不幸体質な少年
この作品は続編ですが、新規の方にも読みやすくなってます!!
げ!間違って開いちゃったよ。と思ったそこのあなた!
安心してください。面白いですよ?キリッ
こんなこと言って面白くなかったらどうしましょうね?
姉がいるので、姉の下着を被って「ワッハッハッハッ!天の恵みじゃー」と言って、町内一周しましょうか?(嘘です、やりません)
面白くなかったらすみません。普通に謝罪しますね。
『目醒めよ、目覚めるのだ我がマスターよ』
真っ暗な視界のなか、唐突に何者かがオレに言ってくる
突然の事で何が何だか分からない。
ーーいや、それは嘘だ
オレはコレを知っている
漫画やアニメでよく見る『特殊能力』を得る時の場面なのだろう。
オレの目に一筋の涙がこぼれ落ちる
長かった、永かった。本当に長かった。
17年間生きてきたが、本当に辛い日々の繰り返しだった。
コミュ障な性格のせいで、ぼっちになり
高校生でニートやっていたある日
親に無理やり学校に行かされ
やっと乗り越えた昼休み、弁当が食う場所が無く男子トイレに入るとそこは異世界だった
びっくりするよね?だってトイレから異世界転生って何?バカにしてんの?
そこからも色々あり
魔王の幹部倒せば、内臓売るレベルの借金を背負い
何かすごい剣が出たと噂になり、やっとオレの時代が来たかと思ったら、オレの同行人がソレの所有者でしたというオチになり
他にもステータスがカスだったり(どれくらいカスかと言うとスライムに殺されかけるレベル)
変な岩に座ったら爆発して、三途の川みたり
やっとステータスが上がって、そろそろ職業に就けると思ったら、クソ魔王の幹部のせいで《ビーストテイマー》という大外れ職に就いたり
レベルが上がっても、攻撃力や防御力は上がらず、回避率だけがすごい奴になったり
サキュバスのお姉ちゃんといやらしい事しようとしたら、オレの相方に邪魔されたり(←これ、トラウマランキングでトップ)
他にも色々あったが
やっと遂に来たぞオレの時代!
今日からオレは《ビーストテイマー》では無く勇者だ!
何だろう。どんな能力が貰えるのだろう。
伝説の剣?
最強の龍?
全てを破壊する魔法?
ワクワクしながら、オレ栗原優希は目を開けるとそこには
「はぁ…はぁ…目覚めよマスター…まぁ目覚めなくても…良いですよ…?はぁ…はぁ…無理やりあそこを…目覚め…させますので…」
クソドMリッチがいた。
「………。」
オレが何も言わないでいると
「では、いただきまーす」
目の前のドMリッチはオレの股間を弄りだしたので
「死ね。」
「ギャアッ!!」
オレは顔面にキックを入れてやった
「あぁぁ///もっと!もっと下さいマスター!」
目の前の顔面を押さえながら喜んでいるのは、腰までありそうな長い黒い髪に赤い瞳をした美少女
見た目だけは良いこいつの名は、ディーバと言う。だが騙されちゃいけない。
こいつはドM変態で、あの魔王の幹部でリッチだ。
リッチ
かつて一国の王や大魔導士だったものがアンデットとなった者の事で、不死だし通常の攻撃は効かない
「ち!ご褒美になっちゃったか」
「はい!最高のご褒美でしたマスター!」
「…お前、あんまり舐めた真似してると魔王軍に返すぞ」
オレがそう言うと、ディーバの顔は一気に青くなる
「ひぃぃぃ!!それだけは!どうかそれだけはやめて下さい!!」
こいつは昔、今オレ達が住んでいる街、エレメンタリーを攻めてきた時に戦ったのだ
まぁもちろん、オレぐらいの実力になればこんな奴、楽勝だったけどな
「大体、アレから1年経ってますし、もう魔王のクソヤローだって私の事忘れてますよ。」
「いや、そりゃ無いだろ。お前、仮にも幹部だぞ?魔王だって幹部ぐらい1年経っても覚えてるだろ」
