第五の噂。
ドッペルゲンガーって実際いたら怖くないですか?
「ドッペルゲンガーが目撃された場所の近くを、ウロウロしてれば出てくるんじゃない?」
そんな、根拠もなにもない理論に従って
俺は現場付近をうろついていた。
『白衣の学生が、住宅地を徘徊』
……軽く通報されそうな絵面だ。
もし警察来たら、全部クロイツさんの所為にしよう。
そう思いながら、一歩前に進んだ時だった。
こつり。と。
一瞬遅れて、聞こえた足音。
後ろに、誰かいるような、いないような
ーーーー超能力者がいたときに、いつも感じる感覚。
嫌な汗が背中を伝う。
……振り返っちゃ、駄目なんだっけ?
気づいていることがバレないように
平静を装って歩き続ける。
相変わらず、俺が一歩進むたびに
後ろにいる奴も一歩進む。
プレッシャーをかけられている気分だ。
気持ちが悪い。
予定だと、この先の公園で皆が待ち伏せているはずなのだが……
それまでに襲われたらどうするんだろうか。
多分、クロイツさんはその辺想定していない。
……また、鬼ごっこしろと?
緊張を吐き出すように、ため息を吐く。
常について来る足音。
ーーだから。
ドッペルゲンガーは、後ろにいるのだと
思い込んでしまっていた。
ピタリと、足音が止まって。
俺は、反射的に振り返る。
案の定、そこには誰もいない。
ただ、代わりに前方からーー
「貴方はだぁれ?」
ゆらゆら揺れる、人影が。
全体的に色が暗いのを除けば
他は全て、俺と瓜二つだ。
「あナタは、ダぁれ、?」
狂ったように繰り返す人影に
『こいつは、危険だ』と、頭の中で警鐘が鳴る。
一歩だけ、後ずさった。
だけど
あちらは、もうこんな
駆け引きなんてするつもりはないらしい。
「あ、アアアなたはぁ、だァレぇぇぇ!」
「ーーっつ!」
両手を大きく振りかぶり
それと同時に、飛びかかってくる。
血走った目は、俺だけを見据えていた。
もはや体は動いてくれない。
殺されると、人生で初めて思う。
超能力『者』ということは
こいつも人間なのだろうけど。
人間が素手で、人を引き裂けるとは
考えられないけど。
でも、きっと、このままだと、死ぬ。
そう、思ったのだが。
「I'm a Bad Eater」
発音の良い英語で名乗りを上げて
何処からか飛び降りてきた白夜が
飛び上がったドッペルゲンガーの背を踏み潰した。
ぐしゃりと地面に叩きつけられたドッペルゲンガー。
その体を、再び白夜が蹴り飛ばす。
「覚えなくて結構ですよ、ドッペルゲンガーさん」
夕暮れ時の住宅地に
凛とした、白夜の声が響き渡った。
英語は適当です。
間違っていたらご指摘下さい。