第十の噂。
ほんの少しだけラブコメ要素が。
なんとなく重い体を引きずって、部室へ向かう。
あんな夢を見たせいか、食欲も湧かなかった。
二度寝したい気分。
部室に着いたら寝ようか、と半ば本気で思った。
白夜とかクロイツさんが居るから、安眠は期待出来ないけれど。
「はぁ……」
思わずため息をこぼしながら
ゆっくりとドアを開けたーーーーら。
腹部に何かが突っ込んできて
視界が傾いた。
体を支えきれず、そのまま床へ。
そして
気づいた時には、頭を打ち付けていた。
鈍 痛 。
「痛っ……!」
「先輩、危ないですよ?避けないと」
「分かってるならやめろよ……」
痛む頭を押さえて、悶絶する。
受け身も出来ずに打ち付けたせいか
めちゃくちゃ痛い。
頬を両手で抱えられて、渋々目を開けると
視界に入ったのは
『緋』と『白』。
ぼんやりと、今の状況を把握する。
そうか。
俺は、白夜に押し倒されて。
ーーいやいや。
なんだ、この状況は。
「おい、何してんだお前」
「わかりませんか?襲っているんです」
……は?
白夜はするりと俺の首に手を回し
耳元に顔を寄せ
体を押し付けて
こういうことです、と囁いた。
部室から丸見えだったのだろう。
幸樹の焦った声と
レナさんの制止の声が重なって聞こえる。
……ちょっと待て。
頼むから待て。
反射的に、白夜の体を押しのけた。
本当、もうダメだこいつ。
「冗談だったんですけど」
「笑えない冗談だな」
何故俺が後輩にセクハラされなきゃならないのか。
まったく意味がわからない。
無理矢理体を起こし
まだ上に乗っている白夜の頭を、ぺちりと叩く。
超能力者相手に力の加減を忘れなかっただけ褒めてもらいたい。
まぁ、もともと腕力は弱いんだけれど。
ゆっくり降りながら、白夜が言う。
「女の子叩いちゃ駄目なんですよ?」
「平然と『襲う』とか言うのか?女子は」
とりあえず、さっきから笑いを堪えているクロイツさんに復讐しよう。
立ち上がるのと同時に、そう思った。