「どうですかね?あの方はすぐに幹部をひょひょい決めていくから、もう私の事なんて覚えてないかもしれないですよ?」
そんな適当な奴なのかよ、魔王って。
と言うかアレからもう1年か
つまりこの世界に来て1年経ったという事だ
長かったような、短かったような
まぁ最初にこの世界に転生した時に比べて、だいぶ環境もレベルも変わったしな
「とりあえず腹減ったし、朝ごはん食べに行こうぜ」
オレはディーバに一言言って、部屋を出る
階段を下りていくと
「あ、やっと起きましたか。おはようございますユウキ。」
前から声がかかった
見るとそこには、肩口まで届くか届かないかの長さの透き通った水色の髪と瞳をした美少女、アイリスがいた。
「おはよーアイリス。朝ごはんってまだある?」
オレがアイリスに尋ねると
「あぁありますよ?今、温めてきますね?」
と言って、台所に消えていった
「さて、今日はどうしますか?クエストに行きますか?」
朝食を食べ終わると、アイリスがオレ達に尋ねてくる
「えーまだ貯金あるし家でゴロゴロしてたい」
オレが言うと
「えー!ユウキ、最近ゴロゴロし過ぎ!私、そろそろ冒険したいよ!」
オレに文句を言ってきたのは、ディーバ程長くはないが、それなりの髪の長さをした金髪碧眼のエルフ、ララノアだ
「いや…だってさララ、まだ金あるんだぜ?」
「そうだけど!ねぇリリスからも何か言ってよ!」
と、ララに指名されたのは、ディーバと同じくらいの長い赤い髪をした黄色い瞳のサキュバス、リリスだ
「そうよぉー、少年は最近たるんでるわぁ。お姉さん面白く無いー」
どうやらリリスも冒険に出かけたいらしい
「絶対嫌!」
まぁそんな事でオレの意見は変わらないがな
「もぅー、そんな事言って!そんなんじゃお姉さん、少年の事嫌いになっちゃうわよ?」
「黙れエセビッチ」
「何よ!処女で悪かったわね!」
そう、こいつはサキュバスのクセに処女で男性と付き合った事も無いという本当にサキュバスなのか疑いたくなるほどエセビッチなのだ
「じゃあディーバはどうしたいですか?今のところ多数決で冒険が有利です」
「おいアイリス!いつの間に多数決になった!」
オレがアイリスに文句を言うが、アイリスは聞く耳持たず
そして、アイリスに指名されたディーバは少し悩み口を開く
大丈夫だユウキ。こいつはいつもオレに賛成してきてくれる
「私はマスターと…」
ほらな!こいつは何だかんだ言ってオレの味方なんだ!
「私はマスターとセッ○スがしたいです!」
……………。
場が凍る
そしてララが口を開く
「ご指名よユウキ。行ってらっしゃい」
「何でお前は本能に忠実なんだよ!!」
結局、多数決でララとリリスの意見が採用され、オレとアイリス以外はギルドに良いクエストがないか探しに行った
「はぁ…何で金があんのにクエストに行くんだよ。」
オレは家のソファに腰掛け、ボソッと呟いた
「ユウキ、今のうちに少しでも稼いどかないと、ユウキは不幸体質なんですから、いつか借金を背負った時に困りますよ」
アイリスはオレの隣に座ってくる
「そうだけどさ、けどオレの不幸体質ってクエストに行くと借金が出るわけで、クエストに行かなきゃ良いわけじゃん!だから行く意味無いじゃん!!」
「わかりませんよ?ディーバが突然街中で魔法をぶっ放して大借金とかあるかもしれませんよ?」
こ、怖い事言うなよ
マジでありそうじゃん
「もう決めた!今日は特別にクエストに行ってやるけど、明日からは数週間は家でニートする!」
「そんな事言って、私達がピンチになれば駆けつけてくれるクセに」
お前、オレのことをスーパーマンか何かと勘違いしてないか?
