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第三章 歩み寄る恐怖

課題が山積み……\(^o^)/

文章って難しい

実家から自身の家に帰り、だんだんと日常が戻って来た頃。内見案内の返信が来た。のんびりと待っていたので、もう来たのかと少し驚いた。今の家に内見を申し込む時はもう少し日が掛かっていたので、事故物件は対応が早いのかと考える。メールを開き、日程を確認する。その日のスケジュールを見つめた。ちょうど坂口との用事が入っていて、しまった…忘れていたと慌てて坂口に連絡を入れてみる。



「もしもし、今時間あるかしら?」

「ああ、大丈夫だよ。どうかしたか?」

「実は貴方と会う日に、例の物件の内見が入ってしまって…」

「なるほど、じゃあ少し早くにずらすかい?」

「私はいいけど、」

「じゃあそうしようか。」



日程を決めて、改めて謝罪をし電話を切った。前までは創作意欲が湧かず、作家仲間に会うのが億劫だったが最近は少し楽しみでもあった。予定をずらして日程が早まったので、結果オーライかなと思い、自身の作業に向き直る。作品を作っているわけではないが、思い付いたものをメモとして残していく。実家に帰省していた時の記憶を辿り、書き連ねていく。たかだか数日間しか滞在していないのにも関わらず、色濃い出来事が多かった。もう怖い思いはごめんだなと思うが、この先も不思議な現象があの家では起きるのだろうと思い、帰省するのがどうしても嫌に感じてしまう。



日が経って、坂口と会う約束の日になった。あっという間に月日が過ぎ去るような感覚に、自身の歳を感じる。切ない思いをぶら下げながら坂口との待ち合わせ場所に向かった。いつもの喫茶店に着き、また各々注文をする。先に仕事の話を終わらせて、気の向くまま他愛のない話を紡いでいく。



「そういえば、物件の内見には行くの?」

「行くわよ……まだ日があるけれど、もう気が重いわ…」

「どんな物件に行くんだ?」

「ありふれたものよ、前の住人が自死した物件だと書いてたわ。内見の時にまた何か出てくるかもしれないけど。」

「すごい楽しみだな。」

「その好奇心旺盛な精神を少しでも分けてほしいわ。」



事故物件の話になり、だんだんと話が盛り上がる。気づけばもう陽が落ちるところだった。思いのほか話し込んでいた事に気づき、お開きになった。自身の中の満足感にホクホクし、帰路につく。喫茶店で軽食をつついていたがもう少しお腹が空いていたので、スーパーに寄ってお惣菜でも買って帰ろうと思った。喫茶店からスーパーまで少し距離があるので、茜色になりつつある空を見上げ、風情に浸り歩いていた。



久しぶりにスーパーのお惣菜と即席スープを買い、気分が上がる。ふと自炊が出来たらもっと生活が色づくのだろうなと思い、

改めて母は凄いなとしみじみ思った。軽く買って帰ろうと思っていたが、見ている内に色々欲しくなってしまい、よくある揚げ物やおにぎり、自身が好きな甘味を買ってスーパーを出た。少し高い食費になってしまったが、たまには良いだろうと早足で帰った。



家につき、早々に買ってきたものを胃に収めて執筆作業に入る。部屋には下書きで使う紙にペンがサラサラと走る音が続いていく。心地良い音が部屋に響き、集中が高まる。しばらく書いていると、頭にあることが思いついた。"苦手"を作品にしてしまえば良いんじゃないか?せっかく事故物件に住むのだ、体験談としてまとめてみれば、良いものが生み出せるのではないか?と少し希望が見える。そう目標を立てて、メモ書きを残しておく。少し内見が楽しみになった。



自身が楽しみにしていたからか、内見の日はすぐにやって来た。新しい希望と少しの恐怖を抱え、約束の場所に着く。案内人と合流して、事故物件へと向かった。物件は意外にも綺麗だった。どことなく不気味さは感じるが何故かとても安心した。こじんまりした一軒家で、庭を見終わり次は家の中だという所で、ゾワッとした感覚が背筋に這う。バッと振り返り、辺りを見回す。当たり前のように何も無いが、何かおかしい。杞憂だと思い、案内人の後をついて家の中へと上がってゆく。中へ入ると、意外にも整頓されていて普通の物件と遜色はないなと思い、やはり怖がりすぎていたのかと少し気恥ずかしくなる。居間、台所、廊下、寝室と見ていき、2階に続く階段を登ろうとした時それは起こった。



ガタンッッッッッ……



とても大きな音がした。案内人の人と一緒に飛び上がり、何が起こったと状況を理解しようとする。するとふと階段段の上の方から視線を感じた。バッと上を見て目を凝らす。だが何も居ない。今まで見た部屋を回り、音の原因を探す。やはり何もない。物件案内の時に不思議なことが起こると思っていなく、不意打ちの出来事だったため、冷や汗がだらだらと伝っていく。

