第十二の噂。
最近猫ネタ多いですね。
「はぁ……」
あれからかなり時間が過ぎたが
三毛猫は一匹も見つからない。
……黒猫とかトラ猫ならいるんだけどな。
通りすがりの人にチラシを渡してみても
皆首を傾げて去って行く。
「禊音ー、溜息吐いたら幸せ逃げるぞ?
ちゃっちゃと探せー」
「はーい……」
この時間帯は、街に学生が増える。
丁度下校時間なのだ。
喫茶店だったり、カラオケだったり
行くところもやることも有り余っている。
そんな中で、ひたすら担任の先生の猫を探すっていうのは、色々とキツイ。
主に、他人の視線が。
まぁ、文句を言っても仕方が無いし
今頃クロイツさんのお仕置きを受けているであろう、幸樹よりは断然マシだ。
そう思い直し、何と無く側にあった
ゴミ箱の蓋を開けて見る。
当然のように、三毛猫はいなかった。
……そりゃそうだ。
静かに蓋を閉め、二度目の溜息を吐く。
空が赤く色付いてきたから
もうすぐ日が暮れるだろう。
昼間から探しているというのに、猫はまだ見つからない。
……『家に帰ってましたー』ってオチはないよな?
少しだけ不安感を感じつつ、空を見上げた途端
唐突に、ポケット中で携帯電話が震えた。
いやいや、それはないよな。
まさか本当に家に帰ってたとか、ありえないだろう。
流石にそれは。
画面に写るのは、『伊藤先生』という四文字。
…………。
とりあえず、通話ボタンを押すことにした。
「もしもし」
「あぁ、藍谷か!実は、みぃちゃんが」
「……大の大人が『みぃちゃん』とか言わないで下さいよ」
「家に帰って来てたんだ!!」
「え、」
「いやー、猫にも帰巣本能とかあるんだなー!良かった、良かっ」
プツン。
俺は何も言わずに通話を終え
振り返って、後方にいる白夜とレナさんに向かって声を上げた。
「猫、いたそうです」
「ま、まぁ。詳しい事は明日、伊藤先生本人に聞こう。今日はここで解散だ。
お疲れ様、禊音。白夜」
苛立ち混じりにそう言って、レナさんは学校の方へと帰っていった。
この後伊藤先生には、手厚い制裁が下ることだろう。
レナさんは怒らせると怖い。
ふと、幸樹とクロイツさんの事が頭をよぎったが、無理矢理追い払った。
巻き添えだけは勘弁したい。
帰り道真逆のはずなのに何故かついて来る(多分暇なんだろう)白夜とともに
『夕焼け小焼け』のメロディが響きわたる街中を、俺の住んでいるマンションに向かって歩き出した。
次回から物語の中心に入りまーす。