オレとアイリスが、ディーバ達の帰りを待っていると
『緊急警報緊急警報!!東門近くに魔王軍の幹部と思われる者を確認!!冒険者各位は直ちに準備をし、コレの討伐を行ってください!』
突然、街中に警報が響き渡った
「……オレは行かんぞ」
っていうか、魔王軍ってそんな頻繁に攻めてこないって言ってなかったか!?何でこんなに頻度高いの?数週間前も来たよね?
「ユウキ!街の危機ですよ!?良いんですか!?」
「だってこれからクエストに行くんだろ?さぁクエストに行く準備をしようぜ!」
オレはそう言ってソファから立ち上がる
「こ、この男は……。良いから行きますよ!」
アイリスはオレの腕を掴んで、外に引っ張っていく
「いやだぁぁぁぁ!!絶対嫌だぁぁ!!お外出たくない!!」
「こ、子供ですか!!ほら早く行きますよ!」
「うぐぐぐぐ!絶対嫌だ!!」
オレは家の柱に掴まって抵抗していると
「あ!やっばり少年達、ここにいたのね!」
窓からリリスが入ってくる
「ほら、ディーバ達ももう向かってるわよ!急いで!!」
リリスもそう言って、オレを外に連れ出そうとする
「いやだぁぁぁぁ!!お外出たくないぃ!!」
オレは渾身の力を振り絞り、抵抗する
「こ、この子はどこにこんな力がッ!もう仕方ないわね!!《スリープ》!!」
リリスがスキルを唱える
するとオレの意識は…徐々に…無く…なっ…て…い…く…
「はっ!」
目を覚ますと空の上だった
「うぉ!何じゃこりゃあ!!」
「暴れないで少年!!落ちるわよ!」
どうやらリリスの浮遊魔法で飛んでるらしい
「っていうか、降ろせ!行きたくない!頼む!お願い!!降ろして下さい!!」
「……残念だけど、もう着いたわ」
リリスはそう言ってオレ達を降ろすと
「ふはははははは!!貴様達が我の最初の相手か!!」
なんか強そうな奴がいた
「我はヴァンパイア、アンデットの頂点にして不死なる者なり」
ヴァンパイアさんはわざわざポーズまでとってオレ達に言ってくる
「おい、何だあいつ。つか何であいつわざわざポーズまで取ってんの?ナルシスト入ってんの?」
「し!ユウキ聞こえますよ。アレは魔王軍で最近流行ってるのでしょうね。」
「ちょ!お姉さんも元魔王軍だけどあんな事1回もした事ないわよ!」
「そういえばリリスはやってなかったな。じゃああいつが頭おかしいだけか」
「ユウキ!!本人がカッコ良いと思ってる事をそんな風に言っちゃダメですよ!ヴァンパイアさん、今のカッコ良かったですよ!」
「見て少年達!あのヴァンパイア、何故か涙目になってるわ!あ!遂には泣き出したわよ!」
「うぅぅぅぅぅぅ!!!我だって最近はかっこ悪いかな?って思ってたもん!!でも一族の決まりでやらなきゃいけないんだよ!」
「おい、あのヴァンパイア愚痴り出したぞ」
「魔王の幹部にも色々あるのよ。お姉さん、元幹部だしわかるわ」
「へー。例えば?」
「そうねぇ…魔王からのセクハラとか酷かったわ。他のサキュバスからいつも愚痴られてたもん」
「うぇー、魔王ってそんな人なんですか?何か私、幻滅しました。」
「そうなんだよ。我も魔王にいっつもニンニクとか投げつけられてな。アレ臭いから嫌なんだよ。」
「お前も苦労してんだな。」
「おぉ!わかってくれるか!」
「あぁ…オレもな似たような苦労して来たからわかるよ」
ウチのドMリッチやエセビッチサキュバスのせいで、何度借金を背負ったか
「まぁお互い頑張って行こうぜ」
オレはヴァンパイアにそう言うと、背を向けて街の方に歩き出した。
「あぁ…お前もな。…………って違うわい!我はお前らを倒しに来たんだよ!」
ち!気づいたか…。このまま帰ってくれれば良かったのに
「いや、でもさぁ…。オレとお前じゃ争う理由無いし…」
オレがそう言うと、ヴァンパイアはふっ!と笑い
「理由ならあるさ!コレを見ろ!!!!」
ヴァンパイアがマントを翻すと、どこからか商人達が現れた。
「冒険者ってのは、市民を守る者なんだろ?なら、我と戦え!我に勝てば解放してやる!」
なるほど、そう言う事か
「あ、別に解放しなくて良いっすよ。オレ達帰るんで」
オレはヴァンパイアに背を向け歩き出す
後ろの方でヴァンパイアが「え?ちょ……!」とか言ってるが、無視だ!
