第六の噂。
厨二臭くなってきたのは気にしない方向でお願いします。
塀に衝突したドッペルゲンガーは
ずるずると、這いずって起き上がった。
そして。
「ふ、ふ、あはははははは!」
笑って、 嗤う。
まるで、探し求めた恋人を
やっと見つけたかのように。
「ばっとぉ……いぃぃたぁぁぁ……
みぃーつけたぁぁぁぁ!」
奇妙な叫び声とともに襲ってくるドッペルゲンガーにも
いつも通りの無表情で、相対する白夜。
突き出された爪を
回転することで避け、カウンターを叩き込む。
首筋に、心臓に、鳩尾に。
人体急所だけを、確実に狙って。
ドッペルゲンガーの攻撃は、一撃も当たらない。
……なんか、俺は場違いな気がする。
目の前で起こる、舞踏のような戦闘を
黙って見つめながら、そう思った。
だが同様に、違和感もある。
普段なら、最初の一撃
ーー飛び降りて踏み潰した時点でーー
この件は終了していただろう。
愚者暴食とは
そういう能力なのだから。
わざと長引かせている
……とは思えないけれど。
「……本当、手間のかかる超能力ですね」
ドッペルゲンガーから距離をとって
俺の隣に立つと、白夜は珍しくため息を吐いた。
「お前の能力、効いてないのか?」
「……届いてない、んだと思います。
『偽装鎧』、いわゆるドッペルゲンガーは『鎧で偽装する能力』です。今も、鎧を着ることで先輩の姿に偽装しています。
残念なことに、私の能力は直接触れなきゃ効果がありませんから。
あの鎧を、先に壊さなきゃ駄目ですね」
「……よくわからないけど、壊せそうか?」
「さぁ、どうでしょうね?
これでも、か弱い女の子ですし」
呻くドッペルゲンガーを前にして
自身の両頬に、無表情で人差し指を当てる白夜。
なんか逆に怖い。
「ん、じゃあ
クロイツさん達が来るのを
待つしかないのか」
「いえ、すぐに片付けます」
「っても、どうする気だよ」
そう言って、白夜は急に白衣を脱ぎ出した。
さらに制服のリボンを緩め、呟く。
「全部脱いじゃいましょうか」
俺は、一瞬言葉の意味がわからなかった。
「は?……っ!?」
「……先輩って、意外と純情ですね」
「、誰だって驚くだろ。
ドッペルゲンガーの話から、なんで脱衣になるんだよ」
「あぁ、安心して下さい。からかっただけですから」
俺に脱いだ白衣を手渡して
白夜は
ーーくすり、と小さく笑みを浮かべる。
凍るように、冷たい笑みを。
「では、いきます。
ドッペルゲンガーさん」
そこからは、圧倒的だった。
先程のように、技術任せの闘い方ではなく
単純に力で押し切っている。
反撃する暇を与えず
白夜は、ドッペルゲンガーを蹂躙していった。
自分と同じ姿の奴がボコボコにされているのを見るのは
……なんとも複雑な気分だ。
ドッペルゲンガー編も、残り僅かです。