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駒姫様 令和7年8月13日 許されない思春期

悲劇の運命に翻弄される駒姫様へ、神様がくれたひと時の幸せは

最初で最後の暑い夏の恋だった

令和7年8月13日(文禄4年7月11日)

この世界に来て3日目の朝を迎えました

同時に、元の世界では私が居なくなって3日目です

もう、国本(くにもと)まで伝わっている頃です


天下人に嫁ぐ者が失踪となれば、

最上家にどのようなお仕置きが待っているか分かりません


秀吉様は謀反の可能性がある者を有無を言わせず

厳格に滅ぼしています

今の私には、何も出来ることがありません

神様、最上家をお守りください


私は不安を抱えながら

今日は、家族とお墓参りの後、親戚が集まって食事をします

見知らぬ方々を相手に、私が駒凛様ではないことが、

知られずに過ごせるか自信がありません


そして今日、慎とは会えません

会いたい気持ちが募ります

これが恋というものでしょうか


「駒凛、そろそろ行くわよ~」

「は~い」

この頃には、私はこの世界の家族と自然な会話が

少しずつ出来るようになっていました


そして、家族四人で父方のご先祖様のお墓参りに参りました

焼き肉もそうでしたが、警護の方もおらず、

家族だけのお出掛けです


私はお母さんに誘導されて、お父さんが運転する車の助手席に座り

あまりお話が出来ていないお父さんに話し掛けてみました

「お父さん、今日も暑いね」

すると、私から話し掛けたことに、お父さんは驚いた様子でした

「あ・・・ああ、暑いな。熱中症にならないように水分を取りなよ」


後で姉の竹乃に聞いて分かったことですが、

思春期とやらを迎えた駒凛様はお父さんとあまり会話をせず、

お父さんを避けていたようです


もちろん、元の世界では許されることではありません

私は父上が大好きでした

同い年の私に思春期というものはあるのでしょうか


お墓にはすでにお父さんの弟家族が来ていました

すると5歳くらいの男の子が「駒姉(こまね)~」と言いながら

駆け寄ってきました


名前が分かりません。私が躊躇していると


姉の竹乃が「(しゅう)ちゃん、久しぶり~」と言いました

従弟の二階堂 修二くんです

『ありがとう!お姉ちゃん』


ただ、修ちゃんは私に抱きついてきました

「修ちゃん、元気にしていた?」

「うん、ねえ今日はいっぱい『大鬼滅の鋭刃(えいば)ごっこ』しようよ」

「うん、いいよ」

修ちゃんはおもちゃの刀で遊んでくれる駒凛様に(なつ)いていたようです


『大鬼滅の鋭刃』スマートホンで調べました

澪からスマートホンの使い方を聞いて、もう何度も使っています

最低限の操作は出来ます、お父さんよりも私の方が使いこなしています


そして、お掃除をして、お線香をたいて、お花を供えて

全員で手を合わせた時です


蒸し暑い最中、突然冷たいそよ風が私の髪をゆらしたとき

『時が来たら、駒凛を返してね』と言われた気がします

そうしたくても、どうすれば・・・教えてください


私たちは父の実家に行きました

そこには、すでに数家族が集まっていて、

大人はお酒を飲み、子供たちは庭で遊んでいました


元の世界では家族だけで集まることはありません

必ず、警護の意味も含めて家臣の方々と一緒です


「駒凛ちゃん、インターハイ準優勝おめでとう!」

「お祝いの乾杯をしようよ」

そのまま酒宴と食事が始まりました

久しぶりの再会で親族一同が語り合い、

懐かしみ合い、祖父母は私を含めた孫と過ごす時間を喜んでいます


今頃、大騒動になっているであろう、

最上の家族のことを考えると

私ひとりがこうして幸せな時間を過ごしていることに

心が痛みます


元の世界では、昨日会った親族が明日は居ない

親族が明日は敵になり、親族が殺し合う時代です

でも令和の人々は、親族が一堂に会して和やかな時間を

過ごしていることを羨ましく思えます

それに、本家と分家では大きな隔たりがありますが、

この世界では平等です


澪からこの世界の習慣などを聞いていたことで

かろうじて、私が違う世界の人間ということを知られずに

やり過ごすことができました


私と姉の竹乃以外のいとこは幼く、食事の後は私たちが面倒を見ました

大人たちはそのままお酒を飲んでいます


駒姉こまね~『大鬼滅の鋭刃』ごっこしよ!」

修ちゃんがおもちゃの刀を持って催促してきました

私は薙刀の経験はありますが、

刀は幼きころ兄上と木刀で遊んだ程度です


しばらく修ちゃんと遊んでいると、修ちゃんに言われてしまいました

駒姉こまね~弱くなったね」

「手加減してるだけだよ~」


「じゃあ、本気で行くぞ~」と修ちゃんが言って

斬りかかって来るように見えた時、

体が勝手に動き、修ちゃんの刀を払いのけて刀は飛んで行きました


それを見ていた竹乃が駆け寄り、修ちゃんをなだめています

「ちょっと、駒凛!手加減しなきゃダメじゃない

 ごめんね修ちゃん、大丈夫?」

「ごめんね、修ちゃん。大丈夫だった?」

「うん、大丈夫だよ!さすが駒姉こまね~!

 今度、剣道を教えてね」

「うん、また今度ね」


その後、他の子供たちと花火をすることになりました

私の世界に花火はなく、花火を知りません

私が子供たちの世話をしているフリをしている間に

竹乃が準備をして、子供たちが花火を始めました


初めて見る花火は鉄砲のように、先端から火を噴いています

ただ、人を殺める鉄砲とは異なり、

闇夜に映えるとても美しいものでした


そして、私は山形の花火大会パンフレットを見せてもらいました

写真で見る花火は今見た花火とは違い、

夜空に咲き誇る花のように、美しいものです

明日、慎と二人でその光景を目にできることに心を躍らせました


修ちゃんたちと別れを惜しみながら、再会を約束して

私たちはお酒を飲んでいないお母さんの運転で家に帰りました


家に帰ったのは22時頃でしょうか、

お風呂を済ませ、明日の準備をしていると

慎から電話が入りました


「駒凛、明日は山形駅に4時でいいか」

「いいよ、花火楽しみだね」

「二人で初めて見る花火だからね」

「澪と慶も二人で見に来るらしいよ」

「そうなんだ、あいつら付き合ったばっかだから

 一番楽しい時期だよな」

「私たちだってそうじゃん。まだ2か月半だよ」

「そうだな」


「駒凛」

「なに?」


「いや、なんでもない」

「なによ」

慎は何かを言い掛けましたが、

感情を抑えてその言葉を飲み込んだのが

私には分かりました。気になります

「おやすみ」


その電話の後、私は澪に電話をしました

思春期について知りたかったからです

「ねえ、澪。思春期って何?」

「いきなり言われても、分かんないよ~

 でも、体の変化とか気持ちが不安定で親に反抗したり、

 恋したり、じゃないかな」

「澪は思春期なの?」

「駒凛だって思春期でしょ」

「そうなの」

「だって、今のあなたは慎のことが好きでしょ」


元の世界では

気持ちの思春期は許されない事だったのですね

この作品は実話に基いたフィクションです

ストーリーの展開上、実際の旧暦と新暦とは一致しません

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