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってください!ユウキ、何してるんですか?」
うわー、熱血ヒロインアイリスちゃんが来たか
「なんか用?もう帰ろうよ」
「何でですか!?商人達がヴァンパイアに襲われてんですよ!?助けなきゃ!」
「いやいや、あの人達の事オレ知らないし。助ける「さぁ、ヴァンパイア!!私が相手です!」理由なんか…っておい!何勝手な行動してんだ!」
アイリスはヴァンパイアに杖を構えて臨戦態勢に入る
ってかお前!《ヒーラー》だから攻撃スキルが無いだろ!
「アレは、テコでも動かないわよ?どうする少年?」
リリスがオレの近くにきて尋ねてくる
くそぉぉぉ!あの熱血ヒロインめ!帰ったらお仕置きだ!!
「仕方ない!アイリスとリリスは商人達を助けろ!オレがその間、コイツの相手をする!」
そんで助けたらこのヴァンパイアとはおさらばだ
「ほぅ、貴様程度に我の相手が務まると?」
ヴァンパイアは見下すように言ってくる
「やってみなきゃ、わかんないぜ?」
「ふん、ほざけ!人間風情が!」
ヴァンパイアは言うや否や突進してくる
ち!やるしかねぇ!
オレは黒い剣を抜く。まるで主人公専用の様な黒く禍々しい剣を
「ふん!」
ヴァンパイアは自分の爪を伸ばし、攻撃してくる
オレはそれを避ける
「ほう、これならどうだ!」
次は横薙ぎに攻撃してくるが、オレはまたもそれを避ける
「なかなかやるな!ではコレはどうだ!」
両手の爪を使い、はさむ様に攻撃してくるが、オレはそれを屈んで避ける
「これを避けるか!ならお次はッ!」
またも避ける
「ははは!面白いぞ!コレは…どうだ!」
避ける
「……いいぞいいぞ!お次は…!」
避ける
避ける避ける避ける避ける避ける
「攻撃してこいやぁ!!」
ヴァンパイアが動きを止めて、怒鳴ってきた
「え?何なの?回比率が凄いのはわかったから攻撃してこいや!」
ヴァンパイアは声を荒げてくる
まぁオレが攻撃しない理由は簡単で、攻撃力が無いから
だって《ビーストテイマー》だよ?
《ビーストテイマー》ってアレだよ?モンスターを捕まえて育てて戦わせる職業だからね?
