駒姫様 令和7年8月12日 慎次との出会い
悲劇の運命に翻弄される駒姫様へ、神様がくれたひと時の幸せは
最初で最後の暑い夏の恋だった
令和7年8月12日(文禄4年7月10日)
私は駒凛様の彼氏の慎次、澪と彼氏の慶
4人でプールへ行きました
全員が市立山形高校の剣道部所属で慎次と慶が2年生
私と澪は1年生です
澪と一緒に待合せ場所の山形駅に着いた時、
そこには写真で見た慎之介様にとても似た方がいました
しかしながら、慎之介様がこの世界にいるはずがなく
その方は、駒凛様の彼氏の慎次です
緊張している私を慎は笑顔で迎い入れてくれ
慎と一緒にいた慶は待ち切れない様子でした
「澪、駒凛、遅いよ!早く行こうぜ!」
「ごめん」「申し訳ございません」
「なんだよ、今日は駒凛まで変な感じだな
慎もだけど、堅っ苦しい話し方はやめろよな」
「二人は歴史オタクだから、また影響されたんじゃない
それより、早くプールに行こうよ」
まだこの世界に慣れない私が堅い話し方や行動をすると
何かあるごとに澪が助けてくれました
そして、プールまではバスで15分ほどの距離でした
その移動中、私と慎は体が触れるほどの近さで座席に座りました
私の緊張が伝わったのか、慎は何も話さず
会話が無いままプールに着きました
でも、バスから降りるとき、先に降りた慎が優しく手を差し出してくれ、
私は人生で初めて異性と手をつなぎました
「ありがとう、慎」
「どういたしまして、駒凛様」
「慎之介様!」
私は思わず、叫んでしまいました
慎は「誰それ?俺は慎次だよ」と言って笑っていました
でも、その笑顔は慎之介様そのものです
元の世界で、まもなく嫁ぐ私は罪悪感を覚えながらも
今、この世界にいる時間だけは、神様、駒凛様お許しください
心のままに慎と過ごさせてください
私たちのやり取りを見ていた慶がにやけながら茶化してきました
「お~付き合って2か月半にもなると、お熱いことでいいね~」
それを聞いていた澪は頬を膨らませて可愛く言いました
「慶は慎を見習いなさいよ~」
私は慎にまだ甘えることは言えません。澪と慶が羨ましく思えました
更衣室で着替えていると澪が心配して声を掛けてくれ
「駒凛、大丈夫?何かあったら私がフォローするから今日は楽しもうよ」
「ねえ、澪。慎はその・・・
私がいた世界の佐川 慎之介様に似ているの
お顔立ちや雰囲気がそっくり」
「彼氏ってこと?」
「私が好きだった人
でも、私は嫁ぎ先が決まっていたし、身分が違うから
私が心の中で勝手に好きになっていた人」
「この世界では駒凛と慎は付き合ってるんだからさ
そんなの関係ないじゃない
もし、あなたがこの世界の慎を好きになったなら、
本当に付き合っちゃえばいいじゃん」
澪は笑顔で言ってくれましたが、
その笑顔には影があるようにも思えました
何かを隠している
でも、その言葉に私は救われた気がします
この世界では私は自由です
恥ずかしさに堪えて水着に着替えた私と澪は
慎、慶と合流して最初は造波プールで遊びました
川の水を手ですくう程度の水遊びはしたことがありますが、
全身が水に浸かったり、浮き輪で遊ぶのは初めてで
肌の露出の恥ずかしさも忘れて、
幼き頃のように無邪気に遊んでしまいました
慎は微笑みながら、優しい瞳で私を見つめていました
慎は本当に駒凛様が好きなんですね
駒凛様はクールビューティーと呼ばれていたようで
慶は「駒凛もこんなに笑うんだ~」と少し驚き
澪は私の笑顔に優しく微笑んで返してくれました
私の笑顔は慎にどのように映ったのでしょうか
その後、ウォータースライダーを付き合っている同士で楽しむことになり、
先に乗った澪と慶が仲良く前後に密着して乗っているのを見て
私は最高潮の緊張に襲われました
「駒凛、大丈夫か?高い所はダメだったよな、やめとくか?」
「いえ、大丈夫です。行きましょう」
いつも遠くから見ていた慎之介様
遠くから聞こえて来る慎之介様の声
遠くにいた慎之介様が今は、こんなにも近くにいる
目の前にいる慎は私にとって慎之介様です
恥ずかしさや緊張は慎の優しさで消えていました
私たちは心行くまでプールで遊びました
私は慎の優しさにふれ、慎之介様ではない慎に心が惹かれていきました
でも、慎が優しく見守る目は、私を警護くださっていた慎之介様の目です
慎。あなたは本当は慎之介様ではありませんか?
という思いを持ちながら
その夜、慎から電話がありました
「駒凛、今日のプール楽しかったな」
「うん、また行きたいね」
「行けるよ、今度は二人で行こうか」
「うん」
元の世界では考えられない『二人で』という言葉に
私の心は揺れ動きました
「でもさ、今日の駒凛は元気が無かったって言うか
いつもと違って様子が変だった気がするけど、大丈夫か?」
と慎は少し心配そうな声で問い掛けてきました
「疲れていただけだよ」
「インターハイの後だもんな、無理はするなよ
明日は家族でお墓参りだろ、うちもだから明日は会えないな」
「うん」
「14日の花火は行くだろ」
「花火?う うん、行く」
「花火は7時からだけど、4時頃から会わない?
屋台とか出るし、二人で遊ぼうよ」
「うん、いいよ。初めて二人で見る花火だもんね」
「じゃあ、また明日夜に電話する。おやすみ、駒凛」
「おやすみ、慎」
この世界の話し方にぎこちない私とは違う慎の言葉
『やはりあなたは慎之介様ではなく、この世界の慎ですね』