16
何時間経っただろうか、いや、十何時間経っただろうか。夜を越え、朝が来た。静寂の中、外で小鳥が淋しくさえずっていた。
一睡もしておらず、意識も混濁しているミナはよろめく足取りでローズの死体を踏み越えて、扉へ向かう。扉の向こうからは何も聞こえない。覗き穴から覗いても、何も変わった物は見えない。
安堵しながらも、おそるおそる扉を開け、回廊に出る。
すると、閉まった扉のすぐ横にアンナが居た。その側にはハインクの首が転がっていた。
「ずぅぅぅぅぅっっっっと待ってたのよよよ、あっああ貴女の事。きっかかり二十三時間。長かったぁあぁ」ハインクの臓物が絡みついた短剣とレイピアを手に、ミナに近づく。「ああああたし頭も悪いし、不器用だし、あたしがおおお姫様になるにはははみぃぃぃんな殺すしかなかったの。ねねねねぇ、見て」
アンナが指さした方を見る。長い回廊に続く死体の山。貴女、召使い、メイド、執事、この城の人間全てを皆殺しにしたアンナは体を痙攣させるほどに笑った。「あっちも死んでる、こっちも死んでる、みぃぃぃいぃんな死んでる!!!ああぁぁあぁあぁああああぁぁあああぁあははぁはあははははぁはぁはあははぁはぁ!!!」