どこのポケ○ントレーナーだよ。
まぁオレが魔王の幹部の攻撃を回避し続けることが出来たわけは、オレの異常な回避力の高さにある。
何故かオレは回避力だけは高いらしい。
どのくらい高いかと言うと、そこらの魔王の幹部の攻撃なら回避し続けることができるくらい。
「何なの!?我を疲れさせてそこを突こうとかそう言う作戦なの?だったら我は疲れないからさっさと攻撃してこいやぁ!」
まぁそんな事を知らないヴァンパイアは、オレに激怒してくる
オレが回避力だけの人間だと知られたら、商人達を襲い出すかもしれんしな
「…ッ!もう一度攻撃するから、次はちゃんと戦えよ!!」
ヴァンパイアはそう言って再び攻撃しだす!
アイリスとリリスは、オレの作戦?を察したらしく、商人達の介護をしていた。
もうそろそろ逃げ出すか…
「オラオラオラオラ!!」
ヴァンパイアは爪を使い、何度も攻撃してくる
オレはそれを
避ける避ける避ける避ける
「オラオラオラオラ!!」
再びヴァンパイアは攻撃するから
避ける避ける避ける避ける
「……ッ!オラオラオラオラオラオラ!!」
避ける避ける避ける避ける避ける避ける
「攻撃してこいやぁ!!」
…また切れたよコイツ
「え?何で攻撃して来ないの?え?何で?我、非常につまらないんだけど!」
そうだなぁ、あんまり避け続けると怪しまれるし
「お前など……オレの剣で斬るまでもないってことだよ」
オレは自分の出せる最高のイケボで言ってみた。
「くぅ!そ、そんなに我は雑魚いのか…?」
ヴァンパイアがショックを受けていると
「冒険者の旦那ぁ、そんな奴さっさとやっつけちゃって下さいよ!」
「そうですぜぇ!頑張って下さい!」
「やっちゃえ兄ちゃん!!」
アイリス達に助けられたらしい商人達が、オレに言ってくる
「いやいや、それはね……」
オレが適当な事を言おうとすると
「「「頑張れ!!頑張れ!!頑張れ!!」」」
オレの言葉を遮り、商人達が頑張れコールをし出す
…………。
「ふ、仕方ないなぁ。」
「「あ……やばい」」
アイリス達が後ろで何か言ってるが、無視だ
「おいヴァンパイアよ、このオレの本気、特別に見してやろう!」
「お、おぉ!遂に戦ってくれるのか!ならば我も、……行くぞッ!!」
ヴァンパイアは先ほどよりも速い速度で突っ込んでくる
しかし遅いぞ!
「《アクセル》!!」
オレはスキルを唱えると、体の速度が爆発的に速くなる
このスキルは、回避力の高い者ほど速くなるスキルで、更にオレには《ダークマナタイトソード》という物がある
この剣は、強化スキルの効果をめちゃくちゃ増加させる剣で、つまり何が言いたいかというと
「なッ!?消えッ!?」
ヴァンパイアの口からそんな声が漏れる
消えたんじゃない。オレが物凄い速さでヴァンパイアの背後に回ったんだ
しかしヴァンパイアはそれには気づかない
「《ホーリーセイバー》!!」
オレがスキルを唱えると、剣が光を纏い出す
「なっ!?いつのまに後ろに!?」
ヴァンパイアは慌てて振り向くが、もう遅い!
「食らえ!《ホーリースラッシュ》!!」
光の斬撃が、ヴァンパイア目掛けて飛んでいく
ズトォォン
という爆発音とともに、衝撃波が辺りに巻き起こる
「うぉッ!」
オレもその衝撃波に軽く吹っ飛ぶ
そしてオレは立ち上がり
「討伐完了!!」
とVサインをとる
「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!」」」
周りの商人達が歓声をあげる
こうしてオレ栗原優希の魔王討伐は始まったのだ
おしまい
「ふははははは!!!全然効かぬぞ!何だ今の一撃は!!!」
…どうやら終わってくれないらしい
ヴァンパイアは煙の中から無傷で出てくる
ですよねー。オレ何度も言うけど、攻撃スキル弱いもん
だってさっきの全部、基本スキルだもん。誰でも覚えれるやつだもん。
「何だ、ただの雑魚か…。もういい、貴様は失せろ!」
ヴァンパイアはそう言うと、手に魔力を溜め始める
ってか何あれ!?何かめっちゃ強そうなんだけど!!
