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死の狂犬 (1)

「ユウキ殿とルティアは右の2体を頼む!!他は僕と一緒に左の3体をやるぞ!」


「「「了解!!!」」」


ヨハンの指示通りに、オレは右のスノーマンに突撃する


オレ達は、もう少しでこの雪山を下山するってところで、スノーマンの群れに襲われていた


すでに5体のスノーマンを倒しており、残り5体となっているが、ちょっと体力的に危うい状況である


「《アクセル》!!」


オレは2体のうち、1体のスノーマンに高速で背後に回る


スノーマンはオレの速さに反応できないず、オレを見失う


ここだ!


「《スラッシュ》!!」


魔力がほとんどなくなったオレは、無属性の斬撃を、スノーマンの首筋に飛ばす


「グガァッ!!」


それでも充分効いたようで、スノーマンはその場に倒れる


「相変わらずの速さね!私も負けてられないわ!《ファイアーボール》!!」


ルティアの放った火の玉が、もう片方のスノーマンに襲いかかる


「グォォォォォォオォォ」


スノーマンはそれを避けると、ルティアに反撃してくる


「くっ!《特殊結界》!!」


ルティアがそう唱えると、スノーマンがどこかに消え失せる


今のはルティアの特殊スキルだ。確か、ルティアの先祖が特殊ダンジョンをクリアした報酬として貰った能力スキルが、ルティアに遺伝として受け継がれた、とかだったっけ?


「くっ……」


《特殊結界》をルティアが使うと、その場に突然うずくまる


「お、おい、ルティア!大丈夫か!?」


オレは慌ててルティアに駆け寄る


「だ、大丈夫。ただの魔力切れだから。今のスキルはかなりの魔力を使うの。今日1日、ずっと戦いっぱなしだったでしょ?ちょっと限界がきたみたい。けど、大丈夫。すぐに立てるようになるわ」


ルティアはそう言うが、尋常じゃないほど、汗をかいている


…これ、絶対無理をしてるよな


「ルティア、おんぶしてやるよ。掴まれ」


オレはその場に座り、ルティアをおんぶする


「ちょ、ちょっと!何勝手な事してるのよ!庶民のくせに生意気よ!」


「うっせーな。庶民は助け合いが大事なの。こうやって偉い人に恩を売って生きていくのが庶民なの」


オレがそう言うと、ルティアは恥ずかしいのかそっぽを向き


「ふ、ふん!そう言う事なら特別に許可するわ!感謝しなさいよね!この私をおんぶ出来るなんて光栄な事と思いなさい!」


「はいはい、ありがとうございます。」


…お前だって庶民だろうが




その後、もう片方のスノーマンを倒したヨハン達と合流し、ルティアはシャルコット達にオレにおんぶされてる事をイジられながら、無事下山した


下山した後は、特殊ダンジョンまでは本当にすぐで、30分もしないうちにその姿が見えてくる


「アレが今回の特殊ダンジョンか…」


見た目から、神々しさを放っており、なんだっけ?パルテノン神殿?みたいな感じで、今回も四方の入り口から入れるらしく、オレは西の方から、ヨハン達は東の方から入る事にした


「それじゃあ、ここでお別れだ」


ヨハンが別れ際に言ってくる


「あぁ、お前らも気をつけろよ。オレの事を心配して死んだりしたって、責任取らないからな」


「ふふ、それはルティアがしそうね」


「なっ!そんなわけないでしょシャルコット!………あんたも気をつけなさいよね。」


「おぉ気をつけるわ。まぁお互い無事に帰ってくる事を目標にしようぜ。」


オレはそう言ってヨハン達と別れる


とりあえず今日は、西の入り口近くに仮拠点を貸してくれてる商人達がいるだろうから、そこで今日は寝るとして、明日、特殊ダンジョンに挑む事にしよう。今日は魔力を使い過ぎたしな