こんな所に私は本当に住むのか…?と思っている内に案内が終わり、契約の話になった。



「この部屋で最後になります、いかがでしたか?」

「思ったよりも綺麗だったので、少し驚きました。こういうのって汚れているものだと思っていたので…。」

「他の方からもよく言われます。一応、なぜ事故物件になったかは前にお伝えした通りです。」

「ただ、1点だけ補填がありまして、前の住人が亡くなった後、もうお一方住んでおられましたが、影を見たり、一番ひどいのは階段から落とされたとの事でした。」

「やっぱり、変なことが起きるんですね……」



補填の情報が、あまりにも大きくてここに住むのを辞めてしまいたくなるが、自身の意思でここまで来たのだと奮い立たせ、不動産の契約を結ぶ。必要な事項を書き連ね、最後の用紙までいくと、誓約書があった。そんな物まで書くのかと驚きはしたが、そこまでだった。目で流し読み、そのままサインをする。1週間ほどの日にちは空くが、ここが次の我が家だと思うと今の家が恋しくなってしまう。この1週間でゆっくりとお別れをしようと気合を入れて、契約を終わらせた。



家に帰り、簡易的にではあるが荷物を分け始める。上京したての頃からの荷物もあり、あの頃は何でも出来る気がしたなとしみじみする。あれやこれやと分けていると、一つのお守りが出てきた。いつのものだろう…と恐る恐る手にとってみたが、全く記憶になく、頭に疑問だけが残った。粗末に扱うこともできず、どのくらい年月がたっているか分からないが、お焚き上げに持っていこうと丁寧に布でくるんだ。引っ越しの荷物整理が一段落して、時計を見る。自身の体内時計よりも先をゆくデジタル時計に、ほんの少し苛立ちを覚え、こんな進みでは時間がいくらあっても足りないと悪態をつきそうになった。今日はもうおしまいにしようと部屋に布団を敷き、眠りにつく。今日一日は大分活動的な日だったので、すぐに睡魔に誘われる。



「ねぇ、気づいて。思い出して、私はここ。」



女の子の声が聞こえる。おかしいな、ここには一人しかいないのにと疑問を持つが、不思議と怖い感じではなかった。ここは夢の中だと気づき初めた頃、この情景を私は知っている事を思い出す。この場所、何だかどこかで見たなぁとふわっと考えていると、次第に景色が移り変わり、目が覚めた。まだ夜の時間だった。頭が働いておらず、あの子の事を考えることも無く、もう一度眠りについた。 



次に起きたのは、昼前だった。意識が浮き上がり、時計を見る。しまった寝すぎたと思い飛び起きる。寝起きのまま、納期の近い作品を送り出し、アラームをかけていたはずの携帯電話を手に取る。どうやら無意識に止めていたようだ、目が覚ますためには大きすぎる音量で設定されていたが、これでも起きなかったのかと自身の耳を疑った。ささっと身支度を済まし、少しずつ昨日の続きの作業をする。コツコツと進めている内に、昨日の夢をぼんやり思い出す。そういえば、帰省から帰ってすっかり忘れていたが実家で見た写真と、夢に出てきた女の子が似ていた。職員に写真を見せて質問した時、インターネットで調べれば出てくるかもと助言を貰っていた事も、芋づる式に思い出し、もう少しで終わる荷物整理を終わらせて調べようとペースを上げた。



荷物整理を終え、椅子に座りパソコンに向き合う。資料から見つけた情報を元に、インターネットで調べていく。中々知りたい物はヒットしなかったが、行方不明者の名前を入れて検索すると、少しずつ出てきた。やれ怪異に巻き込まれた少女なり、異世界に召喚された子供なり、好き放題書かれていた。信用出来ないような情報が多かったが、コツコツと1つずつ見ていく。すると、知りたかった情報が纏められているサイトに行き着いた。恐ろしくシンプルで、何とも変なサイトだった。行方不明の情報のまとめサイトのようだ。その中の一部になっていた。ざっと見ていくと、何十人の行方不明情報が出てくる。少し不気味な感覚になり、サイト内の検索欄に女の子の名前を入れた。【結城夏菜】と入力し、情報を調べる。やはり他のサイトのように、怪奇現象だと出てくるが、1つだけ毛色の違う説があった。パソコンの画面には、"生け贄"の文字が浮かんでいた。そんなお伽噺のような事があるのかと記事を読み進めてみる。どうやら、村の悪天候や洪水の危機を取り払うために、この女の子は捧げられたらしい。何とも後味の悪い話である。読み進めていく内に、実家がある土地の写真、村の名前が出てきた。どうやら秘密の鍵はここにあったらしい。疑問が浮かぶ。土地の話は調べれば出てくると分かっていたであろう母は、何故あそこまで頑なに語ろうとしなかったのか。あの夢に出てきた女の子と関係があるのだろうか?電話で聞いてみたいが、恐らく口が硬いだろう。とりあえず、調べられるところまで調べてその日は活動を終えた。



