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9話 魔力の流れ!

レフィルさんの案内で、私、アレル、タックル、エレインの四人はギルドの裏口から、地下への階段を降りていく。

ランプの仄暗い明かりに照らされた階段を降りていくと、金属製の大きな扉があった。

レフィルさんが短杖を軽く振ると、ギギギと軋む音がして、扉が両側に開いていく。


「今日から、ここがセツナ君の訓練場だ」

「ギルドの下に、こんな場所があるなんて知らないぞ」

「この訓練場を知っているのはB級以上の冒険者だけさ。一般には内緒にしているんだ」

「どうして?」

「A級とB級が摸擬戦すると聞いたら、冒険者達は見物したがるだろ。周囲で騒がれたら訓練にならないからね」

「奴等なら賭け事も始めそうだな」


レフィルさんの話に、アレルも納得する。

あれ? B級冒険者って?


エレインの方へ顔を向けると、彼女は腰に両手を当てて胸を張った。


「C級冒険者のアレルが地下訓練場を知らないのは当然ですわ。私はここで訓練したことはありますけど」

「すぐに追い越してやるから待ってろ!」

「その時は私はA級、もしくはS級になっていますわね」

「俺だって負けないんだからな!」

「おチビもせいぜい頑張んなさい」


エレインの煽りに、タックルがムキッと額に青筋を立てる。

その姿がとても可愛い。


ほのぼのした気持ちで皆の様子を眺めていると、レフィルさんが指をパチンと鳴らす。


「今日はセレナ君のための訓練だ。皆も協力するように」

「それで何を手伝えばいいんだ?」

「タックルと、アレルは身体強化を見せてあげてほしい。エレインは精度の高い魔法を披露してあげて」

「ギルマスは?」

「もちろん、僕が直々に武芸も魔法も教える予定さ。ある程度、セツナ君が理解できたら、君達と対戦してもらうことになる。それまで体を温めて準備を整えていてほしい」


レフィルさんの指示に、三人は大きく頷いた。

するとタックルが大きく片手をあげる。


「俺から身体強化を見せてやる」


タックルは元気いっぱいに訓練場の端まで駆けていく。

そして体を翻し、ニヤリと頬を笑う。


「俺の速度を目で終えたら大したもんだ」


身体強化といえば、魔力を体中に循環させて強化する魔法かな?

黙ったまま観察していると、タックルの体から何かが溢れだしたように見える。

そして大きく深呼吸して走り出した。

彼の体が何重にもブレ始め、転々と姿を現して駆けてくる。


短距離転移? それとも瞬間移動?

それなら身体強化とは言わない。


とにかく集中して観察しなくちゃ……私の訓練なんだから。

一瞬驚いたけど、目が慣れてくると、高速で駆けてくるタックルの姿がハッキリと見えた。

タックルの体が、ユラユラと揺れる透明の膜に包まれている。


見間違い?


手で目を擦っている間に、タックルはレフィルさんの前に到着した。


「へへへ、どんなもんだい」

「さすがはタックルだね。今の早さはB級でも手を焼くだろう」

「やったね!」


飛び跳ねて喜ぶタックルの姿に、思わず抱きしめたくなる。

すると片腕を大きく回して、アレルが一歩前に出た。


「タックル、俺と勝負をしよう」

「今日は負けないからな」


二人はゆっくりと中央まで歩いていき、互いに武器を構えた。

アレルはロングソード、タックルは両手にショートソードを持っている。

両者が頷き合うと、二人の体からブワっと何かが噴き出した。

そしてユラユラと揺れる膜になって、二人の体を包む。


次の瞬間に戦闘が始まり、タックルは横に高速移動しては、アレルに攻撃を加えていく。

その攻めをアレルは剣を巧みに操作して弾き返す。


「この攻撃ならどうだ!」


タックルは横への移動だけではなく、飛び跳ね、次に地面スレスレで足首を狙う。

足首への攻撃に驚いたアレルは、数歩後退る。


「今のはヤバかったな」

「もう少しだったのに」


アレルは額から汗を流し、タックルはニンマリと微笑む。

男子同士の戦い……ちょっと興奮してきたかも。


私は両手を上げて大声で声援を送る。


「タックル! 頑張ってー!」

「へ?」


呆気に取られてこちらを向いたタックルの隙をついて、アレルが剣を横薙ぎに素早く振るう。

一瞬警戒を薄くしていたタックルの腕に、剣の腹が当たり、ガクリと膝を着いた。


「痛ー!」

「戦闘中によそ見をすんな」

「だってよ……大女が叫ぶから」

「セツナだ。女子から応援してもらったんだから文句をいうな」


剣を鞘に戻し、アレルが戻ってくる。

その後を、頬を膨らませ、不満顔のタックルが歩いてきた。


二人に向かってパチパチと、レフィルさんは拍手をする。


「二人共、素晴らしい動きだった。特にタックルの高速移動の技術は目を見張るものがある。もう少し体の研ぎ澄ませば、アレルも苦労するだろ」

「本当か? 俺ってすごい?」

「すごい、すごい」


レフィルさんは優しい笑みを浮かべ、タックルの頭をゆっくりと撫でる。

いいなー、私も仲良くしたい。


羨ましく、眺めていると、エレインが杖をクルクルと回してポーズを取る。


「チビばかり見られて、悔しいですわ。お姉様、これより私が魔法を披露いたします。なので私の動きを観察してください。きっと魔法を習得するヒントになるはずですわ」


自信満々な笑いを浮かべ、エレインは意識を集中させた。

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