第十一の噂。
じゅういち、って嫌な数字ですねぇ。
割り切れない……
「今日は、重要な仕事があるんだよ」
さっきまで爆笑していたくせに
急に真剣な表情をして、クロイツさんは言う。
残念なことに、信憑性はない。
「クロ……
あれって重要な仕事なのか?」
多分、大した仕事じゃない。
そんな緊張感皆無の空間で
クロイツさんだけが、至って真面目に
話を続けたけれど
「で、仕事の内容はーーーーーー」
「猫探し☆」
「「え?」」
やっぱり大したことなかった。
『猫探し』
……売れない探偵のイメージしかないな。
都市伝説どころか、噂話すら無関係。
「え、えぇっとぉ……
なんで、そんなことに……?」
「何ー?幸樹、それ聞いちゃう?」
腹黒い笑みを浮かべたクロイツさんから
幸樹は涙目で逃げる。
だがすぐに捕まって
ヘッドロックを極められた。
……何をやってんだか。
「く、苦しい、苦しいですクロイツさん……!」
「んー?聞こえないなぁ」
俺だってやりたくないよ。
そう言って、クロイツさんは溜め息をこぼす。
「伊藤先生(現国教師 32歳独身)に頼まれたんだ。『飼い猫が逃げたから探してくれ』って。あんなのでも一応顧問だし
断る訳にもいかなくてね……」
『みぃちゃん。メスの三毛猫。
三歳。』
そして写真の貼られた、おそらくレナさん特製であろうチラシを渡された。
一人2〜30枚はある。
つまり、これ配って、探せと。
「まぁ、適当に配ればいいと思う」
言っちゃったよ。
「俺も出るから、さっさと終わらせよう。
……あ、でも幸樹にお仕置きしなくちゃねぇ?」
「ひぃぃ!?
ご、ごめんなさいごめんなさいぃぃ!」
ズルズルと引きづられていく幸樹を哀れんでいると、隣で白夜が合掌しているのが見えた。
……頑張れ、幸樹。
無事に帰って来いよ。
俺とレナさんと白夜は、チラシを手に
黙って部室を出る。
……ていうか、校外に出ないと意味ないな。
猫はお好きですか?