オレは案の定、商人達が仮拠点を貸してくれてたので、1番安い拠点を借りて、そこに寝る為の道具などを準備する


テントみたいな物を作っていると、お隣の冒険者達の声が聞こえてくる


「おい聞いたか。」


「あぁ、『死の狂犬』だろ。」


「奴らもこのダンジョンに挑むらしいぜ?」


『死の狂犬』?何の事だろう


こういう危険なダンジョンは、情報が命だ


聞いといて損はない


「あの、すみません。『死の狂犬』って何ですか?たまたま聞こえちゃったもんで」


オレが男達に尋ねると、男達は驚いた顔をし


「あんた、『死の狂犬』を知らないのかい!?」


まぁ、名前からしてヤバそうな奴だというのはわかるが


「『死の狂犬』ってのは、有名な盗賊ギルドでな。女子供だろうが、目的のためなら容赦なく殺す。そういう、イカれた奴らが集まる、超デンジャーなギルドさ」


うわ、やっぱりこの世界にも、そういう頭のおかしい奴らっているんだな


ん?って事は…


「その人達ってもしかして、今回の『神の憤怒』を……」


「あぁ、そうらしいぜ。今回もすでに、何人かの冒険者が奴らに殺られたらしいぜ?あんたも気をつけな」


男達はそう言って、立ち去っていく


『死の狂犬』か…


ダンジョンに入る時には注意しておこう




時刻は……知らない。時計が無いからね


すでに日は昇ったので、朝なのは間違いない


「よし!行くか!」


オレはダンジョンに踏み込んだ




「うぉー、すっげー!」


中は金ぴかで輝いており、コレを削れば売れるんじゃないかと思えるほど眩しかった


今オレがいるのは、人が5人ほど通れるぐらいの通路だ


通路は一本道だが、奥がどうなってるかはわからない


「とりあえず歩くか」


奥に進んで行くが、入口と変わらず、ずっと金ぴかの道だった


目が悪くなりそうだ


労災とかギルドから……出るわけないよね


しかしでっかいな…


でっかいというか、距離が長いというか


外から見たダンジョンだと、ずくに中を回れるんじゃないかと思うぐらい小さいように見えたが、意外と広い


これは、1日で回れそうに無いな


一応、中で泊まり込むようにテントとかは持ってきたので、大丈夫だが


『死の狂犬』


それだけが、気がかりだ


寝てる途中に襲われるとかありそうだしな


まぁ、ニートやってたオレにとって、二徹ぐらいならいけると思うが…


いろいろ考え込んでると、だいぶ進んだようで開けた空間に出る


オレはそこに出ようとして、すぐに隠れる


理由は簡単


「やめ……やめてくれぇ!!」


「ヒヒヒ、お終い?」


「ガァァァァァ……!!」


男の断末魔が部屋中に響き渡る


ちらりとそちらを見ると、複数人の黒ずくめの男達がいて、そして倒れてる男が……うっ!


オレは慌てて目をそらす


「はぁはぁ……」


あれって、どう考えても死んで……いや、考えるな考えるな考えるな!!


オレは乱れた呼吸を、整える


「おい、ここはもう良い。次行くぞ」


「「「了解ッ!!」」」


男達は、オレとは別の通路に出て行く


そして、1人残される倒れた男


もしかしたらまだ息があるかも!


オレは急いで近づき、…後悔する。そして同時に泣きたくなる


男は目を開き、苦しそうに、痛そうに、悲しそうに死んでいた


もし、もしもだ…。オレがあの場に飛び込んでいったら助かったかもしれない


ただ、本能的な恐怖から、思わず隠れてしまった


今まで、たくさんの魔王の幹部と戦ってきたが、それとはまた別の恐怖


気持ち悪いに似た感情の恐怖に、オレはただ怯える事しか出来なかった


本当にごめんなさい。


この世界はゲームじゃないんだ。死んだからといって、残機が1減ったとかではなく、死んだら終わり


オレにできる事は、男の開いた目を、ただ閉じる事しか出来なかった


気のせいかもしれない。もしくはオレがただそう思いたかっただけかもしれない


目を閉じた男は、先ほどの苦しそうな顔と違って、少しだけ表情が和らいだ気がした




「あれ?ヒヒッ!次のターゲット発見かしら?」




背後から声がかかり、振り向くと、先ほどの黒ずくめの男達と同じ服を着た、女がいた


ーーそして、女の後ろには2人の男が


「おい、次は俺に殺らせろ」


「ばぁーか、早いもん勝ちに決まってんだろ!」


「ヒヒッ!まぁ勝つのはアタシだけどね。」


男達は武器を取り出す


オレは倒れた男に、少しだけ振り返り、すぐに女達の方を向く


いつものオレなら、震え上がって何も出来なかっただろう


ただ、オレの後ろには、無残に、無念に、悲しく、殺された死体があったから


自分でも驚くほど、オレは女達に怒っていた



ーーちょっと待ってろよ。今、仇を討ってやるからな



オレは心の中で背後の男に言うと、女達に剣を向け、走り出した




今夜20時から『こんなクソゲー(異世界)は間違っている!』で特別編を投稿するので、良かったら見てください


良いですか?ビックリマーク1つの方ですからね?

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