人材という名の、戦力。
お仕置きタイム開始。
「先輩、部長」
千草涼成さんが逃げ込んだ居間に向かう途中
パソコンは見つかったのか、白夜が追いかけて来た。
白夜の表情は、少しだけ悲しそうに見える。
クロイツさんもそれに気付いたのか
何も言わず、居間を目指した。
「ここだね」
目で『開けろ』と合図され
俺がドアを開けると。
千草涼成が、包丁を持って立っていた。
レナさんが、脅し過ぎたんだろう。
彼の目には明らかな恐怖が浮かんでいる。
「お前達……誰なんだよ……
何故、俺を」
すると、クロイツさんが肘で俺をつつき
「禊音、自己しょーかい」
「えぇ!?俺ですか?」
「うん」
とんでもない無茶振りをかましてきた。
散々暴れといて(主にレナさんがだけど)
それはなくないか?
「普通、クロイツさんがやるもんでしょう?ほら、部長なんだし」
「禊音がやった方が面白いじゃん」
たち悪いな!
「早く」
「え、えぇ……?
えっと、噂噺研究部です……?」
「、まぁいっか。
そういうことだから、大人しくーーーー
ボコられてね?☆」
にっこりとクロイツさんが微笑めば
千草涼成さんは二・三歩後ずさる。
そう、ここからがこの人の本領だ。
なんせ、人を脅すことにかけては天才的なのだから。
「二人は少しの間、外に出ててね?
色々とほら……見ない方がいいと思うし」
「……クロイツさん、相手包丁持ってますけど」
「……ちょっと、危ないと思いますが」
「あのさぁ……」
ふぅ、と
わざとらしく溜息を吐き、クロイツさんは振り返る。
包丁持ってる人と二人きりって
普通に、止める状況じゃないのか?
「白夜ちゃんも禊音も、俺たちのこと甘く見過ぎなんだよ。
確かに、今は子供らしく高校生なんてやってるけどさー
ーーーー昔、国一つ滅ぼした人材だぜ?」
器用に口角だけを上げて笑うクロイツさんに
俺と白夜は顔を見合わせ
さっさと部屋を出てドアを閉めた。
失敗。
心配するのは、涼成の身の安全だったかもしれない。
がぁん。
何かが倒れる音と
人体が床に叩きつけられる音。
そして、クロイツさんの楽しそうな声がドア越しに聞こえてきて
隣にいる白夜の肩がびくりと揺れた。
「痛かったら右手を上げて下さいねー☆」
「ぎゃあああああああ!?右手、右手折れるって!」
「あ、折って欲しいんですか?☆」
「傷害罪で訴えるぞ貴様ら!」
「いちいちうっせーんだよ。
黙ってろ虐待野郎☆」
「痛い痛い痛い痛い!!
ごめんなさいごめんなさい!」
「『ナメた口利いてごめんなさい』だろ?☆」
「鬼いいいいい!!」
……もうどっちが悪役かわかんないな。
涼成さんは許せる人ではないけれど
せめて精神が無事でいることを願った。