「死ねぇぇぇぇ!!!」
ヴァンパイアはオレ達に向けて、魔力の塊を放ってくる
「くそ!」
オレは商人達の壁になるように立つ
別にこいつらの為に犠牲になるわけじゃない
この手は出来るだけ使いたくなかったが…
「こいドM!《サモン》!!」
「ララ様!もうすぐ見えてきまブグッ!!」
目の前に現れたディーバが、ヴァンパイアの攻撃を受けて、遠くに吹っ飛ぶ
「な、何だ!?」
突然現れたディーバに、ヴァンパイアは驚きの声を上げる
これは《ビーストテイマー》のスキル
《サモン》
例え向こうがどんな場所に居ようと、奴隷契約下にある者を、自分の目の前に呼び出せるスキル
ディーバはオレと死闘を繰り広げ、そして奴隷となったので、呼び出す事ができるのだ。
じゃあ何故それを先に使わないかって?
「ゴホッゴホッ!ディーバ…奴を…ゴホッゴホッ!………倒せ…!!」
めちゃくちゃ疲れるからだ。
まぁ普段なら、もう少し魔力があるため、こんなに酷くはならないが、つい最近まで何日もニートやってたオレは、体力がめちゃくちゃ無くなってるため、すんごい疲れるのだ
「つか、お前!先に向かったんじゃなかったのかよ!」
オレがディーバに尋ねると
「すみませんマスター!ララ様が武器を忘れたと言って取りに戻ってました!」
何じゃそりゃ
「き、貴様ディーバか?何故ここにいる?どうして人間側についている!?」
どうやらヴァンパイアはディーバを知ってるらしい
「ディーバ!知り合いだからって手加減すんな!奴をぶっ殺せ!!」
「はいマスター!私、マスター以外の男に興味無いんで!……私、マスター以外の男に興味無いんで!!」
…何故2回も言った
「食らいなさい、哀れなヴァンパイアよ」
ディーバは杖に魔力を溜めていく
こいつはリッチで元魔王軍の幹部だ
しかし幹部にまでなった理由はリッチだからでは無い。
その理由は
「吹き飛ばせ!《ウイングブラスト》!!」
こいつが最強の魔法使いだからだ!
巨大な竜巻がヴァンパイアを襲う
「グァァァァァァァァァァァァ!!!」
ヴァンパイアは竜巻に飲まれ、断末魔を上げる
そしてその竜巻は…
「おいおいおい!!ディーバ強すぎだ!おいもう止めろ!おい!聞いて…うぉわぁー!」
オレも風に吹き飛ばされる
たまたま近くにあった岩にしがみつく
こいつ、オレが杖を買ってから、更に魔法の威力高くなってないか!?
「ディーバもう止めろ!おい!お願い!もうやめてください!!……うわ!岩が浮き出した!ヒィィィィ!!」
オレは竜巻に飲まれていった
「……キ!大丈夫ですか!?ユウキ!!」
「はっ!」
目を開けると、そこには涙目のアイリス達がいた。
「良かった!気づきましたか!私の《ヒール》で手当てしたとは言え、酷いことになってましたからね…」
「ど、どうなってんだ?」
オレは体を起こしながらアイリスに尋ねる
「……聞かないほうが良いと思います」
本当にどうなってたんだ!?
