ショートケーキのいちごは最後に食べる
私はショートケーキのいちごは最後に食べる。最後に楽しみをとっておくのだ。
「そんなことして、誰かにいちごを食べられても知らないよ?」
いいのだ。私は、いちごを最後に食べる。楽しみは、最後にあると思えるから、今を乗り越えられる。たとえ最後にいちごが残っていなかったとしても、きっと最後には楽しみが待ってると信じてなきゃやってられない。そうでしょ? そうじゃなきゃ、人生なんて、希望も何もないんだよ。
およそn回目のマッチングアプリのデート。こいつはなし。出会って三秒でなし。ハキハキしてないし、私服もダサい。次、次だな。
この、なしと決まってからの会話がきついんだよな。
「好きな趣味は、なんですか?」
マッチングアプリで男探しです……とは言えないから、音楽を聴くことですと無難に返す。いや、もうこいつには正直に答えてもよかったかもな。
「あ、あの、僕、マッチングしたの初めてで……」
「ああ、そうなんですね。私はもうn回目……、じゃなくて、まあ、何回かあるんですけど、なかなかいい人に巡り会えなくって」
「すごいです。たくさんの人に会うって、すごく神経使うことなのに、挑戦し続けてるの。かっこいいと思います」
「……ありがとう、ございます」
なんか、意外。すごい、優しい人だった。そんなこと言われたことない。ずっと早く結婚しろよって。理想高すぎって、言われるばかりだったのに。
「あの、ショートケーキのいちごは最後に食べますか? それとも最初?」
「と、唐突ですね……! えぇ? うーん、今までは最後に食べてたんですけど……。今食べるなら最初かなって」
「最初に、いちごが、出てきたので」
あ、告白された、っぽい。私も、ついにいちごを、食べることにした。




