンに投げて、逃げてた気がする」


僕がそう、悲観的に言うと、彼は。


「イヤー。でも、そのお陰でさ、僕は今があると想うから、それに、あの時は、ほら、学校も荒れてたから、仕方ないよ」


と、また、笑顔でビールをあおった。

僕の負い目は、彼はとっくに水に流している様だった。


そこから、まあ、色々と話した。

今の仕事の愚痴やら、お互いに結婚もせずにフラフラしていて、相手すらいないと言う情けない話。


そんな風に、色々と話し中で、今の若者文化の話になった。


「何だかさ、今の若い子達ってさ、やたらと、つるみたがるよね。変に仲間意識が強いと言うか、その反動でか、一度、外れると驚く程ドライだし」


僕がそう言うと、彼も「そうそう」と頷いて言った。


「最近は、LINEとかもあるしね。四六時中つるんでる感はあるよね」


「それって、何だか窮屈だよね。何だか、お互いに監視し合ってるみたいだし」


「そこから、イジメに発展するケースもあるし、出る杭は打たれるってのが、打つ力か、粉砕レベルだよな」


「LINE外しだっけ?でも、それって、お互いに、適当な距離を置いて、既読やら何やら気にしなければ、何でもないよね」


「それが出来ないってのが、今時の子の不器用だよね」


「何だか、戦時中の隣り組みたいだよな。裏切り者が居ないか、出し抜く奴が居ないか、見張っていないと不安なんて。何だか、民主的とは、言えない気がする」


横やんが、黙って頷いた。


戦争なんて、知らない。たげと、確かにこの国はかつて他国に、武力で挑み、その戦火を自国に招いた。その結果、罪のない人々の生活が壊されて、人々の不安は、お互いを疑う事でしか、解消されなかった。


戦争が終わって70年を過ぎた今も、僕らや、それより若い子供達は、未だに、見えない戦争を続けている様な気がする。


先の大戦とは、勿論関係は薄いが、人々の葛藤は、いつの時代も続いている。


逃れられないのか?


まあ、よく解らないが、あえて、適度な距離を置いて、たまに会って、ビールを乾杯する位でいい。


適度な距離でも、離れない奴が、一番長く一緒にいられる。


2人の呑み会は、そんな、結論でお開きになった。


8月15日。この日は終戦記念日。

僕達の終戦記念日。

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