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第一章 開かれる扉

初書きの小説です、暖かい目で見てあげてください(泣)

_どうして、こうなったんだろう_



その日はとても寒い冬の夜、作家の綾崎ハヤテは上京して6回目の雪の季節に憂鬱げな眼差しで窓の外を見た。都会の人の喧騒、機械音、何よりここ何年かの作家として満足のいく作品を生み出せず、生活に煩わしさを感じていた。



「何か、いい刺激はないだろうか…」



と、物思いにふけってみる。何故自分は今こうなっているのだろう、何を見つけて探求するとこの生活が進むのだろうかと思考を巡らせる。一つの考えが頭をよぎった。いっそ生活を一変してみるのはどうだろうかと思い、不動産サイトを漁り始めた。

色々物件を見ていくうちに、とある一つのサイトにたどり着いた。≪事故物件専門取り扱いサイト≫という、少し不気味さを感じるサイトだった。気が滅入っている今、見ても良いものかと思い、その日は見ないで閉じてしまった。これが始まりだったというのに……



前に作家仲間兼友人の、坂口に気が滅入っていると相談していた事を思い出し、電話を掛けてみた。この鬱屈とした日常に少しでも意味を見出したくて"今から会えないか"と問うてみる。



「どうしたんだ、いきなり。前の相談事か?」

「そう、聞いてほしいことがあって。」

「分かった、ならいつもの喫茶店で落ち合おう。」

「ありがとう、助かるわ」



そんな他愛のない話をして、電話が終わった。いろいろ身支度をしていつもの場所に向かい始める。外の景色を楽しみつつ、もうすぐ目的地に付くという所で、不動産屋が目に入る。



「ぁぁ、そういえば、あのサイトはどうだったかな?」



昨日見た、不気味なサイトを思い出す。作家であるから興味を持つことはあれど、進んで住みたいとは思わない物件だなと溜め息をつく。怖いもの見たさはあるが、そこに住むとなるとまた話が違う。気が滅入る日常を変えたいのに、滅入る場所に住んでしまっては本末転倒だ。あまり深く考えずに到着して、坂口と合流した。



いつも穴場な喫茶店が、その日は繁盛していた。



「わ、珍しいね」

「いらっしゃい、久しぶりの組み合わせね、デートかい?」

「ち、違います!!」



少しいたずらっぽい店主の顔を見るのも久しぶりだ。相変らず、私と坂口が来るとからかってくる。この暖かい雰囲気が好きで良くここで仕事をしていたのを思い出し、ほっとした。坂口と私は、それぞれ注文をして本題に入ることにした。



「それで、どんな相談事?」



私は一口、珈琲を含み、ゆっくり飲み干す。柄にもなく気のおける友人に相談を持ち帰るのは緊張してしまうらしい。



「実はね、少しスランプなの」



意を決して、告げる。元々浮かんでは書いて、浮かんでは書いてを繰り返し、アイデアが無くなるなんてことは考えたことすらなかった私がスランプ気味と知って、坂口は意外だという顔をする。それもそうたろう、いつだってペンを離すことなんてないと自慢げに話していたのだから…。



「まぁ、作家には付き物だよ。スランプは」



軽快に笑い飛ばされ、少し気恥ずかしくなった。私にとっては笑い事じゃないのだ。作家を目指して書いて書いて、ひたすら書きまくった。その私の行動を、笑われたと思い、少しムッとしてしまった。



「もうっ、笑い事じゃないんだからっ!」



少し怒り顔で話し出す。ごめんごめんと謝られ、また話を再開する。話している内に、不動産サイトの話をした。色々な物件を物色している内に、変に不気味なサイトに辿り着いた事を話した。坂口も興味を示すように、口角を上げ、深く椅子に腰掛けた。



「へぇ、そんなサイトがあるんだ。知らなかった」

「私も初めて見つけたの。専門サイトがあることも知らなかった」

「覗いてみなかったのか?」

「私、怖いものはあまり得意じゃないもの」

「話したってことは、興味があるんだろう?」

「まぁ、否定は出来ないけれど…」



話が進むにつれて、そのサイトの話で持ちきりになってしまった。どうしたものか、坂口は一度火がついてしまうととことん探求するタイプだ。やいのやいの話が飛び交い、ある提案が坂口の口から出てくる。



「事故物件、住んでみたら?」

「何?急に、そんなの嫌よ。怖いもの」

「でも興味もあるし。何より刺激になるんじゃないか?」

「それは、そうかも知れないけれど…」

「日常を変えたいなら、行動してみなくちゃ!」

「人の気も知らないで…」



坂口の説得の末、私は折れてしまった。確かに私自身も興味はあるし、怖いもの見たさの感情もある。いい提案なのだろうけれど、中々一歩が重たいものだ。どうしたものかと考えていると、母からの連絡が入った。珍しいと思い、電話を取った。



「もしもし?何かあったの母さん。」

「何かあったのじゃないわよ、もう年末じゃない?今年も帰ってこないのかしら?」

「そうね、久しぶりに帰ろうかしら。」



母からの連絡は、年末の話だった。そういえば上京して以来一度も帰ってなかったなと思い、帰ると返事をしてしまった。私は少しだけ実家が苦手だ。怖いもの、俗に言う心霊現象のようなものが小さい頃、起きていたからだ。この出来事があって独り立ちしようと思ったし、怖いものが苦手になったのだ。現実で起こる現象は当たり前に、テレビやインターネットで見る"そういうもの"かとても苦手になり、受け付けなくなってしまった。年末にはもう少し日があるけれど、憂うつになってしまう。



「何もないと良いんだけれど……」



ふっと、頭に疑問がよぎった。父はすでに他界しており、話を聞くことができなくなってしまったが、母は何故実家で起こるおかしな物音や人の視線など気が付いていないのだろうかと。私が独り立ちしてから、母は一人暮らしだ。気づかないはずがない。せっかく久しぶりに帰るのだ、思い切って聞いてみようと心に決め、先に自分の引っ越し物件を探そうと思い、不気味だと思ってずっと触らなかった≪事故物件専門取り扱いサイト≫を覚悟を決め、クリックしてみる。一般的な明朝体でサイトの名前が一番上に、その下に住所検索の欄があった。怖いと思って開いたが、思いのほか普通のサイトで一安心する。



「なぁんだ、怖がって損した。」



山を一つ越え、思わず笑みを浮かべる。サイトを開いたのはいいが、どう調べようか。まず手当たり次第に自身の今の自宅、前に住んでいたところ、友人宅とどんどん調べていった。そういえばと思い、自身の実家の住所を入れてみた。



そこは事故物件だった。



思わぬ事実に血の気が引き、鳥肌が立った。急な寒気が背筋に走り、完全に手が止まってしまった。しばらく放心した後、サイトで物件の詳細が見れるようなので、クリックしてみる。



≪〇✕県△□区◎番地≫


事故物件詳細


精神異常、変〇、自〇、消息不明


掲載日 〇✕年



戦慄を覚えた。私が生まれる前から、ここは事故物件だったのだ。頭がクラッとする、手が痺れる、呼吸が浅くなる。知らない内に、住んでいたんだと泣きそうになる。でも事実を知って妙に納得してしまう。なから変なことが次々に起きていたのかと、次第に恐怖はなくなり、怒りに変わる。何故両親はそれを隠していたのか。先程まで、実家に帰るのが憂鬱だったが、今は聞きたいことができて、少し待ち遠しくもある。今すぐにでも、母に連絡を入れたいがぐっと堪えて、年末まで自身の生活に向き合うことに集中した。


興味を持って頂けたら嬉しいです!

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