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4話 冒険者ギルド!

森を通り抜け、街道に出て、アレルと二人でトリルの街へ向かう。

街の外壁の門が閉まる前に、ギリギリでたどり着いた。

すっかり太陽は沈み、空には星が瞬いている。


外壁の検閲では、アレルが私の身元を保証してくれて、人頭税まで払ってくれた。

冒険者って荒くれ者の集まりだと思っていたけど、彼はお人好しみたいだ。


「すみません」

「貸しているだけだ。稼いだら返してくれ」


ニコリと笑うアレルの表情に、私は少しだけ安堵する。

街の人達よりも背丈が約一メートル近く高い私は、奇異な視線を寄せられて、とても恥ずかしい。


すぐにでも逃げ出したい気持ちになるけれど、私が知っている都市はないし、私は体をできるだけ縮めて歩く。

するとアレルが私に向かって大声をあげる。


「セツナはスタイルも良くて、美少女なんだから堂々としていろ。巨人族に生まれたことに誇りを持て。神話にしか登場しない幻の種族なんだ。俺はセツナと出会えて嬉しいんだからな」

「えっ……」

「艶々な長い黒髪。ツルツルの肌。エルフにも負けてないって」


私を励ますためだろうが、直球の言葉に少し戸惑う。


日本で生活していた頃は、いつも眼鏡をかけていたからなのか、男性から容姿を褒められたことなんてなかった。


人族の男性から見て、私は魅力的なんだろうか?

イケメン神様も褒めてくれていたし、少しは自信を持っていいのかな?


気持ちを切り替えて、アレルに問いかける。


「どこに向かってるんですか?」

「冒険者ギルドだ。今日の依頼完了の報告と、セツナのことも伝えておかないといけないからな」

「私ですか?」

「既に大通りの人々に、セツナは姿を見られている。隠れていたとしても、街中に噂が広まるのは時間の問題だ。それならギルドに報告していた方が得策だ。巨人族みたいなレアな種族をギルドが興味を引かないはずはないからな」


アレルの言葉に、パンダ扱いされているようで、複雑な気持ちになる。

でも異世界では知り合いもいないし、今は彼を頼るしかない。


街の中央にある大きな建物をアレルが指差す


「ここがギルドだ」


大きな看板には「冒険者互助会エルトラン王国、レブラント領トリル支部」と書かれていた。

どうやら文字も読めるようだ。


重厚な扉を開けて、広間内に入ると、多くの冒険者が集まっている。

人族の他に、耳のとがったエルフ、筋肉モリモリ、顔中に髭を生やしたドワーフ、背も低く小柄な小人族もいる。

その他に動物の耳と尻尾がある獣人達、爬虫類のような顔の種族までいた。


アレルの後を歩いていると、周囲から冒険者達の声が聞えてくる。


「デカい女だな。姿は人族のようだが、竜人族よりも大きくないか?」

「胸も尻も大きいな。何を食ったら、あんなに育つんだ?」

「おい、床を見てみろ、女が通った後、少し凹んでないか?」


周りからの奇異の視線に晒され、とても恥ずかしい。

俯きかけると、アレルが後を振り返った。


「冒険者は舐められたら終わりだ。セツナの実力は俺がわかっている。お前は強い。だから堂々としてるんだ」

「わかりました」


日本にいた頃に読んだラノベ小説でも、舐められた主人公が冒険者から喧嘩を売られるのは鉄板のシナリオだ。

ギルドに来てまで、失敗はしたくない。


冒険者達に認めてもらわなくちゃ……


セツナは勇気を出して、毅然と胸を張る。

二人で受付カウンターまで歩いている途中、いきなり誰かがセツナに体当たりしてきた。

そして彼女の豊満な胸を鷲掴みにして、モミモミと両手を動かす。


「この弾力、この柔らかさ、まさに至宝ですわ」

「キャー! 痴漢!」


突然のことに驚いたセツナは、杖を捨て、胸を触っている者を、両手で掴み、無我夢中で放り投げた。

次の瞬間、ドゴンッという破壊音が鳴り、ひび割れた壁に、一人の美少女が埋もれている。


「ガハァっ……行動に悔いなし……最高ですわ」

「ヒィー!」


頭から血を流し、意味不明な言葉を発する少女を見て、セツナは悲鳴をあげる。

するとアレルが彼女の腰にしがみつき、必死に声をあげる。


「セツナ、落ち着け。ここで力を全開にすれば、この建物が崩壊する。そうなれば冒険者になれないぞ。金を稼ぎたいんだろ。美味しい食事を食べられなくなってもいいのか」


アレルの叫びを聞いて、パニックになりかけた頭が、少しだけ冷静になってきた。

しかし、抑えていた体内の何かが膨張するのがわかる。


セツナは壁の装飾になっている少女をひと睨みし、周囲を見回す。

すると、冒険者達は顔色を青くして、その場で固まっている。


誰も動けない静寂の中、落ち着いた声が広間に響く。


「そこの女子、ちょっと威圧を下げてくれないか。君は新人冒険者なんだろ。話を聞きたい、アレルと一緒に僕の部屋まで来てくれ」


その声の方向へ顔を向けると、階段の上部から金髪イケメン男子が笑いながら手を振っている。

その顔を見て、セツナは急に恥ずかしくなった。


初めてきた場所なのに、またパニックになって暴力を振るってしまった。


建物を壊してしまって、どうしよう……誠実に謝罪したなら、許してもらえるのだろうか?


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