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駒姫・慎次 わたくしの運命

悲劇の運命に翻弄される駒姫様へ、神様がくれたひと時の幸せは

最初で最後の令和の切ない恋だった

□□□□□ 新暦:令和7年8月29日 駒姫 □□□□□


私の壊れかけた心は元の世界を彷彿させる山寺での時間

慎と澪、慶、家族、剣道部の仲間、クラスの友だちによって

少しずつ癒されていきました

澪が言ってくれた通り、この世界での時間を大切にしようと思いました


今の私は幸せです

元の世界の誰よりも、自由で幸せな日々を過ごしています

愛する人と同じ時間を過ごすことができました

愛する人と触れ合うことができました


ですがもし、神様が元の世界に帰りなさいと言われるならば、

それが今日まで、明日まででも構いません

運命がどうであれ、私は受け入れます

『慎との思い出さえあれば、私は生きていけます』


『神様、教えてください

 私はいつまでこの世界にいるのですか?

 私が居なくなったために、最上家や山形に禍が起きるのであれば

 今すぐ、元の世界に私をお戻しください

 お願です。最上家、山形をお守りください』


今日は、金曜日です。週末は土曜日の剣道部の練習以外は慎と過ごす予定です


授業は午前中だけで、午後からは校外研修です

いつも笑顔の澪が悲しげな顔をしています

行き先は『最上義光歴史館』です


『慎との思い出さえあれば、生きていける』

という私の思いは打ち砕かれることになりました


□□□□□ 旧暦:文禄4年7月27日 慎次 □□□□□


京の最上屋敷に到着して、もう七日にもなる

秀吉様からのお沙汰はまだ出ず、駒姫様の軟禁状態が続いている

みな誰もが苛立ちを隠せなかった、

澪殿の失踪のことすら、遠い昔の話に思えた


澪殿は今、何を想い、何をしているのであろうか

慶三郎が命を掛けて守った人を俺は守れなかった

すまぬ、慶三郎


最上家に非はなく、徳川様がお取り成しくださり、

お咎めはないのではないか

そんな淡い期待は一瞬で打ち砕かれた


徳川様から知らせが入った

『秀次様、高野山にてご切腹』

『丹波亀山城にて拘束されていた

 秀次様の妻子、侍女、乳母が都へ移送とのこと』

 この時代に都に連れて来られるということは、考えられることは一つだ


このままでは史実通りに動く・・・と思った俺は

最上武士を斬り、監視の豊臣家の兵を斬り、

駒姫様を助け出して二人で逃げる。そんなことも考えた


だが、どこに逃げる。どうやって知らない世界を生きていく

親に頼って生きてきた俺に何ができる

駒凛には永遠に会えなくなる

最上家、山形、慎之介の家族はどうなる


俺は無力だ・・・

「クソ!」


その時、志村様から言われた

「慎之介、澪殿の言葉を忘れるでないぞ

 さもないと、わしはお主を斬らねばならない」

「はい、親父殿、澪殿の思いを裏切ることは出来ません

 ただ、駒姫様をお救いすることはできないのでしょうか」


「残念だが、今となっては『ない』

 これが戦乱の時代であれば、最上の意地に掛けてもお救い申し上げる

 だが、ようやく訪れた安寧な時代じゃ、最上家を滅ぼし

 山形を焼く訳にはいかぬ

 あとは義光様と徳川様にお任せするのじゃ。慎之介、堪えよ」


残された時間はわずか六日だ


□□□□□ 新暦:令和7年8月29日 駒姫 □□□□□


午後の校外学習は『最上義光歴史館』です


澪は、伏し目がちに言いました

「駒凛・・・あなたは行かない方がいいと思う」


私は、まっすぐ澪を見つめ返しました

「私は最上家の行く末を知りたいの。最上家が無事であったことを」

「ほら、言ったでしょ。今は大丈夫だって」


「では、その先はどうなの。澪、教えて。お願い」

「もしよ、もし知ることで、つらい思いをするとしたら、それでも?」


「うん。私は覚悟ができているの。どんな運命でも受け入れるつもり

 そして、私の世界に帰ります」

「私は、これ以上、駒凛の悲しい顔、涙は見たくないの

 許される限り、今まで通り楽しく過ごそうよ。お願い」


「申し訳ございません。わたくしは最上 義光の娘・駒でございます

 最上家、山形の人々を守る義務があります

 わたくしが居なくなったことで、何かが起きるのであれば、

 帰らなければいけません。分かって下さい澪様」

「どうしても?」

「はい」


「分かった・・・私は、駒凛のそばにいるから、友達だから一緒に行こ」

「ありがとう。澪」


一階の展示室で私は澪と手をつないで駒姫に関する説明展示を見ました

私はその場に崩れ落ちました


「うそ・・・」


私の覚悟を凌駕する過酷な運命を知ることになりました

少しは強くなったと思っていた私の心は壊れ、涙が止まりません


騒ぎになる前に、澪が外へ連れ出してくれました

「ほら、今あなたはこの世界にいるじゃない。だから、大丈夫よ

 もしかしたら、歴史が変わろうとしているのかもしれないし」

「では、駒凛様はどうなるの?

 私がこのまま駒凛様で居つづけたら、駒凛様は・・・」


「駒凛は大丈夫だよ、あの子の意識はその体の中で眠っているだけだよ

 駒凛も駒姫様も大丈夫だから」

「澪、もうやめて。お願い」


「ごめん・・・無責任に気休めばっかり言って、ごめんなさい・・・

 怖いよね」

「いえ、ありがとう。弱い私ばかりを見せてごめんなさい

 わたくしは最上 義光の娘です。強くなければいけません

 最上家の為、山形の為、最期まで抗ってみせます」


「ただ、今は泣かせてください。弱い私でいさせてください」

「慎、助けて・・・」


「慎・・・慎之介様」

私は六日後に、慎との思い出、この世界での幸せの思い出と共に

死にます

この作品は実話に基いたフィクションです

ストーリーの展開上、実際の旧暦と新暦とは一致しません

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