2話 魔獣との遭遇、チビ犬?
空には太陽が一つ……輪があるから、地球の太陽ではなさそうだ。
目が覚めると、大きな樹の下にいた私は、立ち上がろうと地面に片手を着く。
その瞬間、五センチほど土が沈み込んだ。
それに驚いた私は手を抜いて、樹を掴む。
するとミシミシと樹の一部が砕ける。
「えっえっ……どうなってるの?」
不思議に思い、イケメン神の言葉を思い出す。
『力を最大限まで向上させておきますね』
『体のパラメータを振り切っておきました』
『微調整が面倒だから』
色々と思い当たる節がある。
あのイケメン神は、細かいことが苦手なのか、性格が雑だったのかも。
そう考えると、今の状況も理解できる。
このまま座っているわけにもいかないし……
とにかく森を抜けて村や街を探さないと。
樹に添えている手に力を込めた瞬間、バキッと幹が折れた。
「もー、力加減ぐらいは考えてくれればよかったのに」
地面に手を着いて、何とか立ち上がる。
すると下に見える地面が妙に遠い。
転生する前の私の身長は百五十二センチ……日本人女性としては小柄だった。
胸も大きくなっているし、脚も腕も長くなっている気がする。
神様が容姿を整えてくれていたから、もう少し身長を伸ばしてくれたのかもしれない。
私は両手の肌がすべすべになっているのを見て、深く考えずに気持ちを切り替えることにした。
足が土に埋まって歩きにくいけど、今は些細なことを気にしている時ではない。
「とりあえず、迷わないようにするためには、なるべく直進すればいいのかな」
周囲を見回し、樹々の間隔が開いている箇所を見つけ、私はその方向へ真っ直ぐ進むことに決めた。
目の前に藪が現れたので、杖を大振りして薙ぎ払ってみる。
力も込めていないのに、バッサバッサと茂みを崩すことができた。
普通の女子なら、こんなことはできない。
やっぱり力が異常なほど強くなってる。
異世界令嬢のような清楚なレディになれると思っていたのに……
そう思うと、あの大雑把なイケメン神のことが恨めしい。
「もっと話をして、詳しく説明を受ければよかったなー」
一時間ほど歩いていくと、遠くから遠吠えが聞えてきた。
そして、どんどんと、その声が近づいてくる。
「怖いなー。ここは異世界だから、魔獣とかいるのかな……ここに居たらマズイよね」
意を決し、走って逃げることに決めた。
しかし、森の中は樹々も多く、茂みもあるので真っ直ぐに進むことができない。
それに、一歩前に進む度に、足が地面に減り込むので走りにくい。
一所懸命に走っているのだが、徐々に後から気配が近づいてくる。
マラソンなんて学生の時から苦手だったのに。
疲れてきた私は、足を止め、どんな獣が追いかけてきているのか確かめることにした。
杖を両手で持って構えていると、樹々の隙間から数体が現れた。
「「「「ガルルルルー」」」」
シベリアハスキーの毛並みを灰色にして、体を小さくした犬みたい。
牙を剥いて威嚇してくるけど、少しチビに見える。
日本にいた頃、両親が住む実家では、大きなシェパードを飼っていたから、見慣れていて左程怖くない。
犬だと思った私は少し安心して、少し身を屈めて声をかける。
「怖くないよー」
「「「「ガウッ! ガウゥ! ガルルルル!」」」
「キャー!」
仲良くしようとしていたのに、チビ犬達が一斉に私に襲いかかってくる。
それに驚いた私は悲鳴を上げて、杖を大きく振り回した。
「キャン!」
杖に当たったチビ犬の体が遠くの樹々へと吹き飛ぶ。
その間に数体のチビ犬が私の脚に噛みついた。
「痛い!? でも……チクっとするだけで、あまり痛くないかも」
強烈に噛まれると思っていたんだけど、甘噛みなのかな?
でもチビ犬達の表情を見ると、すごく怖い形相をしているし……
野生の犬だから、予防注射もされていないから、病の感染が怖い。
「ごめんね」
私は杖から手を放し、チビ犬の首根っこを捕まえて、力一杯に投げる。
すると犬は空中でくるくると回転して、遠くへと姿が消えていった。
両足にまとわりついていた犬達を次々に捕まえて、ぶん投げる。
近くにある樹々を避けているから、犬達は大怪我をしないはず。
全ての犬達がいなくなったので、噛まれていた足元を確かめてみる。
長い皮のブーツに小さな傷が幾つもある。
神様が用意してくれた装備だから、頑丈なようだ。
「あんなに沢山、一斉に甘えられても、困るよね」
体の汚れを両手で払い、地面に放置した杖を手に取る。
その時、樹々の間から人影が飛び出してきた。
「ヘルハウンドを軽々と子犬扱いする、お前は誰だ? この森で何をしている?」
目の前で剣を構え、武装した男性が私を見据える。
異世界に来て、初めての人との遭遇だけど……少し背が低いから小人族なのかな?




