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占い師 (2)

「ここがアイリスの言ってた店か…」


オレはエレメンタリーの広場から少し外れたとある店に来ていた。


「営業してるよな…?」


看板とか出てない為、少し不安になるがお店のドアを開ける


カランコロンと鈴の音が鳴り


「あ、いらっしゃいませー…。ようこそ占いの館へ。」


奥から、長い紫色の髪をした女性が出てくる


「えーっと、ローズさんですか?」


オレが尋ねると女性は


「はい私がローズです。どうぞ、お座り下さい」


やる気なさそうに、椅子を出してくる


「あぁどうも…」


ローズさんは、見た目はオレより少し年上ぐらいのおっとりした女性だった。


「で、今日は何の用です?勧誘や冷やかしなら、出て行ってもらいますが…」


ローズさんの声に、少し怒気が混じる


「いやいや、普通に占ってもらいに来ただけだよ!」


オレがそう言うと、ローズさんは「そうですか。」と言って、柔らかな笑みを浮かべてくる


……この人、いつもどんな目にあってるんだ


「では、何を占って欲しいんですか?恋占い?」


「いや…恋占いはいいや。それよりも失礼を承知で尋ねさせていただきますが、特級クエストの出現を占ったのはローズさんですか?」


特級クエストとは


滅多にでない珍しいクエストの事で、そのほとんどが特殊ダンジョンの出現だったりする。



特殊ダンジョン内には、『伝説級の何か』があり、それを手にすれば人生勝ち組と言っても過言では無いほど、凄いものなのだ。


かつて、ララと特殊ダンジョンに行き、ララはそこで『聖剣』を手に入れている


そしてその出現は、限られた最高位の『占い師』しか、予知できないらしい


「あぁ、特級クエストですか?はい、私が予知しましたよ?まぁ証拠は無いですが」


なるほど。アイリスの話は本当らしい


「あぁ、友達からローズさんの噂は聞いてますので、信じますよ。ただ一応確認したかっただけで。」


「そうですか。では、今日はどういったご用件で?」


ローズさんも、オレが占われに来たとわかり、店の棚からでっかい水晶を持ってくる


「えーっと、自分はこれからどうすれば強くなるかわかる占いってありますか?」


オレがローズさんに尋ねると


「あぁ、まあ一応『人生占い』として占えばわかりますよ?」


あるんだ…


「あ、それでお願いします」


「了解しました。それではお名前をお聞きしてもよろしいですか?」


「クリハラユウキです。」


「クリハラユウキ様と…。手を出して貰っていいですか?」


え?手を?


手相でも見るのか?


「あ、はい。」


オレはローズさんに利き手の右手を見せる


「ふむふむ、ほう…」


ローズさんはオレの手を自分の両手で、宝石を扱うようにまじまじと見る


くぅ……何かくすぐったい!


しかもローズさん、結構美人だから照れる!


「あ、あの、何かわかりますか?」


オレはこの状況に耐えきれなくなり、ローズさんに尋ねる


「…ちょっとお待ち下さいね?」


ローズさんはそう言って、オレの手を見続ける


まだ終わらないのコレ?


結構、照れるんだが!


オレが悶々としてると


「ペロ」


「ひゃっ!」


ローズさんがオレの手を舐めてきた


「ちょ、ちょっとローズさん!これは占いに何の関係が!?」


オレがローズに尋ねるが、ローズさんは何も答えない


ペロッペロッペロッ


とひたすら舐め続ける


な、何だこれ…。何が起きてんだ?


美人占い師にひたすら手を舐め続けられるオレ


17年間の人生の中で、こんな体験1度もしたことが無いので、オレはどうしたらいいかわからない


でも、何かだんだんイケない気分になってい…く…


ガリ


「痛だぁ!?」


突然ローズさんがオレの手を噛みだした


オレは慌てて手を引っ込める


うわ!血が出てるよ!


「あ、あの!コレは占いにちゃんと関係があるんでしょうね!?」


オレがローズさんに尋ねると


「もちろんありますよ。私は自分の仕事に誇りを持ってますから」


そ、そうなのか?


「ところで貴方の右手美味しいですね。今度また食べさせて下さい。」


「本当に関係があるんだよな!?」




「ーーふむふむ、なるほど。そうですかそうですか。」


ローズさんは、オレの右手を捕食した後、水晶とずっと睨めっこし、時折ぶつぶつと呟いていた。


そしてーー


「はい、結果が出ました。」


「本当ですか!?」


ローズさんは、水晶からオレに向き直り言ってくる。


「まず、貴方はとことん不幸な男性ですね。」


おぉ当たってる!いや、でもコレだけじゃあ誰でも言えるよな…


「そして、貴方は今、故郷に帰れない状況にある」


す、すげぇ。この人本物だ


オレは異世界に来てしまった為、家に帰る方法がない


ちなみに、今だにオレを異世界に飛ばした奴の正体はわかっていない


「次に貴方の周りの女性についてですが…。リッチの女性がいますよね?コレが今の貴方とのベストパートナーです。」


ディーバの事か!


やっぱりオレは、アイツと結ばれる運命なのか!