「ふぁふふぁー!!ふぁいふぃふふぁふぁー!!ふぁふふぇふぇふふぁふぁいー!」
何か土から足が生えた奇妙な物が声を出していた
「アレは?」
「土に埋まったディーバです。助けますか?」
「いや、後5年くらいしたら助けてやるよ。それまでのお別れだディーバ」
「ふぉふぃふぃふぉー、ふぁふふぁー!!」
「少年、『ご慈悲よー、マスター!!』と言っているわ」
よくわかるな、リリス
「オレをこんな目に合わせた罰だ。5年とは言わないが、1週間はそうしとけ。」
リッチだから不死だし、1週間ぐらい余裕だろ。
「ーーさすがはディーバだ。今のは死ぬかと思ったぞ!!」
背後から声がし、振り向くとヴァンパイアが煙の中から出てきた。
「おいおい無傷ってどういうことだよ!」
「少年、ヴァンパイアに物理攻撃や普通の魔法は効かないわ」
それを先に言えリリス
「アイリス!お前の浄化魔法であいつを倒せるか!?」
「む、無理ですよ!ヴァンパイア相手に私の浄化魔法が効くわけ無いじゃないですか!」
くそ!仕方ねぇ!
「おいディーバを掘り起こせ!こいつを盾にしてオレ達は逃げるぞ!」
「させると思うか?《スラッシュ》!!」
ヴァンパイアが斬撃を飛ばしてくる
「グアッ!!」
直撃はしなかったものの、その衝撃にオレ達は吹っ飛ぶ
く、くそ…まずいぞコレ…
「さて、どいつから殺してやろうか」
ヴァンパイアはオレ達を見回し、ターゲットを選んでいる
どうする?もう1度、《サモン》でディーバを土から出すか?
いやオレにそんな魔力はもう残ってない!
くそ!どうする!
「そこまでよ!みんな私が来たからには大丈夫よ!!」
オレが考えてると、背後から声がかかる
振り返るとそこには
「ララッ!!」
剣を構えたララがいた。
いや、けどコイツが来たからといって…
「ララ、あいつには物理攻撃は効かねぇ!だからそんな剣、意味無いんだ!」
「えぇ!?そんな相手をどうやって倒すのよ!?」
いやオレに聞かれても……いや、1つ方法があるぞ!
「ララ!『聖剣』を出せ!オレが許可する!」
「え!?でもアレって!」
『聖剣』と言うのは『聖剣エクスカリバー』の事で
かつてララと特級クエストに行った時に、たまたまララが所有者に選ばれて、手に入れたのだ。
なら、それを早く使えよ。と言いたいだろうか、コレには1つオレ達にしか無い弱点があって
『聖剣』の効力はすごい。
どのくらい凄いかと言うと、敵も味方も関係なく浄化する
つまり、ーーディーバやリリスすらも浄化の対象となる
「構わん!戦いに犠牲はつきものだ!」
オレがそう言うとリリスが悲鳴をあげる
「いやぁぁあぁぁぁぁ!!!待って待って少年!私死んじゃうわよ!」
「お前は浮遊魔法で今すぐ逃げろ!」
「マ、マスター!!わ、私はどうなるんですか!!」
いつの間にか、土から出たディーバがオレに言ってくる
「お前は……知らん!さっきの罰だ!!ドMなんだから喜べ!」
「浄化は気持ちよく無いんですゥゥゥゥ!!」
ディーバは子供が駄々をこねるように騒ぎ出す
知るかそんなもん。
「やれ!ララ!このままじゃオレ達もヴァンパイアに殺されるぞ!」
「あぁ!もう!どうなっても知らないからね!」
ララはそう言って、『聖剣』を抜き、構える
するとディーバが静かになる
「………………カァ…」
あれ!?もう浄化されてる!?
