第四の噂。
本題にはいります!
翌日。
「先輩、楽しい楽しい部活の時間です」
HR直後、全然楽しくなさそうな表情で
白夜が俺を迎えにきた。
静まり返る教室内。
まだちらほらと残っていたクラスメイト達の
『藍谷の彼女?』という呟きが聞こえてくる。
……断じて、違う。
だが、どこのクラスにも
空気を読まない奴は一定数いるもので。
「おい禊音ー、何、お前の彼女?」
「へー、意外。藍谷君彼女居たんだ〜」
そいつらは堂々と、シャレにならないことを言い放った。
ちょっと待てお前ら。
後で責任とれよ?
「違います。私と先輩は、恋人ではありません」
きっぱりと訂正してくれた白夜に、内心感謝した。
ここまで言われれば、変な噂は広がらないだろう。
と、思ったのが間違いだった。
「私と先輩は……婚約者ですから」
…………初耳だな。
つーか、あるわけないだろそんな設定!
「……いつから俺たちは婚約者になったんだ?白夜」
「 10年前、別荘で」
「別荘なんか行った事ないけどな」
まず出会ってすらいない。
一気にざわめき出すクラスメイト達。
これは、多分手遅れだ。
余計なことを言わないよう、俺は白夜を連れて教室から退散した。
部室にて。
「え、えぇ……?どうしたの、禊音」
「なんか、色々と疲れた……」
明日からどんな顔して登校すればいいんだ、俺は。
婚約者とか痛すぎる。
もう帰りたい気分だが、クロイツさんのやけに明るい声がそれを許してくれなかった。
「さて、今日はねぇー。
『ドッペルゲンガー』っていう都市伝説についてやるんだけど、聞いたことある?」
ドッペルゲンガー。
かなりメジャーな都市伝説だったはずだ。
「自分と同じ姿の人間が現れる現象。
諸説あるけど、基本的に見た人は死ぬらしいね」
芥川龍之介とかリンカーン大統領とかが
見たんだって。
そう言い終ると、クロイツさんは立ち上がった。
「で、最近この辺で暴れてくれちゃってるドッペルゲンガー君を退治するのが、今日の活動」
「……クロ、そんな簡単に出てくるものなのか?ドッペルゲンガーって」
次に口を開いたのは、レナさん。
もっともな意見だ。
退治……といっても、先日の『狼男』のように
決まった時間に出てくるものとは違う。
ドッペルゲンガーに、規則性があるとは思えない。
だけど。
この先の展開は、わかりきっている。
「大丈夫、俺たちには優秀な『囮』がいるじゃないか〜。ねぇ、禊音君」
次回から『ドッペルゲンガー編』開始です。