「そして貴方は彼女の好意を、表面上は嫌がってるフリをしてますが、内面では…」


「そんな事ないぞ!!」


オレはローズさんの言葉を遮る


「そ、そうですか?でも占いには…」


「そんな事ない!!」


そんな事ないぞ!オレは断じて認めん!


「つ、次に金髪のエルフの少女がいますよね?彼女とはもう少し頑張れば恋愛面に発展しそうですね」


「マ、マジっすか!?」


金髪エルフって、ララの事だよな?


「えぇ、彼女は貴方の事を親友と思っており、また絶対の信頼を持ってますね。これは今までの男性と女性の傾向からいって、もう少しで恋愛に発展するかもしれません。」


ま、まじかよ…。


「けと、あくまでも傾向ですからね?無茶な事をしたりすれば、今まで積み上げてきた物が全てなくなりますからね?」


「あ、はい!わかってます!」


「しかしその点で言えば、このリッチさんはおすすめですよ?多少の事では貴方の好意は全く消えませんからね」


すげーなあいつ


「続いて赤い髪をしたサキュバスの女性ですね。」


リリスの事か


「彼女は貴方の事を大事に思ってますね。ただコレは母性や弟を見る目ですね。恋愛方面にはいってませんね。」


まぁリリスは頼れるお姉さんみたいな感じだしな。


「ただ、彼女は貴方となら結婚してもいいという無意識に近いですけど感情がありますね。貴方には非常に感謝していると」


「へー、そんな事までわかるんですか。」


「はい。感謝の気持ちが先ほど水晶を覗いてる時に、痛いほど伝わってきましたからね?まぁ何故感謝してるのかはプライバシーを守り覗きませんでしたが。」


「ありがとうございます。」


まぁ恥ずかしい事は無いが、一応な、一応


「では、次は貴方の今後の方針ですが…」


「え!?ちょっと待ってくださいよ!アイリスは無いんですか?」


まだアイリスの占い結果が出てない


「…?一応一通り見ましたが?」


…?どういう事だ?


まぁアリスやルティアなんかも言われてないし、あいつらと一緒って事か?


って事は、アイリスとは本当に何もフラグが立ってないって事?


よくわからん。


「まぁ次にいきますね?次は貴方の今後の方針です。」


きたきた!ここでオレのパワーアップ方法が明かされる


「…率直に言って、冒険者の才能が無いですね。このまま冒険者を続けると、人体の全てを売っても返せないほどの借金が貴方に降りかかります」


……………。


「ここまで不幸な人は、私は結構占い師やってますけど初めて見ました。私的には1回死んで転生する事をオススメします」


こいつ、自殺をオススメしてきやがった


「多分、生まれ変わりが存在するのなら、貴方の次の人生は幸運に溢れてる人生になると思いますよ?一生分どころか生まれ変わりの分まで背負って、不幸な体質になってますから」


や、やめろよ。信じちゃうだろ


「あ、あの本当に無いんですか?もうこの際何でもいいんですけど…」


「そうですね…。別料金かかりすけど、《集中念力》というスキルを使ってみますか?」


「な、何ですかソレ?」


「コレはですね。この世の中にある幸運になれるものを無差別に感じとるスキルです。まぁ、たまーに大当たりを引いたり、逆に貴方とは全然関係の無いものを引いたりしますがどうですか?」


なるほど。要は運試しって事か


不幸なオレが運試しかぁ…


いや!オレは変わるって決めたんだ!


「いくらですか?」


「占いとは別に3万Eエレメントですね。やりますか?」


3万かぁ…高いな。けど


「お願いします。」


オレはローズさんに頭を下げる


「わかりました。ではいきますね?」


ローズさんはそう言うと、水晶に手をかざす


すると水晶は突然光だし、部屋全体が光に覆われる


おぉ、なんかすげぇな


「あ!来ました来ました!見えます見えますよー」


ローズさんは、ぶつぶつと呟く


「あ!ダメ///そっちじゃない!んん!そこそこぉ///」


おい、これは本当に占いなんだろうか


「あ!何か来ちゃう!何か来ちゃうよぉ〜///」


「あ、あの占いの最中悪いんですが、もっと声を小さく…」


「あ!イっちゃう!イっちゃうイっちゃう!!ダメダメぇ!!らめぇぇぇぇぇぇ///」


「おい!声が大きいわ!店の外にいる人達に聞かれたら、勘違いされるだろ!!」


「くる!!来ちゃう!!イクイクイクイクッ!イっちゃうぅぅぅぅぅぅ///」


ローズさんはそう言うと水晶から手を離し、椅子に倒れるようにもたれかかり、はぁはぁと頬を赤らめていた


やっと終わったのか?


っていうか今の占いか?本当に占いだよな?全然信じれないんだが?完全にいかがわしい事をしていたようにしか見えないんだが


「う、占いの……結果が…出ました…」


ローズさんは辛そうにしながらこちらに向き直る


まぁ、3万も払ったんだ。何か良い結果くらい聞かせてくれよ?


「何とですね…」


ローズさんはゆっくりと喋りだす


オレも無意識にゴクリと息を飲む


そしてーー




「たった今、特級クエストが出現しました」




「舐めんな」


オレはローズさんの顔面に水晶を叩きつけた












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