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7話 お風呂でバッタリ!

アレルと二人で、何軒も宿を探し、一番大きな部屋がある高級宿に泊まることになった。

顔色を青くしてアレルが支払いをしてくれたから、宿泊料金は知らないけど、結構高いみたい。

早く低級冒険者から脱して、彼にお礼をしないとね。


私は最上階の部屋で、アレルは二階の部屋を割り当てられた。

どうやら彼は少し安い部屋を選んだみたい。

レフィルさんからお金を貰ったのに、節約家なのかな?


階段を上って室内に入ると、木製のドレッサー、机、クローゼットがあり、キングサイズのベッドに枕が二つ。


……ということは、ここは二人用の部屋。


頭の中にアレルと二人でベッドに寝ている風景が浮かび、恥ずかしさのあまり、ベッドに倒れ込んだ。

「バキバキ、ドスン」と音がして。衝撃に耐えられなかったベッドの脚が折れた。


「うぅ……神様……チート能力は嬉しいけど、巨人族なんて望んでなかったのに」


体を丸くして、シーツに包まる。

すると廊下を歩く足音が聞えてきた。

その音で、異世界の宿にいることを思い出す。


「初日から凹んでいたらダメよね。せっかく転生したんだから頑張らないと」


私はベッドから立ち上がり、武装を解いて気持ちを入れ替えることにした。


そして膝を着いて、床に転がっている鞄の蓋を開けると、中の空間が歪んで見える。

神様が用意してくれた鞄だから、ラノベの定番で考えると異空間収納のマジックバックかも。


頭の中でワンピースドレスをイメージして、鞄の中に手を突っ込んでみる。

何かを掴んだ感触があり、腕を引き抜くと、真っ白なドレスを掴んでいた。


立ち上がって体に合わせてみると寸法もバッチリみたい。

そういえば下着は、身に着けているモノだけ……まさか神様、そこまで用意してくれてるのかな?


疑問に思った私は下着をイメージして、鞄の中に手を入れる。

掴んだモノを見ていると、スケスケの真っ赤なショーツ。


「……これは恥ずかしい……」


鞄の中に興味を持った私は衣服、下着をイメージしながら、次々と取り出してみる。


メイド服、ナース服、CA服、セーラ服、軍服、巫女服……

下着はどれもスケスケで、露出度の高いものばかり。


「もう、普通に着られる服と、下着が欲しいの!」


イラッとした私は頭の中でイケメン神様に文句を言いつつ、鞄の中に腕を突っ込む。

そして取り出みると、西洋の街娘のドレスだった。


あれ? さっきまでコスプレみたいな服ばかりだったのに?


唇に人差し指を当て、考えてみる。

メイド服を見た時、これってコスプレよねと考えたのがマズかったのかも。

ということは……集中してイメージを具現化できれば、そのモノを取り出すことができる?

そこまで考え、私は首を大きく左右に振った。


これってマジックバックじゃなくて……もっとチートな鞄かも。

想像したモノが出てくる鞄なんて、気軽に持たせないでください。

危険すぎて誰にも、鞄の秘密を言えない。

あの神様、本当に性格が雑なのね。


はぁーっと溜息を吐き、街娘のドレスに着替える。

体にピッタリフィットして可愛い。


宿に受付にいた女性が、一階に大浴場があるって言ってたよね。

鞄の中から、タオルを取り出し、いそいそと部屋を出る。

値段が高いだけあって、天井も高い。


一階に降りた私は、受付の女性に聞いて廊下を歩いていく。

すると『大浴場』と書かれた看板があり、扉を開けて中にはいると木製の脱衣所になっていた。

部屋一杯に湯気が漂い、私の気分も上昇する。


服を脱いだ私は、長い黒髪を頭上にまとめ、タオルを片手に、奥の扉を潜る。

すると幾つものランプに照らされ、湯煙の向こうに大きな浴槽が見える。

湯船が広くてよかった。これなら入れる。

桶で湯を抄って、かけ湯をした後、そろそろと片足から、お湯の中に体を浸す。


するとお湯が大きな波となり、浴槽の外へと溢れだした。

思わずオロオロと立ち上がると、湯煙の向こうから声がしてきた。


「誰かと思ったら、セツナじゃないか。お湯に浸かればいい。森にいたんだから疲れてるだろ」

「その声は……アレル?」

「そうだが?」

「キャー!」


あまりの恥ずかしさに、私は湯船の中に顔まで浸かる。

アレルがいるなんて聞いてないよ。

胸のドキドキが止まらない。


私の反応を見ていたアレルは、慌てて顔を逸らした。


「ごめん……セツナが綺麗だったからジッと見て……そんなつもりはなかったんだ」

「うん……私もアレルがお風呂に入ってるのを気づかなくてごめんなさい」

「俺に謝らなくていい。男は裸を見られて困ることはないからな」


アレルは天井を見上げたまま陽気に話す。

……キマズイ……


パニックで浴場を壊すことはなかったが、湯船から出られない。


「俺は十分に温まったから先に出るな」

「あ……」


微妙な沈黙が張り詰める中、アレルがガバッと湯から立ち上がり、水滴を滴らせたまま、足早に脱衣所へと続く扉へと歩いていく。

私は動けず、硬直したまま、お湯に浮かぶタオルを見つめていた。


慌ててたのはわかるけど、タオルを忘れちゃダメでしょ。


全部見えちゃったし、見せちゃった……。

今日一日で、頭の中がグチャグチャだよ。


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