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5分後、ミナを含む貴女全員がローズを先頭にしてアンナの部屋へと向かっていた。
長い長い回廊を進む。柱の間から差し込んでくる日差しはない。どんよりとした曇天だった。
どうせアンナが死んでも私には関係ないわ、と先頭のローズが笑っていた。
鉄の兜を持った騎士達が通りすがった。これから戦に向かうのだ。隣国と紛争が起こったらしい。
庭園では噴水の水柱の上で烏共が円を成して飛んでいた。小鳥のさえずりも聞こえない。
貴女達の足音と噴水の五月蠅しい水音だけが聞こえる。
「さて、着きましたわよ」ローズは言った。華やかな装飾を施された扉が貴女達の前に現れた。アンナの部屋だ。
「アンナ、朝食の時間ですわよ?」ローズを筆頭に貴女達が扉にノックを始める。やはり、皆笑いながら、だ。まるで檻の中で自由を媚びる狂人の様だ。
その狂騒を後ろで震え見るミナとその友人ラミア。地獄を見ているようで気が狂いそうだった。狂っているわ、あの人達は皆悪魔よ、とラミアは呟いた。
「扉を開けましょう」とローズが叫んだ。
すると、貴女達は猛獣の如く躯を扉にぶつけ始め、狂騒は一層の激しさを増した。