Entrance 1
初めまして。今作が初となる作品です。私自身この話が無事完結する事を願いつつ今書いていますが、何か疑問に思った事や改善点等がありましたら、遠慮せずに書いて頂ければ幸いです。解答の方は後書きで書きたいと思います。正直な話、次いつ書けるのかは未だに未定です。ですが、それでも温かい目で見ていただければ私としては感無量です。それでは、お楽しみ下さい!!
男は静かに、しかし足早に階段を駆け上がっている。年齢と見た目からだというべきかお世辞にも機敏とまでは言えない。しかし、明らかに急いでいるのだけは明白である。
やっとの思いで、屋上への扉に着いたらしく、普段なら閉まっているはずの屋上への鍵が開いている事でさえ不信感を持たず慌ただしく男は扉を一気に開けた。先程まで、雪が降っていたのだが今ではにわか雨に変わっていた。だが、彼はその事にも見向きもせず白い息を不規則に弾ませながら自身の何年も使い少し剥げかかった銀の腕時計を見た。
午前2時32分。予定より8分程速いが速いに越したことは無い。男の職業である理事長という立場の手前、生徒に模倣を見せるのは当たり前と男は考えており、時間厳守もその内の一つであった。
しかし、約束の時刻は午前3時30分であるので男が考えていた時間とはかなりずれているくせにその事を認識していない点ではかなり異常であるのを物語っている。更には、男自身一体誰に呼ばれたのか全く皆無で、不気味な強迫観念に駆られて此処に慌てて来たのである。
正確には全く皆無というのは嘘である。この大学にいる人なら誰でも買える紙に『午前3時30分にこの大学の屋上で、話したい事があります。誰にも見つからずに来て下さい。』という文章が理事長室に置いてあったからである。発見したのは午後1時の事ではあったのだが、今では遠い昔の事に思えていた。
屋上には女子生徒と思われる人が一人フェンス越しに寝静まった夜の校舎を見下ろしていた。
恐らく手紙の内容からは何も内容について掴めなかったが男は長年の経験からこの女子生徒が自殺しようと思ってはいるのだが自分が生きた証を誰かの目に焼き付けて欲しいのかそれとも止めて欲しいのかもしれない。いずれにせよ男は止めなければならないと思い女子生徒に近づいていった。
「ちょっと、君。こんな寒い日に外にいると風邪を引くぞ。」と男が声をかけた。
その声に反応して女子生徒が振り返った。