15/19
15
ミナは信じられない異臭の中、震えながらベッドで丸まっていた。血が止まらない傷口の周りを懸命に握る。
部屋の真ん中にローズの死体が捨てられていたのだ。首と胴体は分断され、それぞれ血の海の中で横たわっていた。目玉がくり貫かれ、顎を舌ごと斬り裂かれた首。腸がはらわたから引き出され、心臓が暴かれた胴体。酷い異臭を放つ。窓から死体を放り捨てたかったが、無駄だった。部屋の全ての窓に何重もの木の板が打ち付けられていたのだ。手で剥がそうとしたが、逆に自らの爪が剥がれてしまい、断念した。
凄まじい恐怖感、絶望感。気が狂いそうだった。発狂しそうだった。五感がおかしくなりそうだった。脳味噌が潰れてしまいそうだった。
気が気でない、半ば気狂いのミナはひたすらベッドで待ち続けていた。
ハインクの帰還と地獄の終止符を。