日は流れ、とうとう引っ越しの日になった。業者に荷物を任せ、自身も新しい家へ向かう。荷物が最小限になっているので、少し寄り道をして足を進めていく。道中で好きなお菓子や、飲み物を軽く買い、最寄りのスーパーで今日の晩御飯を買った。毎度おなじみのお惣菜、スープ、おにぎりを買い込んで家に向かう。少し辺りが暗くなってきているからか、内見に来た時よりは雰囲気が出ている。少し不気味な、でも確かに綺麗なこの家に今日から住むのだと実感が湧いてくる。中は薄暗く、電気を付ける。パッと明るくなり、一瞬目が眩む。ホコリ1つ無いような部屋を見渡し、テーブルに買ってきたものを広げる。とりあえず今日は出来ることが限られているので、自室の荷物と家電のコンセントを差して、眠りについた。少し疲れが溜まっていたが、あまり睡魔は現れず、寝付くのに少し時間が掛かった。この家のせいだろうかと考えてみたものの、引っ越し初日という要因もあるのだろうと割り切り、瞼を閉じた。



新しい家の片付けも終わり、この家にも慣れてきた。少し田舎の方にはなるがしっかりとインターネットも繋がるようにしているし、家の周辺にはスーパーや少し古ぼけているが、商業施設、商店街がある。事故物件だという事で、提案された時は中々首を縦に動かせなかったが、存外、住めば都というものだなと感心した。新しい家での生活はとても快適だった。田舎の方の物件を契約したので家賃も下がり、家の間取りも少し広くなっていた。羽ばたきそうな気分でお昼頃から仕事をし、一通り終わった所で買い足しに出かけた。必要な物をカゴに入れ、会計に向かう。ふと、私が持っていた写真の女の子に似ている風貌の子が居た。慌てて後を追ったが、その女の子は消えたかのように、姿を消していた。店内をぐるっと見回ったが何処にもおらず、見間違えたかなと少しの罪悪感を覚え、レジへ歩みを進めた。



家につき、少し遠い道のりで汗をかいたのもあって、先に軽くお風呂に入ろうと浴室に向かう。お湯を張ろうと扉を開けて下を向くとまだ1回も浸かっていないのに排水溝や浴槽に髪がべっとりと張り付いていた。



「……ッッ………何これ。全部髪の毛?」



バッと、振り返る。知っている気配がした。内見のあの時、階段から感じた"何か"の気配だ。咄嗟に浴室から出て、扉を勢いよく閉めた。どうして、何でと考えている内にまた気が遠くなりそうになり、床にへたり込む。激しい頭痛が襲う。痛い痛いと呻くと頭の中に夢に出た女の子がいる。だが少し風貌がおかしい、少し大きくなり、白色の着物を着て、大人に着飾られている。そこまでの光景は覚えているが、その先の事はまっさらな程、覚えていなかった。最後に見た女の子はとても悲しく、そして憎悪が渦巻いているような顔をしていた。



気がついたのは朝で、床に転がったまま寝てしまっていた。冬の夜に床で寝てしまっていたので体中が痛く、動くのが億劫だった。昨日の買い出しの物がそのままになっている事を思い出し、重い体を持ち上げる。少し冷凍食品も買っていたので、溶けていないかと心配に思う。状態を見てホッとする。まだ寒い時期だったので、溶け切ってはおらず、すぐに冷凍庫にしまった。だんだんと体の痛みも薄くなっていき、まだ終わらせていなかった作業に取り掛かる。パソコンに打ち込む音が響く、思考を作業に向け続け終わらせる。作業が終わりに近づくにつれて、段々と昨日の出来事が蘇る。鳥肌が立ち、"あれ"の掃除はどうしようかと頭を抱える。とりあえずもう1回浴室を見に行こうと、覚悟を決める。廊下を進み、扉を開け下を見る、目を疑った。髪が綺麗さっぱり無くなっていた。おかしい、昨日のあれは見間違いだったのか?と目を擦る。途方もない不安と恐怖を抱え、発散出来ずに居間に戻る。とうとう不思議なことが起き始めたと嗚咽が出そうになる。気を確かに持とうと思い、テレビを観ようとリモコンを操作した。ぱっと画面が明るくなり、ニュースが流れる。特に気にせず、右から左へと流して聞く。

そうしていると落ち着きを取り戻して、そろそろお昼だなとお腹が鳴いた。コーヒーを淹れて、食パンを焼く。お昼のワイドショーを観ながらちまちまと食べ進める。食べ終えて食器を片付けている内に、テレビから心霊番組の宣伝が聞こえてきた。私はため息をついて、お祓いの方法でも調べておこうかなと遠い目になった。

どなたかホラーのいい表現を教えてください……

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