「お、おいその剣!!!!まさか!?」
お、どうやらヴァンパイアも気づいたらしい
「食らいなさいヴァンパイア!」
ララは『聖剣』に魔力を溜める
「ま、待て!我の負けだ!今日のところはここら辺で引き上げるとする!!」
ヴァンパイアは両手を挙げ、降参のポーズをとる
「食らえ《エクスカリバー》!!」
まぁララが、そんな事したって見逃すわけが無い
『聖剣』の特殊スキル《エクスカリバー》をララは発動する
光の波がヴァンパイアを襲う
「ガァァァァァァァァァァァ!!!」
ヴァンパイアは光に包まれ、断末魔を上げる
そしてーー
光が消えると、ヴァンパイアの姿も跡形もなく消える
「討伐完了!!」
ララはVサインをとってオレに言ってくる
「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!」」」
ララは商人達の大歓声を浴びた
「ユウキ!リリスが!!」
アイリスがオレ達を呼ぶので駆けつけるとそこには
「……川が…見えるわ…」
ふやけたリリスがいた
こいつ、逃げきれなかったのか…
「おいリリス、その川は渡っちゃダメな川だからな」
ん?待てよ。逃げたリリスがこれって事は、あいつはどうなったんだ。
辺りを見渡すと、何か遠くの方に……あった
駆けつけるとそこには
「………ァァ………ァァ…!」
めちゃくちゃ透明になったディーバらしきものがあった。
あ、これ助からないかも。
「ユウキ、どうしよう!!ディーバ死んじゃうよ!」
ララもオレと同じことを思ったらしく、オレに声をかけてくる
「……気にすんなララ。戦いに犠牲はつきものだ。」
「…………ァァ…!!」
何か言いたいらしいが、喋る体力すら無いらしい
オレ達がディーバ達の介護をしていると
「あの……」
と商人達が声をかけてきた
「ん?何ですか?」
「あの、今回の事でお話が…」
あぁ、そう言うことか
「あぁ別にお礼なら良いですよ?ボランティアみたいなものですし」
つか、ギルドから後で特別報酬が貰えると思うし
オレが商人達に言うと、商人達は渋い顔をする
どうやらお礼では無いらしい
「あの…大変申し上げにくいのですが…」
あ、オレこの展開知ってるわ
「……弁償ですね?」
「はい…」
もはや弁償のエキスパートとなったオレは、商人達よりも先に言う
「先ほどの風魔法で馬車の中身が全部ダメになってしまって…」
また、このディーバかよ!オレ、お前のためにいくら払えば良いんだよ!
「100万くらいですか?」
まぁ全財産1億2000万あるオレにとっては些細な問題では無い
くそ!ちょっと外出しただけで損害賠償求められるとか、明日からは暫く家にニートしてよう…
「いえ……その…あの中身はユーフェリア様への贈り物でして…」
ユーフェリア様というのは、帝都に住むお姫様の事だ
なるほど、つまり
「1000万とか?」
もしくは何千万とかいったのか!?
「いえ、その……あの中は貴族様からユーフェリア様への贈り物で、高価な壺や酒など入っておりまして」
おいおいまさか!
「合計が1億3000万ほどなんですが…」
オレの全財産、1億2000万。
損害賠償1億3000万
つまり借金が1000万
「うわー」
隣にいるララがドン引きの声を上げる
これは商人達に引いてるわけでは無い
オレの不幸体質にドン引きしてるのだ
「あの、これ赤切手です。」
と言って、商人は赤い切手を渡してくる
赤切手とは、お前の損害賠償金額はコレだ!と書いてある紙の事だ
「はははははは…」
オレの口から乾いた笑い声が出る
何だよ
幹部倒しに、街を救いに外に出かけたら、1億もあった全財産が消えて、1000万の借金背負っちゃったよ。
どこの世界の勇者に、魔王の幹部倒して借金背負う勇者がいるんだよ!
やっぱりこの世界はクソゲーだ!
超がつくほどクソゲーだ!
「ユウキ、私達も明日からは一緒に冒険に出ますから………泣かないで?」
アイリスがオレの肩に手を置き、言ってくる
どうやらオレは泣いてたらしい
くそ、何だよ!最近運が回ってきたかと思ったらコレかよ!
オレは心の中で思っ切り叫んだ
こんなクソゲー(異世界)は間違っている‼︎
こうして、オレの冒険は再び始まった。